ハローサマー、グッドバイ の商品レビュー
本書は1975年に執筆されたSF青春ストーリーの古典的名作。 本書を知ったのは、読書好きな人には有名な作品である「文学少年少女あるある」を面白可笑しく描いたギャグ漫画『バーナード嬢曰く1巻』で取り上げられていたからだ。 『バーナード嬢曰く』は“名著礼賛ギャグ漫画”とも言われてお...
本書は1975年に執筆されたSF青春ストーリーの古典的名作。 本書を知ったのは、読書好きな人には有名な作品である「文学少年少女あるある」を面白可笑しく描いたギャグ漫画『バーナード嬢曰く1巻』で取り上げられていたからだ。 『バーナード嬢曰く』は“名著礼賛ギャグ漫画”とも言われており、その中の主要登場人物であり大のSFマニアの神林しおり嬢が本書『ハローサマー、グッドバイ』を「SF史上屈指の青春恋愛小説」として激推しているのだ。 本書は、ある星に住む人間と同じ姿かたちをした少年少女たちの恋愛を主題にした小説なのだが、SFとはいうものの、地球以外の星を舞台にしたということと、ちょっと変わった動物がでてくること、そして『寒さ』が悪の権化であるということを除けば、地球上の思春期を迎えた少年少女の恋愛小説と何ら変わりない。 そして読み進むにつれこのまま恋愛の話で終わるのかと思いきやラスト50ページからの怒涛の展開には度肝を抜かれる。 表紙のほのぼのとした可愛らしい女の子のイラストからは想像できない、まったくもって硬派な小説になっていくのだ。 これはSFファンならずとも、まさに一読の価値ありだ。神林しおり嬢が激推しするのもうなずける。 しかも、この本には著者が本書『ハローサマー、グッドバイ』から30年以上後に著した『パラークシの記憶』という続編も存在する。 この続編もいずれ読んでみたい。 と言う訳で、『バーナード嬢曰く』に取り上げられる本には、名作、古典が多く、読書通を自称する人たちにはちょっと読んでもらいたい漫画である。 ・・・って、このレビュー『ハローサマー、グッドバイ』のレビューというよりも『バーナード嬢曰く』のレビューになってるんじゃね?
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#日本SF読者クラブ 青春恋愛SF小説の傑作と言われているらしい。自分としては、青春小説としての印象が強い。ラストの「大どんでん返し」。これ意味が分からなかった人もいるのでは。
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グッとくる青春SF第一位。少年の感情を、どうしてこんなリアルに描けるんだろう...キラキラして切ない。読み進めるほど幸せで、切なくて、苦しい。ハッピーエンドが好きな人に。
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SF青春ラブストーリーの名作。架空の惑星を舞台にしているため、独特の固有名詞が多く、ガワはとっつきにくさがあるものの、その中身は極めて真っ当な少年少女のラブストーリーである。主人公ドローヴのやや大人びた語りを通して伝わってくる彼女、ブラウンアイズの愛らしさと二人の関係性は非常に甘酢っぱい。また口の悪い姉弟の、姉である美少女リボンとの三角関係や、役員の父を鼻にかけた高慢かつ小物であるウルフなど、他のキャラクターも生き生きと筆致で描かれている。特にヒロインであるブラウンアイズの身振りや仕草はどれも細やかで、一途な想いを見せたり、リボンに対する嫉妬の感情を垣間見せたりと、その愛らしい仕草を例に挙げると枚挙にいとまがない。その関係性の進展ぶりは読んでいるこちらが赤面するほどである。そんな子供時代の淡い恋物語の背後では、隣国アスタとの戦争の影響が徐々に忍び寄っており、粘流の訪れに従って不穏さが増していく。ドローヴとブラウンアイズ。役人の息子と酒場の娘という身分違いの恋が、そのまま議会の役人たちと町の人間との溝の深さに繋がっており、甘い恋に反して描かれている社会はハードの一語である。クライマックスはまさに怒涛の展開であり、明かされたこの惑星の真実と、緩やかな悲劇の始まり、変わっていく町の人々などを見るのは非常にキツく、ページを繰るのも心苦しかった。タイトルの意味も明らかになったため、てっきりそれが仕込んでいた大きなネタかと思いきや、この小説の真骨頂はラスト数ページに込められている。この壮大なオチはまさにSFならではの大どんでん返しであり、周到に張られた伏線と綿密に寝られた世界観設定の賜物である。人間によく似てはいるが、あくまで登場人物たちは人間型の異星人であり、ここは異星の文明である。それをあらためて再認識するとともに、オチが非常に理にかなったものであることには文字通り舌を巻いた。傑作である。
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青春恋愛SFというキャッチフレーズに誘われて。 読み終わってみて、今一つだったかな~。もはや甘酸っぱい十代の恋愛に共感できる齢でもなくなってしまったのか…。 思春期真っ只中の自意識と自尊心を盛った一人称に共感出来ず。 主人公の両親等、鼻持ちならない人物は多数いるも、主人公もその一...
