玉蘭 の商品レビュー
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いい意味で思っていた内容と違って途中引き込まれました。ラストに行くにつれ終わらないで欲しい。まだこの世界の(特に船乗りの質)の時代の空気感とか景色や匂いまでもが感じられて、とても面白かったです。とにかくいい男です。カッコいい。桐野さんの書かれる男性っていつもタイプが違っていて凄いです。今回の大伯父の広野質の生涯がとても胸を熱くさせました。浪子との出会いと別れ。もう切なくてたまりませんでした。 そしてハードカバー本には無かったのですが、考察で調べたら文庫本にはあとがきが載っていたそうで、質のモデルが桐野さんの祖母の弟さんらしく、ますますこの本が好きになりました。まだ玉蘭の世界観に浸りたいのと理解できていない箇所があるので、もう一度読み直して来ます。
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各章毎に物語のまとまりがあって、きれもあり良かった。明治から昭和初期の時代、舞台は上海と日本。男と女の物語。人の気持ちの奥深さ。
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上海の大学での日本人留学生寮。1人の女性に叔父が幽霊として学生寮を訪れる。いっけん、なんの繋がりも無いようで、叔父が生きた上海での生活が彼女に微妙に関わっていくエンディングが不思議な感じがした。感想はとても難しいけど(笑)、ストーリーは明解。
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田舎出の優等生なりに東京の出版社で働く女性は、人生にも仕事にも恋愛にも満たされず、何に対しても自分をわかってくれないと言い逃げるように中国へ語学留学。 「トラブル」と書かれた叔父の日記を母に押し付けられて読むと、自殺した叔父の若い頃の幽霊が現れる。 現代で寂しく生きる侑子、身勝手に振る舞い、優順普段な医者松村。 秘密の多いカフェの女給にジリジリと愛情を抱く機関長の質、大言壮語で革命を目論む男についていくも捨てられる結核を患う浪子。 中国を舞台に4人の人生が過去と現在で交差する。 正直、あまり面白くありませんでした。 生きる場所を変えたところで、自分が変わるわけではないと言いたいことが解説で読んでわかったけれど、特に作中でそのテーマが連想づけられる筋をあまり感じられませんでした。 誰も主人公に感じられないほどに、流れるように物語が進んでしまうため、物足りなさばかり感じました。 何かが結論づけられるわけではなく、全部が曖昧で、物語の波をあまり感じられず淡々と進んでしまい、全員が卑屈に見えて、息苦しさばかり感じました。 「錆びる心」が素晴らしいと思っていたので、今作は読んで残念でした。
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東京での恋人との別れをきっかけに、広野有子は別人になろうと誓い仕事を辞めて中国に語学留学した。眠れぬ夜を過ごす有子は、路地で買った「玉蘭」の香りの中、大伯父の質(ただし)の「幽霊」と出会う。 幻想的な小説。他の桐野作品とは異なる趣。まあまあ面白い。
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現代に生きる美人元OL有子が恋人と別れ、留学した上海で会ったのは、なんと自分よりも若い25歳の大伯父・質!その間70年という時間を超え、この2人のそれぞれの愛と苦しみ。有子がひ弱な女性から強くなっていくということを描いているのでしょうが、性的に無軌道になることが肯定されているよう...
現代に生きる美人元OL有子が恋人と別れ、留学した上海で会ったのは、なんと自分よりも若い25歳の大伯父・質!その間70年という時間を超え、この2人のそれぞれの愛と苦しみ。有子がひ弱な女性から強くなっていくということを描いているのでしょうが、性的に無軌道になることが肯定されているようであり、いいのか?と感じます。質の意外な後生が明らかになるなど、それなりに面白い本ではありましたが・・・。
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主人公有子は、本当の自分を求めて上海へ。そこへ、昔亡くなった大叔父が幽霊として現れる。2人の過去の記憶が、バランスよく再現される。でも、結局最後はこの著者特有の中途半端な場面で終了。それが、いつもは良い効果を引き出しているのだが、今回ばかりはこの物語自体が何も生み出さず、無意味な...
主人公有子は、本当の自分を求めて上海へ。そこへ、昔亡くなった大叔父が幽霊として現れる。2人の過去の記憶が、バランスよく再現される。でも、結局最後はこの著者特有の中途半端な場面で終了。それが、いつもは良い効果を引き出しているのだが、今回ばかりはこの物語自体が何も生み出さず、無意味なものに思えてしまう。少し残念。
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歴史が出てきそうだったので、桐野夏生の本だけど後回しにしといた。 やっぱり歴史の部分が難しかった。 ストーリーは恋愛物だった。 人との関係が終わるってのはどんな形であれ寂しい。
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男は退屈をそうやってしのぐのか、と思うと、怖くなったが、女だって同じことをやっている。 そして、裏切られたときの気持ちが分かるのは、自分が実際にそうならないと分かるわけもない。 そんな後味悪い後悔が、最終章の質の生き方を読むことで幾らかの希望を与えてくれた。 また、仕返しという言...
男は退屈をそうやってしのぐのか、と思うと、怖くなったが、女だって同じことをやっている。 そして、裏切られたときの気持ちが分かるのは、自分が実際にそうならないと分かるわけもない。 そんな後味悪い後悔が、最終章の質の生き方を読むことで幾らかの希望を与えてくれた。 また、仕返しという言葉で表現していいのか分からないけど、行生ががっくりと失望する様子は私を爽快な気分にさせてくれた。 余談になるが、私は何箇所か読めない漢字があった。雰囲気で読み飛ばしたものの、そんな漢字に出会うたびにいちいち物語の世界から切り離されることに苛立ち、またそんな語彙力もない自分にさらに苛立ってしまった。
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桐野夏生のお決まりの女性の狡猾さや虚しさが描かれている。さらに今回は時空を越えた摩訶不思議要素がプラスされていた。うーん今回は登場人物の誰にも共感しなかった。あえて挙げるなら浪子の頑なまでに自己中な人間の潔さが唯一すっきり入ってきたかな。
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