すばらしい新世界 の商品レビュー
ジーザスがフォードに置き換わって、人工的に人口調節して母親が子供を産まなくなった世界。現代人はこの話の人物らの思考にどんどん近づいているように思えてしまう。それが良いとか悪いとかはわからないが…。
Posted by
ある人が「自分は幸福だ」というとき、その人は幸福である――この、特に問題もなさそうな幸福の定義に鋭い問いかけを発するのがハックスリーの『すばらしい新世界』である。 このSF小説において描かれるのは「管理された幸福」という事態である。ここで、一人一人の人生は管理者によって明確に方...
ある人が「自分は幸福だ」というとき、その人は幸福である――この、特に問題もなさそうな幸福の定義に鋭い問いかけを発するのがハックスリーの『すばらしい新世界』である。 このSF小説において描かれるのは「管理された幸福」という事態である。ここで、一人一人の人生は管理者によって明確に方向づけられる。すなわち、受精卵の段階からの科学的な介入、出生後の徹底した刷り込み教育などによって、一人一人はそれぞれの階級や役割を体得し、そのうえでそれを「幸福」だと思うように誘導されるのである。主体性もないまま、徹底した管理の下で、彼らは「幸福」に生きる。 果たしてこのような「幸福」を、私たちは告発することができるだろうか。そんなものは虚偽であると言い立てることができるだろうか。少なくとも、最初に挙げた幸福の定義では、それは無理なのである。 ……とまぁ、極めて批評性に富んだ作品であり、読者は今日の社会状況などを想起しながら読むことになるだろう。ちなみに僕が読んだ講談社文庫版は少々訳が古い。最近光文社から新訳が出たそうなので、これから読む人はそちらのほうがいいかも(未読だが、評価はおおむね良いようだ)。
Posted by
2016年3月18日読了。人間の生殖が科学技術でコントロールされて階層が固定化された世界に、「文明化」されていない「蛮人居住区」に育った若者ジョンが訪れ・・・。「ディストピアもの」、同じ遺伝子を大量に複製・階層ごとに体格の優劣を固定して外見的特長からどの階層に属するか分かるように...
2016年3月18日読了。人間の生殖が科学技術でコントロールされて階層が固定化された世界に、「文明化」されていない「蛮人居住区」に育った若者ジョンが訪れ・・・。「ディストピアもの」、同じ遺伝子を大量に複製・階層ごとに体格の優劣を固定して外見的特長からどの階層に属するか分かるようにしたり、「個人」の概念が不平等・不満を生むとして個人に属する要素は排除・芸術も五感にダイレクトに作用する「触感映画」のみを普及させ個人間での「解釈の差異」を許さないなど、非常に寓意的で面白い設定・描写だ。幸福・自由は「不幸になる権利」を選び取れる、ということにあるのか・・・そうだとしても、あえて電気や通信のない世界を人間は選び取ることができるのか・・・科学が全てを解決できるとしたら、人間はそちらを選んでしまうのではないのか・・・。
Posted by
wiki読む限りはそんなに難しいあらすじゃなさそうだけど、今回の村松訳が僕には合わなかったのか、ひとつの状況も分からないままの読了になってしまった。でも漠然とした感想だけど、そこまですごい小説には感じなかったかも。
Posted by
なにがきっかけかは覚えていないが,気づいたらAmazonのウィッシュリストに入っていたので読んでみた。家族を持たず,母親や父親を持たず,機械から生まれてくる子どもたち。子どもたちは生まれながらにして社会的階層が予め,しかも,人為的で残酷な方法で決まっており,知的生産をするものから...
なにがきっかけかは覚えていないが,気づいたらAmazonのウィッシュリストに入っていたので読んでみた。家族を持たず,母親や父親を持たず,機械から生まれてくる子どもたち。子どもたちは生まれながらにして社会的階層が予め,しかも,人為的で残酷な方法で決まっており,知的生産をするものから,体が不自由で満足に仕事ができないものまで,この世界に存在する。そして,彼らは「ソーマ」という薬物によって自らの不安や憂いを消し,ただただ,機械的に過ごしている。最初は「なんとおもしろい世界だなぁ」と思っていたが,読み進めるうちに登場してくるジョンの視点を通して,その世界がいかに狂ったものであるかを感じるようになる。そして,自分自身の世界が,ここに描かれたディストピアと実は表裏一体なのではないかとドキドキした。個人的には,世界統制官のムスタファ・モンドが魅力的なキャラクターだ。彼がこの物語で最も報われない悲しい人物なのではないかと思う。 この物語が1932年に記されたものだ。そうとは思えないほど,おもしろい話であった。
Posted by
「辛抱することをおぼえる代りに、不愉快なものはなんでもなくしてしまうんですね。」 階層が確立した中でそれぞれが幸せに生きる新世界。 そこでは不快なものは取り除かれ、反射的に幸福を追求することができる。 野蛮人は言う、私は不幸になりたいのだ、と。人が愚かな振る舞いをするのは自由か...
