海辺の光景 の商品レビュー
この作品は、単に家族…
この作品は、単に家族の愛とか介護問題を扱った作品ではありません。細部の叙述が、異様な迫力を生む小説です。
文庫OFF
海辺は「かいへん」…
海辺は「かいへん」と読むそうだ。友人によると、この作品について文芸評論家江藤淳は、息子の母親に対する気持ちをよく表していると評したとのこと。そんな息子の気持ちに興味があれば、読むのも悪くない。 ちなみに文庫本についている解説を読むことを常とされている方は、最後の「愛玩」を読んで...
海辺は「かいへん」と読むそうだ。友人によると、この作品について文芸評論家江藤淳は、息子の母親に対する気持ちをよく表していると評したとのこと。そんな息子の気持ちに興味があれば、読むのも悪くない。 ちなみに文庫本についている解説を読むことを常とされている方は、最後の「愛玩」を読んでから「海辺の光景」を読むといいと思う。
文庫OFF
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
ラジオ番組で「宿題」が紹介されていたので図書館から借用。 Amazonの紹介には「家族の相克と虚無的な心象風景を重ねた、戦後最高の文学的達成。」とあるが・・・・
Posted by
「戦後文学放浪記」で言及されていた表題作を読んだ。くらった。分かる、とも思った。 母の、そして死の側で思索と記憶を漂い過ごす9日間。死を前にして訪れる感覚。不安や強いられる気がしてしまうセンチメンタルなもの、所在なさや端的な面倒臭さ、故に感じる不謹慎さと自省。悲しみの...
「戦後文学放浪記」で言及されていた表題作を読んだ。くらった。分かる、とも思った。 母の、そして死の側で思索と記憶を漂い過ごす9日間。死を前にして訪れる感覚。不安や強いられる気がしてしまうセンチメンタルなもの、所在なさや端的な面倒臭さ、故に感じる不謹慎さと自省。悲しみの前に訪れる戸惑い。それらには覚えがあった。完全に分かる、と思ってしまった。 ラストシーン、母親の亡くなった日、作家自身の忘れられない海辺の光景。文章にすると幻想的で少しロマンティックで美し過ぎるのかもしれないけれど、それが必要なのだということも、分かる。作家にも小説にもわたしにも。作中の作家を思わせるキャラクタが「一つの“死”が自分の手の中に捉えられるのをみた。」とき、過去にあったそんな瞬間のことをまた思い出した。青空とタバコの煙。 「頭に浮かんだ言葉は、それを文字に書き写して、もう一度自分で確認して初めて本当の言葉になる」これは新書の方からの引用だけれど、それも改めて納得出来た気がした。そんな風にあの日のこともまた書きたいと思った。
Posted by
高知県の海べりにある精神病院で母を看取る話。題材からして重たいし、内容も重たい。が、情景の描写力と情感の表現力が秀逸で物語に引き込まれる。 真っ赤な朝焼け、強烈な午後の日差し… 対照的に仄暗い病室とそこに横たわる瀕死の母親。 とくに母親の状態の仔細な描写には慄然とする。 それにし...
高知県の海べりにある精神病院で母を看取る話。題材からして重たいし、内容も重たい。が、情景の描写力と情感の表現力が秀逸で物語に引き込まれる。 真っ赤な朝焼け、強烈な午後の日差し… 対照的に仄暗い病室とそこに横たわる瀕死の母親。 とくに母親の状態の仔細な描写には慄然とする。 それにしても文章の上手さは別格であると思う。傑作。
Posted by
海老坂の戦後文学は生きているで推薦された本である。戦地から戻ってきた父親が鶏を飼う経緯から母親が精神に異常をきたし、高知に戻って海辺が見え桜もきれいな精神病院に入院する。そこで母親が死亡するまでの話である。
Posted by
安岡章太郎のある時期の短編は何回か読んでいるが、今回読んでみて「海辺の光景」が大傑作であることは疑いないにしても、掌編の「宿題」がとてもいいなと思った。小学生が夏休みの宿題をやらなかったという非常にくだらないところから話はスタートするのだが、少しずつ自分の周辺を誤魔化していく姑息...
安岡章太郎のある時期の短編は何回か読んでいるが、今回読んでみて「海辺の光景」が大傑作であることは疑いないにしても、掌編の「宿題」がとてもいいなと思った。小学生が夏休みの宿題をやらなかったという非常にくだらないところから話はスタートするのだが、少しずつ自分の周辺を誤魔化していく姑息さと、その姑息さゆえにどんどん追い詰められていく情けなさが非常に安岡章太郎的で味わい深い。ポスターをペリペリしてもどこにもゆけないのに・・・。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
安岡章太郎の文章はパッと見たときの印象がすごくいいんだよなあ。 海辺の光景は家族とのエピソードがかなりそのまま書かれているのではないだろうか。詳しいことは分からないけれど。他の小説のなかに似たエピソードが書かれているからそう思った。作中に出てくる養鶏のくだりとかは、愛玩を彷彿とさせ、そちらの作品では兎となっている。今読んでいたときのことを思い出そうとしても不思議と思い出せないのだけど、読んでたときは圧倒されながら文章を受け取っていた気がする。 宿題、蛾、愛玩は再読で、この人の小説はなんの面白さなんだろう、読んでるときは面白いんだけど何か言葉で表そうと思うとちっとも思いつかない。 はじめて読んだ雨がめちゃくちゃ好きだった。
Posted by
精神を病み、海辺の病院に一年前から入院している母を、信太郎は父と見舞う。医者や看護人の対応にとまどいながら、息詰まる病室で九日間を過ごす。 戦後の窮乏生活における思い出と母の死を、虚無的な心象風景に重ね合わせ、戦後最高の文学的達成といわれる表題作ほか全七編の小説集。 はじめ読ん...
精神を病み、海辺の病院に一年前から入院している母を、信太郎は父と見舞う。医者や看護人の対応にとまどいながら、息詰まる病室で九日間を過ごす。 戦後の窮乏生活における思い出と母の死を、虚無的な心象風景に重ね合わせ、戦後最高の文学的達成といわれる表題作ほか全七編の小説集。 はじめ読んだ時は、現代と当時の家族関係の差が大きすぎて理解できずに終わりました。 解説を読んで分かったのは、この「海辺の光景」は父親の権威の失墜、母親の消失を経て、 息子である主人公が成熟する物語なのだということです。 戦時中の母子の非常に内密な関係が、父親の帰還によって崩されていく。 それと同時に、陸軍少将でありながら敗戦により無職になったために起こった、父親の権威の失墜。 二つの要因により、主人公は家族から解放されて成長するのだということです。 戦後の背景を鑑みても、母親を汚らしい生物として見る主人公に共感できなかったので、★2です。
Posted by
2020/07/06 Youtubeに解説動画をアップしました。 https://youtu.be/CYf_z179m7c
Posted by
- 1
- 2
