霧と雪 の商品レビュー
約10年ぶりにアプルビイ物の『盗まれたフェルメール』(論創社)が出版されたので、積読状態だった本作を読みました。 イネスは『ハムレット復讐せよ』(国書刊行会)→『ある詩人への挽歌』と出版順に興味深く読ませていただいたのですが、その次の『ストップ・プレス』(国書刊行会)で頭がクラク...
約10年ぶりにアプルビイ物の『盗まれたフェルメール』(論創社)が出版されたので、積読状態だった本作を読みました。 イネスは『ハムレット復讐せよ』(国書刊行会)→『ある詩人への挽歌』と出版順に興味深く読ませていただいたのですが、その次の『ストップ・プレス』(国書刊行会)で頭がクラクラになるほどのイネス恐怖症に陥ったので、その次がなかなか読めませんでした。しかしながら、昨年出たノン・シリーズの傑作『ソニア・ウェイワードの帰還』で恐怖症が払拭され、面白く読めましたので、遅ればせながら本作に手を出した次第です。 前置きはこのくらいにして、本作は皆さんが仰るように、冒頭にいわゆる登場人物表の記載がないのですが、これはこの物語の語り部(=作者)が18頁で、「ここで家系図を出さないことをお許し願いたい。散文にこだわるのは作家の本能…」と、このページで主な登場人物を紹介しているので、読者はこのページを参照しながら、読み進めることになります。 それもあって前半はやや読みにくいのですが、それぞれの登場人物から複数の推理が提示されるに従ってテンポが良くなり、後半は一気に読むことができました。結末は少々呆気ないですが、満足の一冊でした。 久しぶりにアプルビイ物を読んだので、「アプルビイって、こんなキャラクターだったっけ?」という違和感はありましたが。(上述3冊と短編を少ししか読んでいなかった。) 出版順にアプルビイ物を読んでいるので、次回は『アララテのアプルビイ』を読むつもりですが、これは解説にもあるように(『ストップ・プレス』と同じ)ファースなので、少々心配です。
Posted by
- 1