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未来のイヴ の商品レビュー

3.8

35件のお客様レビュー

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2009/10/04

読み辛い漢字、長ったらしい薀蓄、鼻に突く女性観・・・を差し引いても、素晴らしい一冊だと言えてしまう。そんな本、あまりない。

Posted byブクログ

2009/10/04

「亡ぼす以外に能のない、あの裏切者の「理性」が、ひそひそ聲でもうあなたに囁きかけてゐる口實を楯に、わたくしを追ひ拂はないで。」 齋藤磯雄の名訳。旧仮名遣い。翻訳者には原作の文体を忠実に訳すひとと、いったん完全に解体して日本語としての美しさを偏執的なまでに練り上げていくひとがい...

「亡ぼす以外に能のない、あの裏切者の「理性」が、ひそひそ聲でもうあなたに囁きかけてゐる口實を楯に、わたくしを追ひ拂はないで。」 齋藤磯雄の名訳。旧仮名遣い。翻訳者には原作の文体を忠実に訳すひとと、いったん完全に解体して日本語としての美しさを偏執的なまでに練り上げていくひとがいますが、齋藤磯雄はあきらかに後者です。美しい。 人間の認識対象のひとつである「他者」はただ「人間らしいもの」として目に映るだけで、本当にその他者に心があり生きているのかどうかを知るすべは基本的にありません。 ただ身体が知覚できるだけのオブジェクトとしての「他者」に対して、なぜそれが自分と同じく「自我」をもっていると感じるのか、というのは近代哲学の抱える最大のアポリアのうちのひとつです。 人形、あるいはロボット、という「知覚的には人間と同じ形骸」をした「モノ」に、人間と同じ生命を感じ、そのうえに魂を感じ、さらにはその魂を、生きた人間のものよりも崇高に感じて愛する主人公エワルドの苦悩は、生き物でありながらイデアをいだく人間という生命形態の昔っからの欠陥をもっとも悩ましい形で抽出したと言うことができましょう。僕たちは知覚し、感覚し、認識し、生存し、そうして世界を愛したり扱ったりするわけですが、イデア――ハダリーを見、感知し、悟り、愛するとき、それは果たして生命として善なることなのか、考えざるを得ません。 しかし実際のところ、ほんとうに物質に「魂」がないのかどうか、それはユング的錬金術が精製する「賢者の石」がうみだす黄金のようなものなのか、考えてみるとおもしろいですね。アニミズム的に物質に精神を見るのは別に日本人や子供に限ったことではないと思いますが、それは僕たちの獲得した「心の理論」の過剰適用なのか、それとも正当な「感覚」なのか? ドラえもんを前にして問いかけてみましょう。「ロボットのきみと人間のジャイアンが生命の危機に晒されていたら、僕はどっちを助けるべきなんだろう?」

Posted byブクログ

2009/10/04

現代の創世記とでも言うべきテーマだが、要するに男ってバカよねって感じ。「Villiers de L' Isle-『Adam』」が『イヴ』の物語を書いたという符号が面白い。

Posted byブクログ

2009/10/04

旧かなづかい・旧漢字なので読み難いですが、それでも読む価値はあります。 19世紀末に書かれたおそらく世界初のSF小説。 エジソンとエワルド卿のエゴに何も疑問を抱かないハダリーにはきっと「人権」という概念がないのでしょう。そこが哀れだった。

Posted byブクログ

2009/10/04

映画『イノセンス』の冒頭にこの物語の一節がおかれています。当代の天才エジソンが昔世話になった英貴族のために人工の女性を作り上げる。それは単なる人形ではなく自ら動き、自ら喋る、人間の女性となんら変わることのない、そしてその女性の中でも比類のない美しさをその身に体現しているのである。...

映画『イノセンス』の冒頭にこの物語の一節がおかれています。当代の天才エジソンが昔世話になった英貴族のために人工の女性を作り上げる。それは単なる人形ではなく自ら動き、自ら喋る、人間の女性となんら変わることのない、そしてその女性の中でも比類のない美しさをその身に体現しているのである。物語は貴族が自分の現在の不幸を語るところからエジソンがその不幸を癒すために彼が製作する人形と共にあることを提案しそしてその人形がいかに精巧で生身の人間に劣らない素晴らしいものであるかを説明していく。そしていよいよ完成し、貴族はその人形と共にイギリスに渡るというところで……

Posted byブクログ