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終わりと始まり の商品レビュー

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16件のお客様レビュー

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2024/01/29

こんな光景を見ているとわたしはいつも 大事なことは大事でないことより大事だなどとは 信じられなくなる 『題はなくてもいい』 原因と結果を 覆って茂る草むらに 誰かが寝そべって 穂を嚙みながら 雲に見とれなければならない 『終わりと始ま...

こんな光景を見ているとわたしはいつも 大事なことは大事でないことより大事だなどとは 信じられなくなる 『題はなくてもいい』 原因と結果を 覆って茂る草むらに 誰かが寝そべって 穂を嚙みながら 雲に見とれなければならない 『終わりと始まり』 わたしは解らない、と認識し続けること。それは逆に言い換えてみれば、わたしは考え続ける、ということ。恐らく、今、一番必要なこと。 自分の力ではどうにもならない悲劇に見舞われた時、その衝撃のもたらす痺れから人は中々立ち上がることが出来ない。それは仕方のないことでもあるけれど、思考停止は往々にして更なる悲劇を引き込みかねない。痺れていたとしても考え続けることの大切さは、何も詩人にのみ課せられた責任ではないだろう。 何かをしようとする多くの場合、始まりがあって終わりを予測し行動を起こすけれど、そしてその因果律的展開を頼っているけれど、本当は、終わりから遡って始まりを咀嚼することの方がはるかに大事。雲に見とれなければならない、と未来予想のように語られる風景が今の現実であることを、忘れてはならない。傍には、自らの身体から流れ出る血のつくる血溜まりがあることを忘れてはならない。起きてしまったことは変えられはしないけれど、考え続けることで未来は変えられる。 詩とは究極のアフォリズム。 詩人とは肩書きに縛られない哲学者。

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2013/01/28

優しく、それでいてとても厳しい詩集だった。 シンボルスカははじめて読んだけど、 あまり難解だとは感じずすんなり読めた。 でも、読みやすいからと言って、内容がやさしいわけではない。 言葉に込められた思想はとても深淵で、 きっと一度読んだくらいでは理解できない。 もしかしたら、僕...

優しく、それでいてとても厳しい詩集だった。 シンボルスカははじめて読んだけど、 あまり難解だとは感じずすんなり読めた。 でも、読みやすいからと言って、内容がやさしいわけではない。 言葉に込められた思想はとても深淵で、 きっと一度読んだくらいでは理解できない。 もしかしたら、僕程度では何度読んでも理解できないかもしれない。 それだけ深いものを秘めているように感じた。 また時間をおいて読みたいと思う。 あとシンボルスカの他の詩集も気になってきたので、 機会があったら読んでみよう。

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2012/11/24

地上から鳥の眼で、更に浮上して山の眼で更に、地球を宇宙の眼で視た刹那 一瞬にして地上の人間のという魂の眼 で抉り取る。破壊を、愚かしさを、悲しみを、堪え忍ぶ事を、そして希望を …。 明確な言葉は真っ直ぐ私の心臓を刺す。私はその尊厳性に頭を垂れずにはいられない。そして静かに視線を合...

地上から鳥の眼で、更に浮上して山の眼で更に、地球を宇宙の眼で視た刹那 一瞬にして地上の人間のという魂の眼 で抉り取る。破壊を、愚かしさを、悲しみを、堪え忍ぶ事を、そして希望を …。 明確な言葉は真っ直ぐ私の心臓を刺す。私はその尊厳性に頭を垂れずにはいられない。そして静かに視線を合わす。詩人が指す方向へ、現実へと。

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2011/06/05

震災後、本のタイトルの詩が有名になってあらためて売れている本らしいのですが、個人的には『ひょっとしたらこれはすべて』が好きです。 ノーベル文学賞受賞者の著。

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2012/03/16

ノーベル文学賞作品。 悲観的過ぎず、楽観的過ぎず、現実をしっかり見据えた詩の数々。 後半のノーベル賞受賞時インタビューにて、彼の仕事観に触れている。 『現代のような騒々しい時代にあっては、自分の欠点を認める方がはるかに易しいものです、その欠点をうまく見栄えのするように人に見せさえ...

ノーベル文学賞作品。 悲観的過ぎず、楽観的過ぎず、現実をしっかり見据えた詩の数々。 後半のノーベル賞受賞時インタビューにて、彼の仕事観に触れている。 『現代のような騒々しい時代にあっては、自分の欠点を認める方がはるかに易しいものです、その欠点をうまく見栄えのするように人に見せさえすれば。』 追記 久しぶりに読んでみると、また違った面を発見できた。偏見やステレオタイプといった争いを生み出す種を完全に排除することに挑戦しているような感じ。「一連の出来事の一つの見方」がすき。

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2013/07/23

(2009.03.05読了) 1996年にノーベル文学賞を受賞したポーランドの女性詩人の詩集です。「ノーベル文学賞記念講演」も収録されています。 2月に読んだ、野田正彰氏の本の中で紹介されていたので、読んでみました。 素粒子の本と同様、詩の本というのもよくわからないのですが、わか...

(2009.03.05読了) 1996年にノーベル文学賞を受賞したポーランドの女性詩人の詩集です。「ノーベル文学賞記念講演」も収録されています。 2月に読んだ、野田正彰氏の本の中で紹介されていたので、読んでみました。 素粒子の本と同様、詩の本というのもよくわからないのですが、わからなさを楽しんでいるのかもしれません。世の中に、分からないもの、理解しがたいものがあるというのは、いいことに違いありません。 18篇の詩が収録されています。文字が大きくてページも少ないので、すぐ読めるのですが、すっと読むだけでは、何も残らないので、もう一度読みました。 詩集というのは、手元に置いて、何度も味わいながら読むものかもしれません。 いくつかの詩の冒頭部分を紹介しておきます。 ●終わりと始まり(18頁) 戦争が終わるたびに 誰かが後片付けをしなければならない 何といっても、ひとりでに物事が それなりに片づいてくれるわけではないのだから 誰かが瓦礫を道端に 押しやらなければならない 死体をいっぱい積んだ 荷車が通れるように (後略) ●空っぽなアパートの猫(43頁) 死んでしまうなんて 猫に対してすることじゃない 空っぽなアパートに残された 猫は何を始めることになるだろう 壁によじのぼり 家具に体をこすりつける まるで何も変わっていないようだ でも変わっている まるで何も動かされてはいないようだ でも前より広々としている もう夜毎ランプが灯ることもない (後略) ●眺めとの別れ(47頁) またやって来たからといって 春を恨んだりはしない 例年のように自分の義務を 果たしているからといって 春を責めたりはしない わかっている わたしがいくら悲しくても そのせいで緑の萌えるのが止まったりはしないと 草の茎が揺れるとしても それは風に吹かれてのこと (後略) 詩人 ヴィスワヴァ・シンボルスカ 1923年、ポーランド西部のブニンに生まれた クラクフのヤギェウォ大学卒業 1945年、詩人としてデビュー 1985年、「橋の上の人々」出版 1993年、「終わりと始まり」出版 1996年、ノーベル文学賞受賞 (2009年3月5日・記)

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