王国への道 の商品レビュー
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遠藤周作の二冊目として読んで、元々宗教の著者で有名で一冊目に母なるものを選出していたのでこういうのも書くんだなと感心した。 終盤の章題になっている、地上の王国、天井の王国それぞれを目指した実在の人物を元にした物語であるが後者のは要所要所をかいつまんで終盤は短略したエピソードになっているので各々を対比した話になっているとは言い難いのが残念。前者のも、いきなり権謀術数にこりて血は見たくないと言い出し、また前半の知略ぷりが消えて相手の策に無策なのは話の展開としてはあんまり面白くない。ここは好み。
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野球おもしろいんだけれど、テレビ無駄にやりすぎじゃね? 洗脳装置のおバカワイドショーは仕方ないけれどニュース番組にまで食い込んできて気持ち悪い。 なので本読み。古い写真を見ていたら子供たちの授業風景で、黒板に先生が山田長政って書いた場面で、ああずいぶん昔に見た懐かしい名前だなぁと思いつつ、山田長政って何をやった人だろう? 誰か小説を書いてないかなと検索したら遠藤周作さんいました。 長政さんなんとなくタイにある日本人町の町長さん的なシュッとした実務家っぽいイメージを持ってましたが、ぜんぜん違いました。ほとんど戦国時代の名のある武将クラスの豪胆な人じゃないですか! さらには権謀術数にも長ける参謀タイプでもあると。つまりは戦いと陰謀に明け暮れた人だったのですね。 なんたってタイ(シャム)に上陸して見惚れた王女さまへの想いが最後にかなうのかと思ったら、かなり残念な結末になってしまっていて、まぁそういうもんよねぇなんて思いつつウィキペディアを見たら、長政さん王女さんと早々に結婚してるじゃないか! 周作……。 《王宮には至るところに罠がある。笑うている者に毒がある。近よってくる者は刃をかくしている。温和しい者は術策を考えている。お前たち日本人はそうした王宮の者から見れば、まるで子供だ、とても太刀打ちはできぬ》
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タイの勉強として。600年前にアユタヤで日本人が力を持っていた、その様子を想像できておもしろかった。キリスト教徒が迫害されて、それでも信念をつら抜こうとする岐部についても。 途中、長政にふきが体を触られるところ、キモい、サイテー、それ性的虐待、遠藤周作サイテー、時代錯誤もいいとこだ!と思っていたけど、最後フキが長政を毒殺するのがよかった。 遠藤先生、引き続き読むことにする。
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昔も今も叶いもしないような野望を持つ人が居て、がむしゃらにその目的に食らいつく人がいる、どこからそんなパワーが湧いてくるんだろ、で、大抵失敗に終わることが多いと思うけど、エネルギーはすごいと思う。人を傷つけたら自分が傷つくことになるし、自分を犠牲にし続けるのも、ね 読後すごく胸糞...
昔も今も叶いもしないような野望を持つ人が居て、がむしゃらにその目的に食らいつく人がいる、どこからそんなパワーが湧いてくるんだろ、で、大抵失敗に終わることが多いと思うけど、エネルギーはすごいと思う。人を傷つけたら自分が傷つくことになるし、自分を犠牲にし続けるのも、ね 読後すごく胸糞悪くなった、けども、この胸糞悪くなったのは良いことだと思う、これからのわたしのために、 あとたくさん人が出てきてマジで話がわからなかった。男の方が好きそうな内容なのかな、女がほぼ気持ちありませんみたいな扱いだし、時代だけど気持ちが悪い
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【本書の特徴】 ・1600年辺りの日本と世界の描写 ・戦と冒険活劇 ・政治と権謀術数 ・少しだけ、位の低い者と高い者の恋愛描写 ・ノンフィクションである、ということ ・現世に生きる人間と宗教のために死ぬ人間 ・下手にハッピーエンドにしない ・集落や組織にとって少数派の生き方/処世...
【本書の特徴】 ・1600年辺りの日本と世界の描写 ・戦と冒険活劇 ・政治と権謀術数 ・少しだけ、位の低い者と高い者の恋愛描写 ・ノンフィクションである、ということ ・現世に生きる人間と宗教のために死ぬ人間 ・下手にハッピーエンドにしない ・集落や組織にとって少数派の生き方/処世術 遠藤周作氏の作品を初めて読んだが、こんなに読みやすいとは、意外であった。
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山田長政については、アユタヤの日本人町で活躍した人、程度の理解。ペドロ岐部は初めて知った。 長政の最期を知っているとハッピーエンドにはなり得ないのだが、そこへ向けての長政の戦いがなんともいえない。史実だと子供がいたようだが、ここでは常に孤独で1人決断を求められているようなのがなん...
