アフリカの日々/やし酒飲み の商品レビュー
230317*読了 「アフリカの日々」は小説ではない。といっても紀行文でもないし、旅行記でもない。 デンマーク人の女性がアフリカの植民地で暮らした日々の記録。それは確かに現実の話なのだけれど、見事にアフリカ人との交流や友人についての大事なシーンなど、巧妙に切り取られている。 巻末...
230317*読了 「アフリカの日々」は小説ではない。といっても紀行文でもないし、旅行記でもない。 デンマーク人の女性がアフリカの植民地で暮らした日々の記録。それは確かに現実の話なのだけれど、見事にアフリカ人との交流や友人についての大事なシーンなど、巧妙に切り取られている。 巻末の年譜を見ると、何度となく帰国していたり、夫との離婚があったりするのに、夫が出てくるのはわずかに1度のみ。それも名前ではなく「夫」として。 植民地に農園を切り拓いたことは現代から見てよかったのかどうかは何とも言えない。 でも、確かに彼女はアフリカ人たちから慕われ、必要とされていた。 いくつもの濃密で印象的な場面が蘇ってきます。 「やし酒飲み」は突飛すぎておもしろかった。 「アフリカの日々」はアフリカ外出身の人から見たアフリカだけれど、今度はアフリカ人が書いた小説。 こんなことも許されるのか、と思う文章。これは、翻訳者さんの技によるものなのだけれど。 時折挟まれる、ですます調に違和感を感じながらも、妙にストーリーとフィットする。次はどこで表れるのかと気になってしまう。 実際は英語で書かれていて、ですます文体でもないのだけれど、英語を母語とする小学生が書いたような原文だった。 生きている人も死者も、よくわからない生物や神も、いろんなものが混ざり合い、当たり前かのように繰り広げられるありえないストーリー。 解説でカフカの「変身」があげられていて、またそれとは違うんだけれど、読んでいて、ぞわっとしてしまう。 「アフリカの日々」の3分の1ほどのボリュームだったのだけれど、印象としては強烈でした。
Posted by
アフリカの日々、美しい描写と淡々とした文体、まったく色あせないユーモラスなエピソードの数々、著者のアフリカへの深い愛情。読後、深い余韻を残してくれる作品。 土地の人々に対して、簡潔ながらも深い洞察に満ちた文章の数々に驚嘆したり、妙に納得したりしながら読み進めた。猟銃の事件やガゼ...
アフリカの日々、美しい描写と淡々とした文体、まったく色あせないユーモラスなエピソードの数々、著者のアフリカへの深い愛情。読後、深い余韻を残してくれる作品。 土地の人々に対して、簡潔ながらも深い洞察に満ちた文章の数々に驚嘆したり、妙に納得したりしながら読み進めた。猟銃の事件やガゼルを飼うことになった話など、印象深いエピソードがたくさんある。 農園の調理師として働いていたカマンテが、真夜中に遠くの草火事を見て、神様が来るからと、著者を起こしにくるエピソードがある。何気ない日常のエピソードの1つだが、妙にアフリカの農園での生活を表しているような気がして、特に印象に残った。 自分のとっては、異文化や他者へのまなざしについて、振り返るきっかけになるような本なのかもしれない。
Posted by
アフリカの日々、途中で休止期間を経てやっと読了。淡々とアフリカでの生活を描いていて、地に足のついた、強い女性だな、と感嘆。人生いろいろ。。やし酒飲みはちょっと異世界すぎた。
Posted by
アフリカの日々 デンマークの男爵婦人が1850年頃から十数年、ケニアで農場経営する話。読んでいて共感でき気分が良いのは、作者の自立し自由を愛する精神、今起こっていることを面白がる好奇心、現地の人々や動物を尊重する態度と、生き生きした文体からだろう。 当時は今とは比較にならないくら...
アフリカの日々 デンマークの男爵婦人が1850年頃から十数年、ケニアで農場経営する話。読んでいて共感でき気分が良いのは、作者の自立し自由を愛する精神、今起こっていることを面白がる好奇心、現地の人々や動物を尊重する態度と、生き生きした文体からだろう。 当時は今とは比較にならないくらい、白人優位であったと思うのに、西洋文明を一歩引いて捉えて、目の前の一つ一つの事象、農園の人物や子供、動物に、新鮮な関心を持って丁寧に接して、結果、現地の部族長などからも信頼関係を作れているのが素晴らしい。 友人の一人のデニスと作者の関係は大人の男女としては、微妙で興味深い。筆致もドライでかっこいい。 やし酒飲み まず、やし酒を飲むしか能がない息子のために、ヤシ畑と専任のやし酒職人が雇われた、という出だしがすごい。生産性とか生活力といったこちらの常識を超えた楽しい世界。次々に状況が変わっていくばかりで、「結局言いたいことは何?オチは?」と先走ってしまい、飛ばし読み。でも途中から面白いので全部読んでしまった。
Posted by
池澤夏樹の世界文学全集って、いい意味で偏ってますよね。全集のリストを見たら、今でもわくわくします。当時、これをそろえようか迷って、本棚のスペースもそんなにないことだしとあきらめたのですが、やっぱり、そろえておけばよかったかなあ。 『やし酒飲み』で、アフリカ文学なるものを初めて読み...
