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未来のイヴ の商品レビュー

3.8

35件のお客様レビュー

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2024/02/21

この本はSF小説でありながらも「恋とは何か?」について真剣に問いている作品であり、美しい見た目をしているのに中身が残念すぎる「黙っていれば百日紅」な人を見ると「自分ならもっと綺麗に彼女を演じることが出来るのにな」と思うところに深く共感した。 現代でリメイクされるのだとしたらE郷と...

この本はSF小説でありながらも「恋とは何か?」について真剣に問いている作品であり、美しい見た目をしているのに中身が残念すぎる「黙っていれば百日紅」な人を見ると「自分ならもっと綺麗に彼女を演じることが出来るのにな」と思うところに深く共感した。 現代でリメイクされるのだとしたらE郷とナタリーとほのぼのとした二次創作が多く産まれるのではないかと思うほどに切ない終わりかただった。 エジソン...とんでもないもん作りやがって...

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2021/09/16

19世紀にアンドロイドを題材にしたSFの先駆であると同時に、格調高いフランスの恋愛小説でもあるといえる名作。 正漢字・歴史的仮名遣いは調べないとわからない漢字も多いがじきに慣れる。古臭い文体はかえって本作の雰囲気を香り高いものにしており、『読みにくい、だがそれがいい!』という感じ...

19世紀にアンドロイドを題材にしたSFの先駆であると同時に、格調高いフランスの恋愛小説でもあるといえる名作。 正漢字・歴史的仮名遣いは調べないとわからない漢字も多いがじきに慣れる。古臭い文体はかえって本作の雰囲気を香り高いものにしており、『読みにくい、だがそれがいい!』という感じで味わい深かった。 アンドロイドは理想の女性たりうるか、という命題は今やリアルに迫りつつある。科学は恋愛を救うのだろうか?これからの時代人々は、自分自身も含めて、本作を何度も紐解いては考え続けるに違いない。

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2020/02/13

美貌のGFの魂の非俗さに絶望して理想的なアンドロイドを作る。この手のSFの原型。作るのがエジソンって?

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2019/03/29

恋人アリシヤのヴィナスのような肉体、耀くばかりの美貌、しかしその魂のあまりの卑俗さに英国青年貴族エワルドは苦悩する。自殺まで考える彼のために、科学の英雄エディソンはアリシヤの肉体から魂を取除くことを引受け、人造人間ハダリーを創造する。 齋藤磯雄による鏤骨の名訳。正漢字・歴史的仮名...

恋人アリシヤのヴィナスのような肉体、耀くばかりの美貌、しかしその魂のあまりの卑俗さに英国青年貴族エワルドは苦悩する。自殺まで考える彼のために、科学の英雄エディソンはアリシヤの肉体から魂を取除くことを引受け、人造人間ハダリーを創造する。 齋藤磯雄による鏤骨の名訳。正漢字・歴史的仮名遣い。 なかなか読み切ることが出来なかった最大の要因は…正漢字・歴史的仮名遣い 慣れてしまえばどうということはないのですが、最初はついていくのがやっとでした。 この作品が発表されたのは1886年…つまり、今から125年前なのですよ。 それでも決して色あせない魅力があるからこそ、攻殻機動隊の「イノセンス」に多数の影響を及ぼしたのでしょうね。 「イノセンス」で原因不明の暴走をした少女型の愛玩用アンドロイドが「ロクス・ソルス社製 Type2052 “ハダリ(HADALY)”」。 この“ハダリ(HADALY)”こそが、本書で発明家エディソンの手によって作られた人造人間であり、古代ペルシャ語で「理想」を意味するものです。 エワルド卿が追い求めた理想、エディソンの探究心、そしてなんとも不可思議なハダリー。 現実世界において、効率的であることや当世風であること以上に大事なことがあり、それは人間の魂の根源に大きく関わっているものだと思います。

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2018/03/07

気になっていたタイトルだったので読みました。 全人類の半分を占める女性全員を敵にまわす内容だと一読して不遜に思ったのですが、ほとんど出番のないアンダーソン夫人の存在で実は覆されていると受け取りました。 まず、エワルトが愛した女アリシャ。アリシャは実際的にクソでもなく、世俗的...

