京都・魔界マップ の商品レビュー
京都を舞台にした、若干オカルトの雰囲気漂うこれ系の本は結構出ているようで、これまでにも何冊か読みましたが、この本は都市伝説を越え、マイナー研究の域に入っているもので、その内容にはアヤシイとか胡散臭いという言葉では片付けられない凄味を感じました。 ただ、取り扱うテーマがアンダーグ...
京都を舞台にした、若干オカルトの雰囲気漂うこれ系の本は結構出ているようで、これまでにも何冊か読みましたが、この本は都市伝説を越え、マイナー研究の域に入っているもので、その内容にはアヤシイとか胡散臭いという言葉では片付けられない凄味を感じました。 ただ、取り扱うテーマがアンダーグラウンドすぎて、まゆつばなのかよくわからないものばかり。 まえがきや解説が一切なく、そもそものコンセプトの立脚点もはっきりしないままなので、こういうあやしいシリーズが出ているのかとも思います。 それでも、各項目を監修しているのは大学の先生。 嵐山城などの山城伝説の稿は、私が学生時代に日本史講義を聴講した今谷先生が携わっているため、トンデモ論というわけではなさそうだと判断します。 四条河原や五条河原での処刑など、京都の裏の歴史に触れるような話や、今では歴史の流れに埋もれてしまったエピソードなどが紹介されています。 京都御所の隣にある護王神社は、和気清麻呂を祀ったもの。 もともと、高雄の神護寺に和気氏の御廟も墓もあったのに、わざわざ御苑の隣に社を建てたのは、道鏡の天皇位簒奪を防いだ彼を、近代天皇の守り神という形にしたためだと知りました。 また、建勲神社はもともと山の下にあった小さな祠だったのが、明治時代に山の上に上げてしまったということも初めて知りました。 明治政府が、武の守護神のような形で信長を祀り上げたということで、近代政治の作為がそこにあったことに驚きます。 藤森神社には、現代の競馬の大きな絵馬も奉納されており、ナリタブライアン号などの巨大な絵馬の写真が掲載されていました。 最後に京和菓子のご利益めぐりが載っていて、そこだけ妙にかわいらしい話になっていました。 龍神南北ラインや、失われた山城などは、まだ調査途上の仮定的なもので、ちょっと専門的すぎるきらいもありますが、じっくりと読んでみると、なかなかに興味深い話が揃っていました。 ただ、京都観光用には全く生かせません。 裏歴史やトリビアを知りたい人向けの一冊です。
Posted by
- 1