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八月の光 の商品レビュー

4.4

42件のお客様レビュー

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    18

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登場人物たちの様々な…

登場人物たちの様々なエピソードが描かれていて、読むうちにそれらのエピソードがどんどんパズルのようにつながっていくのが快感でした。一気に読んだほうがいいかもしれません。

文庫OFF

2024/05/03

うまくいかないことばかりであったとしても、時間は平等に流れ、各自の人生の一瞬一瞬は光のようにキラキラ輝いていた。

Posted byブクログ

2022/12/02

クリスマスとリーナ、ハイタワー、バイロンというより、ジェファスンそのもの、街が主人公であり語り手であると考えると読みやすい気がする。 7年越しにようやく読み終わった。しかしあらすじ以上の内容を理解するには何度か読まないとさっぱりだと思う。

Posted byブクログ

2020/10/27

暑いアメリカ南部が舞台。人種差別への偏見に対して、各々の覚悟が明暗を分ける人間模様を筆者の力強い筆致で描かれていた。情景や風景描写が多彩で、このタイトルには確かに作者の強い思いが込められていたのではないか。素晴らしかった!

Posted byブクログ

2019/12/24

紛うことなき傑作。いくつかの人間の物語が重奏のように重なり合って、うまい響きを奏でている。ミルフィーユみたいなまとまりのある旨さ。 現在というものが、幾多の過去の大きな積み重なりでできた塊で、同時にそのもまた未来に向けて重なるものとしての一つでしかない、そんな感覚をもたらしてくれ...

紛うことなき傑作。いくつかの人間の物語が重奏のように重なり合って、うまい響きを奏でている。ミルフィーユみたいなまとまりのある旨さ。 現在というものが、幾多の過去の大きな積み重なりでできた塊で、同時にそのもまた未来に向けて重なるものとしての一つでしかない、そんな感覚をもたらしてくれる。

Posted byブクログ

2019/03/09

二十歳のころ読んでの再読。若い頃のはストーリーを覚えているものが多い。 これもすっかり把握していたと思ったが、そんな単純な小説ではなかった。 孤児でクリスマスと名付けられた男が放浪の末に真実の愛に目覚めたかに思えたが、黒人と白人の混血ゆえに屈折してか、陰惨な暴行に走ってしまう...

二十歳のころ読んでの再読。若い頃のはストーリーを覚えているものが多い。 これもすっかり把握していたと思ったが、そんな単純な小説ではなかった。 孤児でクリスマスと名付けられた男が放浪の末に真実の愛に目覚めたかに思えたが、黒人と白人の混血ゆえに屈折してか、陰惨な暴行に走ってしまう。クリスマスとは接点がないが、副主人公の白人の田舎娘リーナーがのんびりと全景を彩るのでホットする部分、でも複雑な構造だったというのが旧読の印象。 ま、間違ってはいなかったが、ジョゼフ(ジョー)・クリスマスだけが主人公ではなかった。 わたしの見るところ、フォークナーが創造した架空の町「ジェファスン」を描くところがこの物語の中心になってくると思う。 「夏草や兵どもに夢のあと」のアメリカ南部版である。 アメリカの南北戦争の激戦地として軍閥の雄叫びや火炎の亡霊が浮かんでくるのは、登場人物のひとりハイタワー元牧師の意識の中だけではない。 はめ込みパズルのようにいろいろの人々、いろいろの場面・情景がちりばめられている。 孤児と思われたクリスマス(クリスマスに拾われたから)のルーツもわかるのである。 現代にいたるまでの黒人と白人の複雑な人種差別問題、特に貧しい白人たちとの怨念のような確執。 そこに宗教(キリスト教)が絡み、わたしなど日本人がはかり知れないものがある。 古典なのに、そういうところがノーベル文学賞作家の先見の明。 まさに現代、そのるつぼ真っ只中のアメリカではある。 文学好きなら必読書だと思う。。

Posted byブクログ

2018/09/04

アメリカ南部についての本やら記事やらを読んでいると、必ずフォークナーの名前が出てくる。読んでないと、その場で言われていることが完全に理解できないので、めんどくさいけど1、2冊は読んでおかないとなぁ、という、教養主義的な、「わりと不純な動機」で読みました。(私にとっては、「読書」は...