「辛抱することをおぼえる代りに、不愉快なものはなんでもなくしてしまうんですね。」 階層が確立した中でそれぞれが幸せに生きる新世界。 そこでは不快なものは取り除かれ、反射的に幸福を追求することができる。 野蛮人は言う、私は不幸になりたいのだ、と。人が愚かな振る舞いをするのは自由か?愚行権は認められるか?・・・もちろん、認められない。その愚行が他人を不快にするのではあれば、それは許されない。誰にも迷惑をかけないことなんてない。誰かには迷惑になっているのだ。 そうすると、すべての不快から免れる新世界は正しい。 ただ幸せに暮らす。では何のために生きるのか?生きる価値はあるのか?それが、野蛮人が最後に投げかけた疑問であろう。しかし、その行為は誰にも理解されないであろう。
Posted by
快楽によって管理されて入る未来を描いたディストピア小説。監視によって管理されて入る未来を描いた1984と対象的である。今の時代に読むことは思想的には意味があるかもしれない(1984 は IBM による支配、すばらしい新世界は Apple による支配を表す)が、正直、物語としては、...
快楽によって管理されて入る未来を描いたディストピア小説。監視によって管理されて入る未来を描いた1984と対象的である。今の時代に読むことは思想的には意味があるかもしれない(1984 は IBM による支配、すばらしい新世界は Apple による支配を表す)が、正直、物語としては、とくにおもしろくもない。
Posted by
合理的で、誰もが幸せな徹底されたユートピア社会を描くことで、逆説的にディストピアを描いた作品。 娯楽、宗教、愛情の存在意義は既存の価値観によって定義され、合理的な型に落とし込まれた人間の社会ではそれらはどう変貌するのかを、二つの価値観と三人の主人公(と思っている)の苦悩を描写する...
合理的で、誰もが幸せな徹底されたユートピア社会を描くことで、逆説的にディストピアを描いた作品。 娯楽、宗教、愛情の存在意義は既存の価値観によって定義され、合理的な型に落とし込まれた人間の社会ではそれらはどう変貌するのかを、二つの価値観と三人の主人公(と思っている)の苦悩を描写することで考えさせてくれる。
Posted by
ディストピア小説といえばイギリス文学のお家芸。1930年代の作品である本書は、いま読むとさすがに時代を感じさせる。悪夢的、悲劇的と形容するよりも戯画的。マジックペン的な白黒はっきり感ただようイデオロギーも、どこか微笑を誘うところがある。
Posted by
名前はよく聞くが、そういえば読んでないな、と思って。 余計な予備知識がいろいろあって、最初からネタバレ気味だったのは確かだが、それを差っ引いても強い既視感があって、ひょっとしたら昔読んだの忘れているのだろうかと思った。ひどく古臭い印象を受けた。 それはたぶんぼくらが、この小説が...
名前はよく聞くが、そういえば読んでないな、と思って。 余計な予備知識がいろいろあって、最初からネタバレ気味だったのは確かだが、それを差っ引いても強い既視感があって、ひょっとしたら昔読んだの忘れているのだろうかと思った。ひどく古臭い印象を受けた。 それはたぶんぼくらが、この小説が語る警告を、形を変えながら何度も繰り返し、聞いているからなんじゃないかと思う。この小説はたぶんその一番素朴な形なのだ。たぶんハックスリーが現代に生きていたら、また違う「すばらしい新世界」を書いただろうな。 世界総統と野蛮人の問答がそのままこの小説の精髄になっていて、ここだけでもいいんじゃないかと思うくらい。二人の問答を読みながら、自分が総統の世界と野蛮人の世界のどちらか一方を選ばなければならなかったとしたら、どうするだろうと考える。どっちも嫌だなあ。
Posted by