池澤夏樹の世界文学全集って、いい意味で偏ってますよね。全集のリストを見たら、今でもわくわくします。当時、これをそろえようか迷って、本棚のスペースもそんなにないことだしとあきらめたのですが、やっぱり、そろえておけばよかったかなあ。 『やし酒飲み』で、アフリカ文学なるものを初めて読みました。ラテンアメリカ文学のマジックリアリズムとはまたちがう、独特の突拍子のなさが楽しかったです。(2015年12月13日読了)
Posted by
午前十時の映画祭で『愛と哀しみの果て』を見て感動し、すぐさま図書館へ。これは原作も映画も両方素晴らしい。 『やし酒飲み』は言葉を精選して抽出したような意図が感じられないという点では好みではないが、様々な寓話を重ね合わせた筋が割とうまくまとまっている(違和感を感じさせない。といって...
午前十時の映画祭で『愛と哀しみの果て』を見て感動し、すぐさま図書館へ。これは原作も映画も両方素晴らしい。 『やし酒飲み』は言葉を精選して抽出したような意図が感じられないという点では好みではないが、様々な寓話を重ね合わせた筋が割とうまくまとまっている(違和感を感じさせない。といっても、パッと見は違和感だらけの内容なので慣れただけかもしれないが)点と、これがたった数日で書かれたことには驚くばかり。菅啓次郎による解説、特に『エリザベス・コステロ』の引用部分が興味深い。「小説とは、はじめからパフォーマンスの側面に頼らないことをもって、その特質としてきた。アフリカの小説の本当の問題はエグゾティシズムとそれが欧米世界に対してもつ誘惑効果であり、アフリカの読者が育っていないという点にある。アフリカの作家たちの読者は外国人であり、作家たちはいつも自分の肩越しにそんな読者をふりかえり、気にしている。こうしてアフリカにおいて、作家はアフリカを外部にむかって解釈し説明する、一種の通訳になってしまう。」
Posted by
「アフリカの日々」を読めば、アフリカに行ってみたくなるだろう。それほどまでに、本書の中で描かれているアフリカでの生活は魅力的だ。筆者自らの経験よるものだが、現実の世界はむしろ厳しいものであったに違いない。にもかかわらず、このような作品に仕上げたということは、筆者にとっても魅力的な...
「アフリカの日々」を読めば、アフリカに行ってみたくなるだろう。それほどまでに、本書の中で描かれているアフリカでの生活は魅力的だ。筆者自らの経験よるものだが、現実の世界はむしろ厳しいものであったに違いない。にもかかわらず、このような作品に仕上げたということは、筆者にとっても魅力的な生活であったに違いない。 「やし酒のみ」は奇想天外で楽しい物語だ。人間と妖怪が入り乱れて、まるで水木先生の世界だと思ったが、解説にも同様のことが書いてあった。
Posted by
アフリカの日々は風景描写、土地の人々の描写が見事だった。アフリカには行ったことがないけれど、土地の匂いみたいなものをまざまざと感じることができた。小説というよりはエッセイに近いような。 文章一つ一つが平易だけど、いい文章。手帖からの章は小話が連続しており、そちらのエピソードも魅力...
アフリカの日々は風景描写、土地の人々の描写が見事だった。アフリカには行ったことがないけれど、土地の匂いみたいなものをまざまざと感じることができた。小説というよりはエッセイに近いような。 文章一つ一つが平易だけど、いい文章。手帖からの章は小話が連続しており、そちらのエピソードも魅力的だった。 やし酒飲みは絵本を壮大なホラ話まで思いっきりふくらませた感じだった。時系列も常識もぜんぶ無視してるので荒唐無稽そのものなんだけど、子供のころは木から突然手足が生えても、死神を網でつかまえても、なんとなくそんなものとして受け入れていた感覚を思い出した。子供に読み聞かせたら結構ウケるかもね。
Posted by
世の中の大多数の人達が知らないであろうし、 読まないであろう作品だと思うのだが、 こんなに素晴らしい作品がひっそりと存在していたんだねえ。 「アフリカの日々」 すばらしい。少し引いた視点で、 アフリカの大地、空、動物、空気、人々に包まれる。 「やし酒飲み」 ホメロスの「オデュッセ...
世の中の大多数の人達が知らないであろうし、 読まないであろう作品だと思うのだが、 こんなに素晴らしい作品がひっそりと存在していたんだねえ。 「アフリカの日々」 すばらしい。少し引いた視点で、 アフリカの大地、空、動物、空気、人々に包まれる。 「やし酒飲み」 ホメロスの「オデュッセイア」や 夏目漱石の「坑夫」みたいな冒険譚と言うかロードノベル的面白さ。 管啓次郎氏の解説は鋭い視点で深い感銘をうけた。 巻末著者年譜に、ブライアン・イーノと デヴィッド・バーンが出てきてびっくりした。
Posted by
前者は、デンマーク人である作者のケニアでの生活を描いた話。後者は、アフリカ人の作者による風変わりな物語。どちらもすごく面白かった。
Posted by
- 1
- 2