アメリカ南部についての本やら記事やらを読んでいると、必ずフォークナーの名前が出てくる。読んでないと、その場で言われていることが完全に理解できないので、めんどくさいけど1、2冊は読んでおかないとなぁ、という、教養主義的な、「わりと不純な動機」で読みました。(私にとっては、「読書」は完全なる娯楽なので、「読まないと」と思う時点でなんだかテンション下がります) 映画のようでした。 人間の得体の知れなさがとてもリアルに描かれていて、相当クドい文章なのに、ぐいぐい読まされてしまった。それほど映像的な書き方をしているとは思わないのだけど、なぜか頭の中にかなり詳細な映像が浮かんでくる。(ドラマ「トゥルー・ディテクティブ」みたいな雰囲気の、寒々しい表情をした人たちの群像が見える) クリスマス、リーナ、ハイタワーの3人をめぐる3つの物語が中心だけど、それ以外の人物についても、作者は詳しく書かずにはいられないのか、話がとにかく脱線しがち。でも、ワキの人たちの人生もそれなりにおもしろくて、「ちょっと、ちょっと! いろいろ長すぎなんですけどー!」と作者に心の中で文句を言いながらもどんどん読んだ。 クリスマス、という人物造形がすごすぎる。 この名前。生い立ち。人生への立ち向かい方。同じところをぐるぐると回る道。 思い出すだけで、胸のあたりに小さな痛みを感じる。 この男のすべてが印象的すぎて、なのにリアルで普遍で、もう私の中ではフォークナーというとこのキャラ!という感じになってしまった。 逆に、ハイタワーの存在感は個人的に蛇足な気がした。話が長く感じたのはコイツのせい。それでいて語り足りない感じもあるし、この人は別の物語で良かったような。 図書館で借りたので、非常に古い版(昭和42年初版の新潮文庫)で読んだのだけど、最初に訳者がなんだかくどくどしく「意識の流れを分かりやすくするために太字にした」とかなんとか、長い訳注をつけている。これは今の版にもついているのかな。 こんな注釈なんかなくても普通に読めば普通に理解できると思うのだけど・・・。 原文は何か癖があって、訳すのに苦労したからだろうか、などと考えてしまった。

Posted byブクログ

2018/06/07
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

びっくりするくらい中上健次。 あるいは中上健次を読んだときに、びっくりするくらいフォークナーというべきだったか>高校生の私に。 似ているのは第一に、血にまつわる悲劇的な男を中心に据えていること。 第二に、誰かの噂話で断片的に中心の挿話が寄り集まっていくこと。 だからこそ、誰が起こしたどういう事件が世間的にどう捉えられるか(ら彼は逃げなければならぬのか)が判然とする。 神としての語り手が、地の文の依拠する視点を、噂するモブに宿したり、行動する中心人物に宿したり、と自由に設定する。 そのせいで前後する時間間隔よりも、事件に対する見え方の重層性を重視するからこそ、多面的に事件が見えてくる。 高校生の私には理解しきれなかった語りの重層性とは、多面的な見方だったのだ。 ひとりの語りは2D平面。重層的な語りで「3D立体としての小説」が成立する。 うん。そういうことだったんだよ>高校生の私。 ところでこの小説の素敵なところは他にもあって、キャラ的な興味も尽きない。(生きた井戸のように、今後も尽きないだろう。) 名前が似ていたということで巻き込まれるうちに狂言回しをするバイロン(まさにトホホな非リア充!)も、 ぼんやりほんわかはんなり愛されキャラなリーナも、 キツネ的性格のブラウンも、 もちろん悲劇的神話(おもえば悲劇はすべて生まれの問題……それは現代的なアイデンティティの問題とまったく同じ!)の中心を成すクリスマスの過去から現在への変遷も、忘れがたいが。 現時点で35歳を迎えんとする私にとって印象深いのは、ハイタワーだ。 産まれた家庭の歪つさを押し隠すために牧師になったはいいが、(直接には妻のゴシップ事件で)(間接には不細工な過去を隠蔽しようと自分自身を不合理に誤魔化そうとした結果)失職し、もはや失われた自らの天職を日々想いつつも隠居を余儀なくされる、肥満した中年男。 孤独で、わずかにバイロンとの会話を日々の愉しみにしていたかと思いきや、バイロンがとんでもないお願いを持ってきて、自分はもう世間を捨てたというのに、嗚呼。そんなことできないよ。でも。 ところで読了した者のうちでリーナの楽天性に希望を感じない人はいまい。 開幕からそれとなく語られ続ける「タイムリミット」。そんなんもんものともしない。 ねちねち語られてきた呪いをブッ飛ばすほどの破天荒な暢気さ!! ところで。 登場人物のほぼすべてが「よそもの」だということは、単純に作家が見知った場所によく知る挿話を押しつけているのではない、明らかな作為が込められていることの証左である。 また今後感情移入しうる対象としては、一度は悪魔の種と孫を切り捨てたのに名残惜しさを隠せないキチガイ爺さん、その介護をする一見冷静な夫人(が狂っていて、他人の赤ん坊を自分の孫と思い込んでしまう)、 勝手に自警団を組織し犯罪者に私刑を施す中年、 などなどなどなど。 つまりは今後数十年において数回ないし十数回は読み直して、別の味わい方をしたい、美味しい小説だという予感がびんびんにしている。 現時点でこんなに美味しいのだから、間違いはないだろう。

