春一番が吹くまで の商品レビュー
川西蘭著「春一番が吹くまで」 キャンディーズ世代 重いテーマに軽い行動 http://nakawin.at.webry.info/201105/article_2.html
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川西蘭。ちょうど学生をしている頃、ものすごくはまってしまった。1冊読むと、続けて次のもの、次のもの…ととにかく追い求めて読んでました。若かったのね。 『春一番が吹くまで』は、川西蘭氏が大学生の時、19歳の年に書いたデビュー作。大学受験を控える夏、東京に下宿して予備校の集中コース...
川西蘭。ちょうど学生をしている頃、ものすごくはまってしまった。1冊読むと、続けて次のもの、次のもの…ととにかく追い求めて読んでました。若かったのね。 『春一番が吹くまで』は、川西蘭氏が大学生の時、19歳の年に書いたデビュー作。大学受験を控える夏、東京に下宿して予備校の集中コースに通う青年が主人公。17、18歳あたりは‘青年’といっても‘少年’といっても、ちょっとしっくりこない中途反葉な時期ですね。めいっぱい背伸びしてみたり、つまらないことでドギマギしてみたり。女の子のことでも、あらぬ妄想を膨らませているかと思えば、声をかけることすらできないようなウブくんに変身したり。忙しいことです。 一緒に収められている『ブラック・ボックスを背負って』の主人公キヨシくんは大学生、なので悩みも少し大人チックになるけれど、女の子に振り回される様子を見ていると、高校生と変わらない、まあかわいいやねという感じ。 主人公たちと同年代で読んだ時には、セリフひとつひとつにリアルな熱を味わったものだけれど、歳を重ねた今は、遠くに置いてきた自分の分身の陽炎をみるかのようで、キャラクターたちの声も、幾重にも重なるベールの奥から届く。若い時特有の、自分をとりまく環境が変わる予感に対する過敏な反応と、反面で「不変なものなんて何もないんだ」と諦めに似た悟りを得ていく過程を、切なくも愛らしく感じながら、離れて見守る心境で読み返しました。
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