ゴールデン・エイジ(3) の商品レビュー
最終巻である。主人公ファエトンは記憶とスターシップ〈喜びのフェニックス号〉を取り戻し、敵の存在とその正体を再確認する。というのが前巻の引き。 ところが、本巻冒頭では敵と思った存在は本当に脅威なのか、本当の敵は他にいるのでは、という疑問が投げかけられる。何しろ、この〈黄金の普遍...
最終巻である。主人公ファエトンは記憶とスターシップ〈喜びのフェニックス号〉を取り戻し、敵の存在とその正体を再確認する。というのが前巻の引き。 ところが、本巻冒頭では敵と思った存在は本当に脅威なのか、本当の敵は他にいるのでは、という疑問が投げかけられる。何しろ、この〈黄金の普遍〉といわれる時代、人間の精神も単なる情報として扱いうるので、記憶や信念の書き換えも可能なのだ。精神が書き換えられていないかどうかは純粋知性読み取り装置なるもので検証しなければならないし、それとて、どこに罠があるかも知れない。まあ、人生とはそういうもので、何も確実なことはないから、そこで主人公が葛藤し、判断し、選択し、物語が成り立つのだ。ところが、この〈黄金の普遍〉では超越的な演算能力を備えた人工知能、ソフォテクたちが人間を守っており、判断や選択の助けをしてくれることが第1巻で十分に描かれている。このこともひとつの重要なテーマであり、伏線をなす。それに、われわれ読者にはソフォテクが付いていないのだから、簡単に作者に騙されてしまうのだよ。本巻ではああなのかこうなのかと作者に翻弄され、おかげでページを繰るペースが上がってしまった。 そして、〈喜びのフェニックス号〉が戦いに赴く場は外宇宙かと思いきや、これも騙された! 戦場はといえば、相当にスケールの大きな話であることは保証しよう。しかも、ファエトンは技術者であって、戦士ではないのである。彼の戦いは兵士アトキンスとは違う様相をとる。このあたりがスペースオペラというよりハードSF。そして、この物語は当初から予測されたように『都市と星』の末裔であることを示す。 物語の最初に登場した「老人」が最後にまた登場する。見事な伏線だ。
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