1,800円以上の注文で送料無料

八月の光 の商品レビュー

4.4

42件のお客様レビュー

  1. 5つ

    18

  2. 4つ

    14

  3. 3つ

    5

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2016/05/13

フォークナー3大傑作の一つだが、一番、穏やかな味わい。これはやはり、女主人公リーナ・グローブの大地の女神的設定によるもの。伊那谷の仙人(!)の翻訳もいい。

Posted byブクログ

2016/04/12

フォークナーの最高傑作のひとつと評価されている。個人的には「アブサロム、アブサロム!」よりこちらのほうが好きだ。小説の手法としては、アブサロムのほうが高度で面白いと感じたが、本作には、人間に対する「救い」のようなものが描かれているように感じられ、心に響いた。

Posted byブクログ

2015/05/02

少し難しいですが、圧倒的です。 人間と社会との関わりを、人間に根源的に根ざすものを掘り返して描く(この描き方が凄まじい)一方で、生命の本質的な強さとともにあって揺らがない女性が持つ、別の種類の真実も描いています。 この作品は、あらかじめ少しだけアメリカの田舎のイメージを持っておく...

少し難しいですが、圧倒的です。 人間と社会との関わりを、人間に根源的に根ざすものを掘り返して描く(この描き方が凄まじい)一方で、生命の本質的な強さとともにあって揺らがない女性が持つ、別の種類の真実も描いています。 この作品は、あらかじめ少しだけアメリカの田舎のイメージを持っておくと、読むときに世界がぐっと広がるのではと思います。アメリカのロードムービーの真っ直ぐな道路や、『風と共に去りぬ』のイメージや、ビリー・ホリデイのジャズの背景など、現代日本とは大きくかけ離れた世界が織りなす空気感がけっこう重要と思います。

Posted byブクログ

2014/12/27

畏まったレビュー等まるで意味がないほど独創的。主要な筋①ニーナがジェファソンに来たこと、そして来た理由②ニーナとバイロンの出合い③ブラウンとクリスマスは何者か④ミス・バーデンの死の模様などが第三者の独白や意識の流れによって明らかになるが、それは最初の4章であらかた登場する。あと5...

畏まったレビュー等まるで意味がないほど独創的。主要な筋①ニーナがジェファソンに来たこと、そして来た理由②ニーナとバイロンの出合い③ブラウンとクリスマスは何者か④ミス・バーデンの死の模様などが第三者の独白や意識の流れによって明らかになるが、それは最初の4章であらかた登場する。あと500頁でその主筋が変奏曲となって表れる。主題はサンクチュアリと共通する。南部で犯罪が起こると全て黒人の仕業とみなされる社会。南北戦争から60年経って人種差別は深化した。サンクチュアリから八月の光へ、ポパイからクリスマスへ。

Posted byブクログ

2014/10/02

骨太なだけじゃないよ、フォークナーは~ ・・・薄闇よりも濃い暗さのなかで、じゃれは自分の身体を見守るかのようだった。水よりも濃くて黒くて静かな何かの中にある溺死体のように、自分の身体が罵りの泥沼の中で、ゆっくりと淫らに回転するのを見守るかのようだった。彼は両方の手で自分の身体に...

骨太なだけじゃないよ、フォークナーは~ ・・・薄闇よりも濃い暗さのなかで、じゃれは自分の身体を見守るかのようだった。水よりも濃くて黒くて静かな何かの中にある溺死体のように、自分の身体が罵りの泥沼の中で、ゆっくりと淫らに回転するのを見守るかのようだった。彼は両方の手で自分の身体に触り、下着の下の身体を激しく腹から胸へ、両手でこすりあげた。 ・・・彼は自分がウィスキーを売るのも金のためではなく、それは自分を包み込もうとする女からいつも何か隠し事をしたい性質のせいなのだと言いたい気持ちだった。 ・・・「あたしまだ祈る用意がないわ」 ・・・「神様、まだあたしがお祈りせねばならぬようにはしないでください。神様、もう少しだけあたしを地獄においてください。ほんのもう少しだけ」・・・「まだ、神様。まだにして・・・神様」 読後のズレというかトリップ感から抜けるのが大変・・・

Posted byブクログ

2014/03/07

3度目のトライで読み終える。「意識の流れ」ってどんなものかと思っていたが、独特なリズム感があって面白い。何より本書は構成が巧みかつ描写が徹底しているので、大きな力で吸い込まれるように作品世界に没頭できる。

Posted byブクログ

2014/02/06

 1932年発表、アメリカの小説家フォークナー著。架空の町ミシシッピ州のジェファソンを舞台に、夫となるはずの男を探す妊婦リ-ナ、黒人の血を引いているかもしれないと自分を疑う男クリスマスの二人を主軸に、リーナの夫ブラウン、リーナに一目ぼれしたバイロン、孤独なハイタワー牧師など様々な...