山田長政については、アユタヤの日本人町で活躍した人、程度の理解。ペドロ岐部は初めて知った。 長政の最期を知っているとハッピーエンドにはなり得ないのだが、そこへ向けての長政の戦いがなんともいえない。史実だと子供がいたようだが、ここでは常に孤独で1人決断を求められているようなのがなんとも。そこでも宗教に流れなかったのが強さか。 よく分かっていない部分が多いらしいが(Wikipediaも項目によって濃度がバラバラ)、ペドロ岐部についても含め、色々と知れて収穫大。
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遠藤周作さん、久々に読みました。 10代の愛読書には、遠藤周作さんの本が沢山あります。 今回、タイ旅行の事前勉強に、と思って読んだのですが、タイのお話というより、よくできた物語に、久々降りる駅を乗り過ごしそうになる経験をしました。
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内容紹介 シャム(タイ)の古都で暗躍した山田長政と、切支丹の冒険家・ペドロ岐部――二人の生き方を通して、日本人とは何かを探る長編。
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江戸時代初期、太平の世となった日本を捨て、遠くアユタヤへと渡った日本人。そして、キリシタン禁制の日本を後にして、ポルトガルで神父となった日本人。異国での野心に満ちた生き方が描かれます。
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王国への道は、江戸時代にタイでかなり出世した山田長政を描いた遠藤周作の小説である。山田長政は学校の社会で習った人物であるが、特に出自に不明点が多いことで、歴史上でも謎深い人物なのだろうと思う。そんな謎のある山田長政を描いたこの小説は、私にとってはタイに対する印象の原点の一つと言える。タイ人は、東南アジアにおいて最も不気味で危険な人種と言うのが、私の印象である。 山田長政とタイについて、深い印象を私に与えた本書であるが、一番インパクトのあったのはペドロ岐部、ペトロ・カスイ・岐部の存在である。私はこの本を読むまで、この人物のことは全く知らなかった。ペトロ・カスイ・岐部はそれ以来、私が最も好きな歴史上の人物となり、岐部の足跡を辿ると言うのはテーマの一つとなった。 遠藤周作は基本的には弱い人物に光を当てる作家で、代表作の「沈黙」はその極致だと思う。主人公ロドリゴが踏絵に足を掛けるというクライマックスにおいて、ロドリゴの心の中で神であるキリストが言った、 「踏むがいい。お前の足の痛さをこの私が一番よく知っている。踏むがいい。私はお前たちに踏まれるため、この世に生れ、お前たちの痛さを分つため十字架を背負ったのだ。」 は、私が学生手帳に書き込んだ言葉であるが、そういうのを遠藤周作は主に描く作家で、そこに感情移入したものだった。因みに上述シーンの後、 「こうして司祭が踏絵に足をかけた時、朝が来た。鶏が遠くで鳴いた。」 と遠藤周作は描いているが、これはイエスが幽閉されている大祭司カヤパの家に一番弟子のペトロが師匠を心配して早暁侵入して、家の者に発見された際のエピソードから取っている。お前はイエスの仲間かと問われて「イエスなんか知らない」と三度も言って師を裏切った際、鶏が鳴いたのである。ペトロはその前、「鶏の鳴く前に、あなたは三度私を知らないと言うだろう」と言われていたのはこのことだったのか、と思い知るのである。 そんな、やんごとなきローマ初代教皇たるペトロをもこの弱さ、というのを描いた遠藤周作が描いた強いキリスト者が、この岐部である。 俺にはこんな人生は無理だと思いつつ、今の自分の年齢の時、岐部はどこで何をしていたんだろうか、というのはたまに思う。サウジにいる頃、酷暑の中汗みどろで働いていたのだが、そのころの年齢が、岐部が中東を横断してローマに向かっているのと同じ年齢だった。岐部は、この暑さをどう思ったんだろうか、と思ったりした。 今の私の年齢の時点では、岐部はまだ日本に帰国していないが、既に司祭叙階を受けた欧州は旅立っており、日本への潜入を企てて東南アジアに到達していた筈だ。岐部は37歳でインドのゴアまで到達し、43歳で帰国している。その間、岐部は日本へ戻る船を求め、マカオ、ルソン、そしてアユタヤにも足跡を残している。
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