青春恋愛SFというキャッチフレーズに誘われて。 読み終わってみて、今一つだったかな~。もはや甘酸っぱい十代の恋愛に共感できる齢でもなくなってしまったのか…。 思春期真っ只中の自意識と自尊心を盛った一人称に共感出来ず。 主人公の両親等、鼻持ちならない人物は多数いるも、主人公もその一人に思えてならない。 フェンスの内と外に恋人と隔てられて、「夜は心地いい寝台で暖かく一夜を眠ってから」朝になって日課の如く恋人との逢瀬を重ねるとか何なん?恋愛部分は何か陰キャ男子の妄想爆発的な男にとっての都合よさ。40年以上前の作品とは言え…。 ラストは安易なハッピーでもただ苦いだけのバッドでもなく、祈念するかのような救済の形には唸らされた。
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待遇のいい公務員の息子「ドローヴ」と、世間的には下層と扱われる家の娘「ブラウンアイズ」との愛を軸に展開する青春&恋愛&SF小説。 未熟な少年少女の物語を通じた成長、身分違いという障壁(=燃料)により燃え上がる愛、ライバル登場による三角関係、(良し悪しはともかく)世間体に縛られた大人との対立、そして彼らの行動が世界の危機と直接的に結び付くSFの仕掛けはセカイ系のように彼らの物語を盛り立ており、屈指の青春恋愛小説という裏表紙のうたい文句にも納得である。 以下、多分にネタバレを含む。 上述のとおり恋愛モノ、というか物語に付き物の三角関係についてが素晴らしい。主人公もヒロインも脇役もかなり人間臭く、敗北者に対する慈悲などは存在しない。所詮は敗北者だろうと言わんばかりに、ほろ苦くも仄かな甘味と退屈さを提供してくれる恋愛小説の常識を叩き潰してくれる。 恋愛小説のサブヒロインというのは、時としてヒロイン以上の魅力を放つが、それでいてサブとしての宿命を逃れられない。彼女にストレートな幸福を掴む権利はないのだ。だからこそ、ひとつの恋の終わりまでに至る万感の思いが読者の魂を壊れるほどに揺さぶるのだと思う。読者はサブヒロインの幸せを願ってやまない。漫画やアニメならファン投票で正ヒロインが破れるパターンである(ファンに好かれてもサブヒロインの救いにはならないのだが)。 恋愛小説の華とは、失恋である。 しかし、この物語において、サブヒロインに救いなど用意されてはいない。正ヒロインに「品がなくなった」「意固地で嫌な人」「あのことはつきあえそうにないわ」とまで言われるサブヒロインなど、武者小路実篤『友情』の野島以外、私は知らない(思い出せないだけかも)。彼女は幸せを掴むことも、幸せだった思い出を胸に生きることも許されず、惨めに死んでいく。 でも、青春なんてそんなもんである。どんなに脚色をしたところで、どんなに無粋だと糾弾したところで、勝ち組と負け組の存在は揺るぐことは無い。自分で動かなきゃ救済なんて存在しないのだ。 『ハローサマー、グッドバイ』という表題は、次に進む主人公たちの台詞ではなく、置いていかれる者たちへのお悔やみ、あるいは置いていかれる者たちの遺言なのかも知れない。屈指の青春恋愛小説である。
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『バーナード嬢曰く』で紹介されているのをきっかけに読みました。とても素敵な小説でした。 青春、冒険、SF、戦争。少年少女が、大人の戦いに巻き込まれながら苦闘する。不思議な生き物との交流。大人の戦いの裏側には政治や裏切りがひそんでいそう。役人の世界と町場の世界の対立。子どものなかに...