 1932年発表、アメリカの小説家フォークナー著。架空の町ミシシッピ州のジェファソンを舞台に、夫となるはずの男を探す妊婦リ-ナ、黒人の血を引いているかもしれないと自分を疑う男クリスマスの二人を主軸に、リーナの夫ブラウン、リーナに一目ぼれしたバイロン、孤独なハイタワー牧師など様々な人物達の物語が入り乱れ、町の屋敷で起きた殺人の全容と顛末を追っていく。  長編らしい重厚な読み応えだった。フォークナーは初めて読んだのだが、抽象的な細部に突っ込んでいく際の比喩が独特だ。たとえ文が長くて分かりにくくなろうとも自分の感覚を誠実に表現しようとする執念を感じた。  群像劇のような作品なのでこれといったテーマを絞るのは難しい気がするが、あえて言うならやはりクリスマスを巡る暴力だろう。この時代のアメリカ独特の黒人差別、南部の地域性が色濃く出ている。著者がクリスマスにそういったものを一手に背負われている印象がある。  個人的にはリーナが一番印象深かった。彼女自身はあまり事件に絡まず無事に子供を生んでジェファソンを去っていくのだが、その去り方の牧歌性がいかにもアメリカ的だという気がする。広大な土地の一点で起きた暴力を横目にまるで風のようにサラッと通り過ぎていく、その乾いた「旅」そのもののような生き方に言い知れぬ余韻が残るのだ。

Posted byブクログ

2014/01/28

自分の血の響きを白人にも黒人にも見出だせなかったクリスマス。彼の一生は悲劇だった。彼を囲む人々は妄執に取り憑かれ宗教の欺瞞が生んだ深い鴻溝は彼を呑み込み黒い潮を流し込んだ。人々の抱えるグロテスクな心理を白日に曝すフォークナーの筆致の鋭さ。対照的に描かれる、拘りのない穏やかな信頼を...

自分の血の響きを白人にも黒人にも見出だせなかったクリスマス。彼の一生は悲劇だった。彼を囲む人々は妄執に取り憑かれ宗教の欺瞞が生んだ深い鴻溝は彼を呑み込み黒い潮を流し込んだ。人々の抱えるグロテスクな心理を白日に曝すフォークナーの筆致の鋭さ。対照的に描かれる、拘りのない穏やかな信頼を抱くリーナ。彼女の透明な眼には濁りも隠されず映し出されるが、光を内包する故に人にも共鳴する光の断片を見出だしたのだろう。リーナの旅する姿が光に霞んでいく。南部の人々と時の流れの壮大なうねりに圧倒された。

Posted byブクログ

2013/08/03

過去を想起することができる、というのは人間が持つ特権の一つである。記憶を解釈する能力によって追憶を時に楽しみ、人格を形成していくものだ。それは祝福であると同時に、呪いでもある。そう、人は過去から逃れる事は出来ず、逃れようとすればするほどその正面で待ち構えているものなのだから。自ら...

過去を想起することができる、というのは人間が持つ特権の一つである。記憶を解釈する能力によって追憶を時に楽しみ、人格を形成していくものだ。それは祝福であると同時に、呪いでもある。そう、人は過去から逃れる事は出来ず、逃れようとすればするほどその正面で待ち構えているものなのだから。自らに流れる血の色に呪われたクリスマス、ジェファスンの土地が持つ記憶に縛られたハイタワー、二人の存在は南部が持つ業の深さの象徴である。そしてそんな因習に囚われた地を進んでいくリーナの旅路は過去を踏み越え、今を肯定する。その姿は希望だ。

Posted byブクログ

2015/07/10

「人ってずいぶん遠くまで来られるものなのね」 臨月の娘リーナ・グローブは、子供の父親がいるというジェファソンの町に降り立つ。未婚で身籠り去った男を追って一人で故郷から遠く歩いてきた。真面目で静かで穏やかで頑固。人がするべきことは神様が正しく判断してきっと叶えると信じている。その頑...

「人ってずいぶん遠くまで来られるものなのね」 臨月の娘リーナ・グローブは、子供の父親がいるというジェファソンの町に降り立つ。未婚で身籠り去った男を追って一人で故郷から遠く歩いてきた。真面目で静かで穏やかで頑固。人がするべきことは神様が正しく判断してきっと叶えると信じている。その頑固なまっすぐさに行きかう人たちはついついお節介を焼いてしまう。 リーナがジェファソンに到着した日、黒人の血を引くと噂されるジョー・クリスマスが内縁関係にあるハイミスの女性バーデンの喉をかき切り逃亡していた。 施設で育ち自分を否定して自分の根源を探して彷徨うジョーと、自分の足取りをしっかり刻むリーナの話が語られていくが、二人の運命が交わることはない。 二人の間で語られるのは、リーナに一目惚れした中年男、妻の不貞によるスキャンダルの後も町に残り続ける元牧師のハイタワー、家族を人種偏見闘争で殺されたのち黒人教育の後ろ盾をしている女性バーデン、ジョーの祖父母の物語。 彼らの抱える差別と失意と放浪が濃厚に書かれている。 人種偏見と心の拠り所を探す人たちの心身の放浪の物語は、ラストのリーナの力強い歩みで締めくくられる。 登場人物たちの心の中を漂うような読了感を味わえる作品でした。 さて、日本人の私には一見白人だが「祖父母が黒人の血を引いているという噂」というだけで「クロ」と差別される、というのがピンと来なかったけれど、 「1/16でも黒人の血が入っていれば黒人扱い」という州法もあったということなので、 「噂」だけでも十分差別対象なのですね。

Posted byブクログ