Posted byブクログ

2018/06/06

読書会の課題本だった短編集から興味を持ち、思わず手に取った一冊。久々に重厚な長編を読んだという充実感があった。人種差別をテーマにした暗い話だが、ラストにふんわりと希望の香りが立つところに好感が持てる。

Posted byブクログ

2017/03/09

臨月の若い女リーナは、自分を置き去りにした男を追っている。リーナが辿り着いた町では、黒人の血を持ちながら白い肌の男クリスマスが殺される。 リーナの行動を描く部分と、クリスマスが事件を起こすまでや出生から成長の過程とが描かれている。 この場面転換がわかりにくく混乱しがちになる。先...

臨月の若い女リーナは、自分を置き去りにした男を追っている。リーナが辿り着いた町では、黒人の血を持ちながら白い肌の男クリスマスが殺される。 リーナの行動を描く部分と、クリスマスが事件を起こすまでや出生から成長の過程とが描かれている。 この場面転換がわかりにくく混乱しがちになる。先に、あとがきを読んでから作品に入るとわかりやすい。 クリスマスは黒人の血を持ちながら白い肌という自分に、様々な思いがある。 これは日本人であるわたしには理解が及ばない。 アメリカの人種差別の凄まじさは他の作品からもわかるのだが、それは事実として認識出来るというものでしかなく、肌で感じる、まさに実感するということがない。 黒人の血と白人の肌、自分は一体何者なのか、こういうことに悩むことや劣等感などは想像出来る。それでも、自分に黒人の血が流れていることを隠しておけばいいものを何故わざわざ言うのか、と思ったり、何も悪いことをしていないのだから何故隠さなければならないと思うのもわかる。 やはり人種差別の問題はわかりにくい。 クリスマスが異常にも感じる程に養親を憎むこともわからない。自分の出自を知って育ててくれる養親に何故そんなにも心を開けないのか。そうさせてしまう程に自分とは何かと悩み、自分の血に傷つけられたということだろうか。 わからないわたしが鈍いのだろうか。 クリスマスの出生の秘密と、それに関わるユーフューズの狂信的でありながら背信的な気持ち悪さ。それはクリスマスの名前に表れている。 ジョー・クリスマス。つまりジョセフ・クリスマス。 ジョセフはヨセフの英語読みだ。それを嫌悪する黒人の血を持つ子供につけるという気持ち悪さに吐き気がする。 物語として愉しめるのだが、人種差別の問題を感じられない自分が残念だ。 黒人というレッテルから逃れられないクリスマスだが、誰よりもそのレッテルを貼り付けたのはクリスマス自身だという悲惨さ。 日本人のわたしにはわからない思いが溢れている作品だった。

Posted byブクログ