大聖堂 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
人生の辛い局面をどう悲しみを悲しいまま感じつつ、かつ冷静にスルーしていくか。 「ささやかだけど役に立つこと」で息子を亡くした両親の苦悩と、彼らを救ったパン屋さんの存在。 生きてることと死ぬことはとても近くにある、それと同じく、喜びと悲しみも近くにあることを教えてくれる。一生読み返そうと思う。 カーヴァーさんは本当に労働者に優しい本を書く。人生がゴミクソでも、働かないとご飯は食べられない私にとって、心強い。
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こんなにすっと入ってくる短篇ははじめて。重い話題が多いのに、その人がどんな人なのかとてもよく想像できる。悲しい話が多くて人間の嫌な部分も出るんだけど、何処かあったかくなる。希望が持てる。 『ささやかだけれど、役に立つこと(A small, good thing)』の解題で「悲し...
こんなにすっと入ってくる短篇ははじめて。重い話題が多いのに、その人がどんな人なのかとてもよく想像できる。悲しい話が多くて人間の嫌な部分も出るんだけど、何処かあったかくなる。希望が持てる。 『ささやかだけれど、役に立つこと(A small, good thing)』の解題で「悲しい話だ。本当にヘビーな話だと思う。しかし最後にふっとパンの温かみが手のなかに残るのだ。これは本当に素晴らしいことだと思う。」って村上春樹が言ってて、本当にそれなのよ〜〜〜って10回ぐらいうなずいた
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短篇集。自分の好みだった。ラストに人の覚悟や希望が映し出されるような短編があってとてもよかった。「ささやかだけれど、役にたつこと」は『愛について語るときに我々の語ること』に収録された「風呂」に、続きを少し足したもの。とはいえそれが感動的だった。
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本全体としては、アメリカの中流階級の家庭にまつわる出来事についてのものであった。前半の短編では強い意図を感じさせる語句が文章に散りばめられていて読みやすくあったが、後半の短編に行くにつれてすぐにそれとわかるような隠喩などが減って多様な解釈を許してくれるような文体に変化していくのが...
本全体としては、アメリカの中流階級の家庭にまつわる出来事についてのものであった。前半の短編では強い意図を感じさせる語句が文章に散りばめられていて読みやすくあったが、後半の短編に行くにつれてすぐにそれとわかるような隠喩などが減って多様な解釈を許してくれるような文体に変化していくのが分かり、興味深く感じられた。個人的にいえば登場人物に救いが与えられる後半の短編たちの方が好みであった。
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風景と物語との距離感が実に心地良い。風景を物語の象徴だと受け取ってしまえばそれまでなのだけれど、そこはあえて、ただそこにあるものとして読んだ方が楽しめるはずだ。 この短篇集で描かれるのは、人情劇に近いものなのだけれど、それにしてはテーマが明確で無いし(けして悪いことではない)登...
風景と物語との距離感が実に心地良い。風景を物語の象徴だと受け取ってしまえばそれまでなのだけれど、そこはあえて、ただそこにあるものとして読んだ方が楽しめるはずだ。 この短篇集で描かれるのは、人情劇に近いものなのだけれど、それにしてはテーマが明確で無いし(けして悪いことではない)登場人物たちの感情もはっきりしない(重ねて言うが、けして悪いことではない)。 こういうタイプの小説としては、O・ヘンリーほど劇的ではないし、モーパッサンほど冷たい視線を注いではいない。 ただ実に正確に、実際に存在するであろうタイプの人々に心を寄せて描くその姿勢には、不覚にもうるっとくるものがある。レイモンド・カーヴァーというのは、本当に良い小説家だ。
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とても、おもしろかったです。 読むと、心がざわざわする短篇ばかり。 人の何気ない行動とか、その人の目に映る風景などの描写が続くのですが、それらがこんなにも人間の感情を映し出しているなんて、と驚かされます。 すぐれた小説は映画と同じなのかも。直接的な言葉であれこれ説明しないところ...