気になっていたタイトルだったので読みました。 全人類の半分を占める女性全員を敵にまわす内容だと一読して不遜に思ったのですが、ほとんど出番のないアンダーソン夫人の存在で実は覆されていると受け取りました。 まず、エワルトが愛した女アリシャ。アリシャは実際的にクソでもなく、世俗的であるというニュアンスがとにかく強いようで、予想以上に世俗的なだけでした。何処にでもいるどうでもいい女のようですが、分かりやすい例なので発端としたと取れました。 次に、物語の肝となっているはずのアンダーソン夫人。ほとんど出てきませんが、最重要人物に思えました。アンダーソンが他の女性に手を出してしまう直前、直感的に引き止めた奥さんでした。その後にアンダーソンは死んでしまうはず。夫人はその後、別人格ソワナを自分のなかに作ります。ソワナの身体は多分エジソン宅にあったはず。冷たくなっていましたが。 最後にハダリー。アンドロイドですが、容姿はアリシャで、人格は実はソワナである、ということで、当たっているのでしょうか、何か曖昧でした。全人類における最高度の頭脳と詩的言葉を兼ね備えるようつくったらしい台詞があり、確かに台詞が際立って美しく出来ているのには納得しましたが、同時に極めて強いパーソナリティを持っていると感じられ、同様にエワルドもそのように感じられたシーンがあった気がします。 ハダリーが、アリシャの美貌と最高度の頭脳を電子的に組み込まれただけの女だったら(確かに理想的ではありますが)、話が単純過ぎてまったく面白くないと断言できるのですが、アンダーソン夫人の存在、つまりソワナの意思が相当に序盤から介入していたとなると、まったく別物になります。 正直、重要人物と思っていなかったので、記憶が曖昧ですが、夫の死後、心身ともに衰弱していったことから、アンダーソンを深く愛していたことが伺えます。そしてエジソンに看病されながら、第二の人格ソワナが彼女のなかに誕生します。ソワナはハダリーの創造に太鼓判を押しているはず。序盤から400ページに渡りエジソンによって女を侮辱する台詞が続きますが、ソワナの神秘(深い知性による)に魅了されているエジソンによる発言とも受け取れる気がします。 最後に、エワルドは、アリシャを捨て、ハダリーを深く愛することが出来ました。外見がアリシャだったから愛したわけではなく、機械であっても認めるに値する人格をそのなかに見たからでした。もし、ハダリーの人格がソワナそのものであるなら、この未来のイヴという話は、すべてソワナの崇高な人格的美しさを物語る話であったと取れるはずです。 エジソンも、エワルドも、アンダーソン夫人を愛したのです。

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2018/01/27

プレSFとでも言おうか。19世紀に書かれた小説ながらアンドロイドをテーマとしている。と言っても作中で明示されるアンドロイドの原理はあくまでフレーバー程度のもの(これは現代のSFでもままあるけれど)で、その割に描写にページを多く割いているのでともすれば退屈でもある。反対に面白いのが...

プレSFとでも言おうか。19世紀に書かれた小説ながらアンドロイドをテーマとしている。と言っても作中で明示されるアンドロイドの原理はあくまでフレーバー程度のもの(これは現代のSFでもままあるけれど)で、その割に描写にページを多く割いているのでともすれば退屈でもある。反対に面白いのが「なぜアンドロイドを製作するに至ったか」という動機の部分。考えてみれば昨今のSFというジャンルにおいて、人造人間はありふれたものなので、今更誰も「なぜそんなものを作るのか」を突っ込んで語らないのである。本作におけるアンドロイド政策の動機とは、一言で言うと「登場人物の現実に対する嫌悪感」なのだが、それを描写するために出るわ出るわ、現実に対する厭悪の情や恨み節が次から次へと述べ立てられる。そしてその有り余るネガティブなパワーの果てに至高の人造人間ハダリーが生れるのだが、その構図の凄まじいことと言ったらない。旧かな遣いの訳も良い。

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2017/07/18

初めて「アンドロイド」という概念を打ち出した、画期的な作品。 押井守監督の『イノセンス』に引用されていたのを思い出したので、購入。 人工知能が世界を席巻しかけている現在に読んでも、全く古びた印象を受けない。 科学的に作られた愛は、我々の知っている愛と言えるのか? 人を不幸...

