大学という病 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
一言で言えば、筒井康隆『文学部唯野教授』の実話バージョンといったところ。何より本書で紹介される戦前の帝大教授の生態に抱腹絶倒。こうした暴露話のディテールだけでも十分に楽しめる。 たとえば自分の著書をひたすら読んで聞かせる教授もいれば、受講生にノートをとらせるが、その内容が「プリントになって売り出されている前年の講義と全く同一」という教授もいる。ノートの手を休めさせるために話す教授の雑談や冗談も、まるで同じ。試しに教授が冗談を言った個所をメモしてみたところ、何とそのタイミングまで寸分の狂いもなかった…。 なお、「武闘派」のイメージが強い河合栄治郎にホモの気があったらしいということも本書で初めて知った。 ただもちろん、本書は単なる暴露本ではなく、れっきとした歴史社会学の本。草創期の東大経済学部における泥沼の派閥抗争(この抗争は結局文部省をバックにした「平賀粛学」で喧嘩両成敗に終わったが、かえって行政による大学自治の侵犯として物議をかもし、その悪名を歴史に残す結果となった)を社会学の理論を駆使しながら考察したもの。とはいえ、かなーり柔らかくして説明されているので、「ガクジュツ的」な取っつきにくさはほとんどないはずだ。 ただ本書を読んで思ったのは、昔の帝大教授と言えどいったん派閥抗争の渦中に入れば、自分の思想信条なんかより目先の勢力争いの方を優先するんだなと。河合を追い落とすための合従連衡で、マルクス派の陣営とファシズム寄りの陣営が結託するんだから、傍から見れば「良心はどこに?」としか言いようがない。 まあ政治なんていうものは、どの次元でも古今東西そんなものなんだろうが。
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