とても、おもしろかったです。 読むと、心がざわざわする短篇ばかり。 人の何気ない行動とか、その人の目に映る風景などの描写が続くのですが、それらがこんなにも人間の感情を映し出しているなんて、と驚かされます。 すぐれた小説は映画と同じなのかも。直接的な言葉であれこれ説明しないところが。 村上春樹氏の解説も良かった。 同じものを読んで、こんなにも理解力が違うとは! 驚きます、自分に。(笑) でも、村上さんが選んだ「ベスト4」より、「それに続くAダッシュクラス」の作品が私は軒並み好きでした。「轡」とか「熱」とか、すごく好きだなぁ~。 うーん、でもやっぱり「ささやかだけれど~」もいいし、「羽根」や「コンパートメント」もいいな。 どれも甲乙つけがたい作品集です。
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レイモンド・カーヴァーのマスターピースが収められた短編集であるが、個々の作品である「大聖堂」、「ささやかだけれど、役に立つこと」、「ぼくが電話をかけている場所」は既に読んでいたので、この短編集自体は未読であった。しかし、他にも優れた作品があるといわれているし、短編集として改めて読...
レイモンド・カーヴァーのマスターピースが収められた短編集であるが、個々の作品である「大聖堂」、「ささやかだけれど、役に立つこと」、「ぼくが電話をかけている場所」は既に読んでいたので、この短編集自体は未読であった。しかし、他にも優れた作品があるといわれているし、短編集として改めて読んだ一冊。 前述の3作品がどれも完璧な作品であることは最早言うまでもなく、何度読み返しても素晴らしさを実感できる。「大聖堂」の静かに胸に湧き上がってくる感動や、「ささやかだけれど、役に立つこと」の全く別種の悲しみを背負った2組の奇跡的な邂逅など。 一方、未読の作品では「熱」が素晴らしいと感じた。妻に逃げられた美術教師が子供の世話をしてくれるベビーシッターを探し苦労する中、ようやく見つけた一人の老女性との出会いにより、別れた妻を吹っ切り次のステップを進む端緒を見出す。ベビーシッターの老女性は全てを見通している超越者のようにそこに存在し、進むべき道を教えてくれる宣教師のようでもあり、静謐な美しさが印象に残る。
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ささやかだけれど役にたつこと、大聖堂、熱、コンパートメントが好き。 特にささやかだけれど〜と大聖堂の美しい結末。
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全体的にほろ苦かったり、もっと苦かったりするけど、思わず笑ってしまう箇所もあって、優しさも感じられて、読んだ後、気分がいいです。
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前短篇集『愛について語るときわれわれの語ること』では、満たされぬ女、落伍しつつある男の絶望的な瞬間をばっさり切りぬいた胸苦しい作品が多かった。しかし描かれないラストや行間にわずかな光や望みを感じた。その続きとして『大聖堂』という短篇集があり確かな何かを描いたのかなと思った。破綻し...
前短篇集『愛について語るときわれわれの語ること』では、満たされぬ女、落伍しつつある男の絶望的な瞬間をばっさり切りぬいた胸苦しい作品が多かった。しかし描かれないラストや行間にわずかな光や望みを感じた。その続きとして『大聖堂』という短篇集があり確かな何かを描いたのかなと思った。破綻した主人公たちを支える前世代的な良き夫婦が現れ道を示す話が多くなった。『僕が電話をかけている場所』がとても好き。ジャック・ロンドンや井戸の中やロキシーのエピソードそしてラストもとても良かった。『熱』『大聖堂』では再生がみられ『羽根』にもどこへ行きたいか道が示されている。『ささやか〜』は『愛について〜』の中の『風呂』とあわせて読むと作者の大きな転換がみられて面白い。『コンパーメント』はずるずるアリ地獄に落ちていくように結果ダメ男になるけれど、あれは息子達を大事に思うゆえのずるずる感なのではないかと、私は思う。冷淡なダメ男ならばあんな絶望にはならないのではないかと。素晴らしい短篇集だった。 た。
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