『バーナード嬢曰く』で紹介されているのをきっかけに読みました。とても素敵な小説でした。 青春、冒険、SF、戦争。少年少女が、大人の戦いに巻き込まれながら苦闘する。不思議な生き物との交流。大人の戦いの裏側には政治や裏切りがひそんでいそう。役人の世界と町場の世界の対立。子どものなかにもいいやつとわるいやつがいる。そして人は変わってしまう。 小説の構成要素を考えていくと、なんとなくラピュタのような雰囲気がしてきました。空と海の違いはあるし、こっちには死や性の要素があるけど、作品全体に一貫して流れている爽快感が共通している気がします。 この小説がおもしろかったので、先日、同じ著者の小説を2冊買い溜めしました。いつ読めるかわからないけど。SF小説って、いつ品切れになって手に入らなくなるかわからないんですもの。【2018年11月19日読了】
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たぶん、本作を表すには、 大 傑 作 と書いて終わりにするのが一番良いのだと思います。 ただ、やっぱり読み終わった感想を書きたいので書きます。 まず、本作の結末は、個人的には「どんでん返し」ではないな、と思いました。 本書の書評には、このphraseをよく見かけます。 ...
たぶん、本作を表すには、 大 傑 作 と書いて終わりにするのが一番良いのだと思います。 ただ、やっぱり読み終わった感想を書きたいので書きます。 まず、本作の結末は、個人的には「どんでん返し」ではないな、と思いました。 本書の書評には、このphraseをよく見かけます。 しかし読感としては、非常によく出来た「下げ」でした。 つまり、はー、こう落とすかあ、という感心であって、吃驚仰天とはちょっと違ったわけです。 物語の背景や、全体的な雰囲気、そして世界観などを総合すると、最高の落ちだと思います。 これだけ綺麗に全体をまとめ、また爽やかに終わらせてくれるラストシーンはそうないでしょう。 次に、登場人物たちの絶妙な配置に舌を巻きました。 これは、読んでいる最中には、多分まったく気付きません。 読了後に熟々と考えていくと、その計算され尽くした配分に驚かされるのです。 Storytellingによる演出ではなく、登場人物による演出だと言えると思います。 だからこそ、文章はただ物語を紡ぐために最適化していくことが可能となっているのです。 本書は、非常に洗練され、素晴らしく均整の取れた、とても豊かな文章で紡がれています。 これは、訳者の山岸真氏に由る部分も多分にあるのだろうと容易に想像出来ます。 翻訳物で、ここまで見事に「日本語の娯楽文学」として成立させた作品は希少かと思います。 そしてなんと言っても、ブラウンアイズでしょうね。 男性から見た「女の子」像で、ここまで「完璧」なキャラクタはそういません。 一方のドローヴが、女性から「男の子」像として「完璧」なのか気に懸かるほど。 もう、ほんと文句の付けようのない、魅力的な描写の数々。 それが、「これでもか!」というくらいに頻出します。 ドローヴくらいの歳の「男の子」にとって、彼女はまさに女神でしょう。 そして、その描写は、乱発されるわけではありません。 適切な場面で、適切なtimingで、狙いすました一撃として、打ち込まれるのです。 「少年」が「青年」へと変化する、その一瞬の機微を綺麗に写し取った描写も見事です。 「男子三日会わざれば刮目して見よ」を、繊細で大胆な表現で見事に描ききっています。 同時に、その成長過程に於ける一種の「残酷さ」もまた、きちんと描いているのが凄いです。 成長する骨の音が聞こえてきそうなくらい、生々しい「青春」がありました。 しかしそれは、「リアリティ」という表現とは違います。 適切な部位を適切に誇張し、その特徴をより分かり易い形で取り出して見せている。 その結果、ただでさえ儚く脆い美しさを秘めた「青春」を、さらにキラキラと輝かせているのです。 