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「坊っちゃん」の時代(文庫版)(第三部) の商品レビュー

4.6

8件のお客様レビュー

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2021/03/08
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

啄木はあまりに破滅的過ぎて、自分だったら耐えられないし関わりたくもないと思ってしまう。『ローマ字日記』でもうお腹いっぱいだったのですが、この物語は啄木の実態を描きながらも寄り添うようなまとめ方なのでこの巻のタイトル「かの蒼空に」が違和感なく感じられる。すごい、という意味で★5です。個人的な好みで言えばやはり重くてしんどくて、好きではないですが。

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2017/10/21

石川啄木のいた「時代」の空気がヒリヒリ伝わる。漫画力の素晴らしさ。 また、石川啄木とは、こんなにも身勝手な、ある意味非常に人間的な人だったとは、印象がかなり変わった。 物語の主人公としてはツカミOK。芸術家とはここまで自分がないといけないのではとも思う。 そういえば、内田百...

石川啄木のいた「時代」の空気がヒリヒリ伝わる。漫画力の素晴らしさ。 また、石川啄木とは、こんなにも身勝手な、ある意味非常に人間的な人だったとは、印象がかなり変わった。 物語の主人公としてはツカミOK。芸術家とはここまで自分がないといけないのではとも思う。 そういえば、内田百閒もさんざん借金して人に迷惑かけていた。 金田一京助の母性的な対応もすごい。 このようなはみでた人物には、かならず平衡をとってくれるよくできた人がそばにいるものですね。 それだけ魅力があったのだろう。

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2017/08/29

主は石川啄木で、その裏に大逆事件の胎動を描くストーリー。それを支える絵が素晴らしい。しかし、啄木の金銭に自堕落な姿を見ると読んでいてやりきれず、なかなか読み進められなかった。本書では直接の啄木の死を描いていないが、彼の余命が僅かであることを知る者としては、その自堕落な借金生活が悲...

主は石川啄木で、その裏に大逆事件の胎動を描くストーリー。それを支える絵が素晴らしい。しかし、啄木の金銭に自堕落な姿を見ると読んでいてやりきれず、なかなか読み進められなかった。本書では直接の啄木の死を描いていないが、彼の余命が僅かであることを知る者としては、その自堕落な借金生活が悲しく映る。あとがきを読み、啄木の詠む歌が自然主義作家を埋没させるほどのものとなる理由が判るような気がしてきた。

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2014/02/09

石川啄木に抱いていた単に悲劇的なイメージを覆された。実際の人物像もあんな風だったのなら生活の困窮は当然の成り行きで、人間性や行動を鑑みても同情は湧いてこなくなった。同情を注げる対象としては彼の運命ではなく性質だ。でもそれも人としてのあり方の一つか。同時に金田一京助の俄かには信じが...

石川啄木に抱いていた単に悲劇的なイメージを覆された。実際の人物像もあんな風だったのなら生活の困窮は当然の成り行きで、人間性や行動を鑑みても同情は湧いてこなくなった。同情を注げる対象としては彼の運命ではなく性質だ。でもそれも人としてのあり方の一つか。同時に金田一京助の俄かには信じがたいほどの聖人ぶりも対照的で印象に残った。

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2011/04/22

借金とその算段は、啄木の人生の主要な一部であった。生活の破綻と、消費へのたらがい難い衝動。小説は完成せず、短歌ばかりが口をついてでる。

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2010/01/30

-貧乏はぼくの病気です この国の病気でもあります- 書けもしない小説を書こうとし、さぼってばかり。女を買い、酒をあおるために借金をしては人の好意に胡坐をかいて逃げる。石川啄木って、なんてダメな男でしょ。漱石や鴎外とは違う、明治の「生活者」啄木、明治と心中するかのように若くして逝...

-貧乏はぼくの病気です この国の病気でもあります- 書けもしない小説を書こうとし、さぼってばかり。女を買い、酒をあおるために借金をしては人の好意に胡坐をかいて逃げる。石川啄木って、なんてダメな男でしょ。漱石や鴎外とは違う、明治の「生活者」啄木、明治と心中するかのように若くして逝った啄木。病気だと深刻ぶりながら、ふと浅草でみた活動写真を想い出して心飛ばし「青草の土手にねころび 飛行機の 遠きひびきを大空から聞く」なんてさらりと口をついて出る天才歌人ぶり・・・やっぱりどうしても憎み切れない。啄木と一緒に明治の蒼空を見れる本。

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2009/12/15

「多少の縁あるひとを見捨てるは恥です。」 「役立とうと思うは義です。」 舞台は明治(末期)。登場人物は夏目漱石、森鴎外、石川啄木、幸徳秋水、管野須賀子、二葉亭四迷をはじめとした明治の文学者・思想家たち。それぞれの生きる明治の世相が、時に痛快に、時に物悲しく描かれています。 登...