初めて「アンドロイド」という概念を打ち出した、画期的な作品。 押井守監督の『イノセンス』に引用されていたのを思い出したので、購入。 人工知能が世界を席巻しかけている現在に読んでも、全く古びた印象を受けない。 科学的に作られた愛は、我々の知っている愛と言えるのか? 人を不幸にする自然な愛と、幸福にする人工的な愛、どちらを選択すべきなのか? そういったテーマに興味があるのなら、とても面白いと思う。 ただ、個人的にもっと人造人間の女性「ハダリー」の自立的な活躍が見たかった。 もう一回通読すると、その良さが更に分かるかもしれない。

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2017/10/25

★SIST読書マラソン2017推薦図書★ ★科学道100 / 未来のはじまり 【所在・貸出状況を見る】 http://sistlb.sist.ac.jp/mylimedio/search/search.do?target=local&mode=comp&mater...

★SIST読書マラソン2017推薦図書★ ★科学道100 / 未来のはじまり 【所在・貸出状況を見る】 http://sistlb.sist.ac.jp/mylimedio/search/search.do?target=local&mode=comp&materialid=11730105

Posted byブクログ

2016/07/15
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

美しい身体と美しい魂に関する哲学的対話。 ドスト的な対立構造ではなく、エディソンがグールーとしてエワルドを導くという構造なので、決してわかりづらくはない。 それでも全容を把握しきれないほどの深さ。と衒学趣味。 そしてソワナ。この三文字はの魔力にはやられた。 初読は訳文の素晴らしさに酔う。 再読ではさらに味わい尽くしたい。

Posted byブクログ

2016/05/09

人ならぬものとの恋の物語、すなわち人造人間と恋をする話なのだ。 著名な発明王、トマス・エディソン(をモチーフにした著者の独自設定エディソン)のもとに、知り合いの青年貴族が訪ねてくる。 青年は、複雑な恋愛に悩み憔悴しているという。 恋人がいるのだが、その外貌は非の打ち所...

人ならぬものとの恋の物語、すなわち人造人間と恋をする話なのだ。 著名な発明王、トマス・エディソン(をモチーフにした著者の独自設定エディソン)のもとに、知り合いの青年貴族が訪ねてくる。 青年は、複雑な恋愛に悩み憔悴しているという。 恋人がいるのだが、その外貌は非の打ち所がない超絶美人でいながら、魂が俗物すぎて一緒にいるのがツライ。 あまりにもロマンチストすぎる青年は、その悩みのために自殺しようと考えているところだった。 エディソンは、かつて貧乏だったころにその青年に救ってもらった恩があることから、自らの発明を以ってその悩みから解放して進ぜましょう、と申し出る。 自分の発明した人造人間を、青年の理想の女性に昇華させたうえで提供しようと言う。 ふたりは女の性質・本質がどのようなものであるかを議論し、エディソンは提供する人造人間の特性や仕組みを延々と詳細に説明していく。 果たして「科学」は、青年の恋の病を癒せるのだろうか。 そして人造人間の正体とは……。 というような話です。 作者のヴィリエ・ド・リラダンが詩人だったためだろう、使われている言葉がものすごく多彩です。 抽象的な言葉づかいも多くて、文章を読むのは少し疲れるかもしれない。 ギリシア神話や聖書、シェヘラザードの千夜一夜物語みたいな有名な逸話をたくさん引用している。 かと思えば、人造人間の製造・動作の仕組みを説明する科学用語もバンバン出てきて、科学と幻想の入り混じったような特徴的な文体になっている。 人造人間を表す意味する「アンドロイド」という用語が初めて使われた作品でもあるという。 登場するエディソンの秘密の研究所やわけのわからない発明品にトキメきます。 科学者でありながらロマンティックなことも言う。 最初のところで、エディソンが登場して独り言をしゃべる場面があるんですが、これがまず面白い。 「俺は人類の世界に生まれてくるのが遅すぎたよ……」みたいなことを嘆くのです。 曰く、俺は人類最初のひとりに生まれていたら、神代の時代、聖書の時代の音声をそのままに録音できたのに!というようなことを独りごちる。 発想が素晴らしいですね。 「光あれ」という言葉や黙示録の天使のラッパの音を蓄音機に録音したり、ソドムとゴモラの滅んでいく様を活動写真に収められたら、どんな素晴らしいだろうか!というようなことを発明王に言わせるのだ。 人造人間の描写が長々と続くところが読みにくいかもしれませんが、のんびりと我慢して読み進めれば、幻想的な雰囲気に浸れる逸品です。

Posted byブクログ