本当に、読んでいることすらも忘れさせてしまうほど、魅力に充ち満ちた作品でした。 読者が望んでいることの総てを、それ以上の反応で叶えてしまう。 読了後に、これほど幸せで満ち足りた気分になれる作品は、そうないと断言出来ます。 まさに、「SF史上屈指の青春恋愛小説」という評が相応しいです。 SFファンのみならず、「面白い小説が読みたい」と思っている人すべてに読んで欲しい。 読了後、「ここに素晴らしく面白い小説があるよ!」と声を大にして言いたくなる、そんな作品でした。 余談ですが、読了後、本書が鶴田謙二氏によって漫画化されたら、と妄想してしまいました。 氏の描くブラウンアイズを想像しただけで、ちょっと震えが来てしまうほど魅力的。 読みたいなあ。ほぼ確実に無理だろうけど、読みたいなあ。
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キラキラしていて甘酸っぱい。 翻訳も良いし、中学生くらいの頃に読んでおけば良かったなぁ。 読むには歳を重ねすぎたと感じた。 でも意外とエロティックだったり、暴力性を感じたり、対象年齢は上の方かな? 物語の最後は、下手な推理小説を読むよりあっと驚いた!
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読みながらのメモ 200/360ページまできた。SF的な設定は感じるものの、大きなストーリーの動きはなく、少年少女の恋愛も少し進んだだけ。むむ、大丈夫か? きっかけは「琉伽といた夏」のレビュー。最後の一行が、的なコメントから、アルジャーノンみたいな感じなのか? 海辺が舞台なのに、その感覚が描写されてない。潮の香りや風の吹きぐあい、空の移り変わりなど。 少年の一人称なためか、翻訳のためか、ときどき叙述に違和感を感じるところがある。 でもボーイミーツガールをより叙情的に語るなら、ボーイ側からの一人称がいいのか? 213ページ、ファーストキス、なんか違うような……。一人称主観だから? 三人称ならもっと違う? それとも作者の語り口の問題? 「わたしみたいなかわいらしい子が彼女なのって、すごくない、ドローヴ?」なんか違う……。 ブラウンアイズの内面的な魅力があまり伝わってこないのか? 【以下、ネタバレ】 なんとなくいまいち乗り切れないまま読了。文章自体に馴染めなかったのか? それは原文のせい? 翻訳のせい? ラストは大どんでん返しと訳者あとがきにあるが、それほどでもないような。 寒さに対して恐怖を感じるのはなぜか?それは…… 恐怖を感じることでロリンがやってくる。ロリンは恐怖を感じているものを助けに来る。ズー伯母とのエピソードでそれが描かれ、さらにリボンが氷魔につかまったエピソードではその間、眠り=仮死状態にあり記憶にも残らないことが説明されている。なるほど。 ただ、作品を知るきっかけになったネットの紹介で、「最後の一文のために」みたいなことが書かれていたので、アルジャーノン的な感動を期待してしまっていた。それからすると、最初は「あれ??」という感じ。 SFというよりはファンタジーのほうが近いかな。 外薗昌也「琉伽といた夏」についてのブログ記事でこの作品を知ったのだった。 http://kimyo.blog50.fc2.com/blog-entry-327.html こうなると「琉伽といた夏」もやっぱり読みたくなるなあ。 星全体に長い冬が迫ってくるというところで「1000年女王」を思い出した。 アマゾンレビューを見ると「戦争小説」としての側面を評価している人がちらほらいるが、そこはそれほどのものかなあ……。その他の点も含めて、やっぱり人によって感じ方というものは違うんだなあとあらためて思った。 タイトルはとてもいい。日本の漫画家だったら同じタイトルでもっと甘酸っぱい青春SF作品を描きそう。それが「琉伽といた夏」なのかな?
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