「多少の縁あるひとを見捨てるは恥です。」 「役立とうと思うは義です。」 舞台は明治(末期)。登場人物は夏目漱石、森鴎外、石川啄木、幸徳秋水、管野須賀子、二葉亭四迷をはじめとした明治の文学者・思想家たち。それぞれの生きる明治の世相が、時に痛快に、時に物悲しく描かれています。 登場人物の一言一言が重く深く響く、関川夏央・谷口ジローによる劇画的、というか映画的な超名作です。

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2012/03/01

石川啄木は、今から124年前の1886年2月20日に岩手県で生まれた詩人・歌人・評論家。 これは、関川夏央と谷口ジローのコラボだからこそ成しえた、日本マンガ史上の最高傑作です。 その情報量・描写・考察のどれをとっても、従来の文字だけで書かれた文学作品を凌駕する質的なものを持っ...

石川啄木は、今から124年前の1886年2月20日に岩手県で生まれた詩人・歌人・評論家。 これは、関川夏央と谷口ジローのコラボだからこそ成しえた、日本マンガ史上の最高傑作です。 その情報量・描写・考察のどれをとっても、従来の文字だけで書かれた文学作品を凌駕する質的なものを持っています。もし自覚的な文学賞選考委員がいたら、降参しましたという意味も込めて、直木賞なり何なりを贈っていたはずですが、残念ながらそういう現実はありません。 これは1987年から1997年にかけて単行本で出たものが、2002年に文庫化されていますが・・・・・。 文庫本は、値段も半額近くになりコンパクトになって購入しやすくなりますが、ことマンガに関しては、どうしても元の単行本の時の絵よりかなり小さくなりますので、私はあまり好ましく思っていません。 せっかくマンガ家が、精魂込めて描いた精密な描写が台無しになったり、時には意味を喪失させる場合も起こり得るからです。 マンガを本当に好きな人は、文庫本には絶対に手を出さない作法を身につけておられるでしょうが、出来るだけ避けた方が良いと思います。 ところで、この物語は5部構成。第1部で夏目漱石、第2部が森鴎外と来て、第3部が本書で石川啄木が登場します。このあと第4部が大逆事件を描き、最終巻の第5部では再び漱石が登場しますが、これがなんと例の有名な、伊豆は修善寺で大喀血して危篤状態になった折、30分間死んだ時に見た夢の話で、今までに出てきた人たちが次から次へと再登場します。 ともかく、この第3部が衝撃的なのです。さっそうと登場するはずの石川啄木が、現実を突き付けられて、あれとあれよと見てる間に奈落の底に突き落とされるというか、威信失墜というか、今まで抱かれていた夭折の純朴な詩人、親思いで故郷を慕う清廉潔白なイメージから一気に、いかに怠け者で、人のお金でお酒を飲み、平気で借金しっぱなし、どうしようもない助平で、淫乱で、卑猥で、乱れた自暴自棄なダメ人間なのかを、これでもかというくらい見せつけられます。 これが創作ではなく真実なのですから、まいってしまいます。 と言っても、そういえば、かつて確かに『ローマ字日記』を読んで知っていたはずなのに、今更ながらの再認識で本当の姿を知って唖然とするのもおかしなものですが。 ・・・・・啄木は明治41年秋から42年5月までに16、7回も娼婦を買った。啄木は『ローマ字日記』に書いている。 ・・・・暖かい手をにぎり 強い髪の香をかぐと ただ手をにぎるばかりでなく 柔らかな 暖かな まっ白な からだを抱きたくなる しかし そのときは予の心が財布の中の勘定をしているときだ いな いかにして誰から金を借りようか と考えているときだ 予の求めたのは からだも心もとろけるような楽しみだ ・・・・(このあと、卑猥な暴力的な描写が続きます) 確かに啄木自身は、隠してなどいなくて、はっきり公然と、しかも日記という、現実を書きますよ、と宣言して発表している訳ですから、認識しないおまえが悪いと言われればそれまでですが。

Posted byブクログ