貧しき人びと の商品レビュー
貧しさが貧しさを呼ぶ、貧乏の連鎖は現代にも通ずるものがあると感じた。前半の文通でマカールがワーレンカを親のように見守るか温かさを噛み締めたからこそ、ワーレンカの最後の決断は、ワーレンカの気持ちも理解出来るからこそ悲しく感じた。
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ドストエフスキーは「カラマーゾフの兄弟」に続いて2作目。 訳は木村浩さんのもの。 貧困に陥った人間にありがちな振る舞い、思考回路が的確に描写されている。 なので、暮らし向きが良いとは言えない生活を送っている私としては、 身につまされる思いだった。 金がない人間ほど心の美しさを謳うが、 結局は金がなければ何も解決しないのだ。 ちなみに、 マカールとワーレンカの恋の話だと、本の裏表紙に書かれてますが、 恋の話ではないと思います。 マカールが作中で、みなしごのワーレンカの父親がわりをつとめているのだと、 自分で手紙にそう書いているので。
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読書会課題本。20歳ぐらい年齢の離れている男女による往復書簡という形式の小説。原著者のデビュー作でもある。基本設定がかなりリアルでありながら、あえて書かれていない部分も多く、それを色々想像するだけでも楽しく読めた。恋愛小説と位置付けることもできるが、その枠組みに収まりきらないもの...
読書会課題本。20歳ぐらい年齢の離れている男女による往復書簡という形式の小説。原著者のデビュー作でもある。基本設定がかなりリアルでありながら、あえて書かれていない部分も多く、それを色々想像するだけでも楽しく読めた。恋愛小説と位置付けることもできるが、その枠組みに収まりきらないものもある。デビューでこれだけの本が書けるドストエフスキーはやはり只者ではないと思った。
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人はほんのちょっとした、些細な人生の落とし穴にはまると、いきなりにっちもさっちもいかない貧窮に落ち込む、というのは200年経った現代のコロナ禍でも同じだな。
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ドストエフスキーの処女作。あわれな少女とその少女をとても大切に想う紳士の文通がひたすら載ってる。現代版「電車男」みたい。手紙を通して当時のロシアの時代背景を伺える。
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22歳の時、ロンドンへ向かう 飛行機の中で読みました。 見事にはまり、一気に読みましたが 読み終えたあと、 どうも釈然としない気持ちに。。。 これは何故だろうと、探ってみたところ、 実にシンプルな答えが出ました。 半年も文通してお互い嘆きあっているのなら はやく会いに行って...
22歳の時、ロンドンへ向かう 飛行機の中で読みました。 見事にはまり、一気に読みましたが 読み終えたあと、 どうも釈然としない気持ちに。。。 これは何故だろうと、探ってみたところ、 実にシンプルな答えが出ました。 半年も文通してお互い嘆きあっているのなら はやく会いに行って話を付けろよ。 何が「ああ、ワルワーラさん」だよ。 しかし簡単な事柄を膨らませて 文体で読者を惹きつけるのが 作家なんですよね。 20年後にようやく分かりました。
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中年の役人と病気がちな少女が文通するという、今日日ではなかなかエキセントリックな話。それほど貧しくないというところがポイント。
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将来は「カラ兄」を読むつもりなのだが、入門的な意味で読んでみた。往復書簡という今の時代じゃないだろうなあというスタイルが、うまく使われている。深い意味はあるかもしれないけども自分には文学としては読みやすかったというか、わかりやすかった。ページ数も200くらいであったというまに終わ...
将来は「カラ兄」を読むつもりなのだが、入門的な意味で読んでみた。往復書簡という今の時代じゃないだろうなあというスタイルが、うまく使われている。深い意味はあるかもしれないけども自分には文学としては読みやすかったというか、わかりやすかった。ページ数も200くらいであったというまに終わった感がある。でも下手なドラマよりよっぽど面白い。
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男の貧しさは懐事情に留まらない。男の生きがいはかなり年下の女の子とのやり取りだけ。手紙の中では愛を伝えられるのに、人々に関係が漏れると何もかも破滅したと思い込む自信のなさ。自分の人生が上手くいくようになると、苦しんでいる相手の話題に反応を示さず、身の回りで起こったことばかり…。 それでも、借金を頼りに生活の面倒をみてあげようとしたり、結婚の準備の手伝いに奔走したりと、無我に女の子を愛し続ける姿勢に同情する。別れの間際で気付く後悔が切ない。最後の手紙を彼女は読んだのだろうか。
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処女作でこのクオリティっていうのが戦慄もの…。カラマゾフとも地下室の手記とも違う方向性だけど、完成度が高くてさすがだな…。 彼が描き出す人物像ってどうしてこうも鮮明で心に響くんだろう。純粋で繊細な人間が、お互いを思って嘘をつき、我が身を犠牲にし、慰め合い、励まし合う。でも、...
処女作でこのクオリティっていうのが戦慄もの…。カラマゾフとも地下室の手記とも違う方向性だけど、完成度が高くてさすがだな…。 彼が描き出す人物像ってどうしてこうも鮮明で心に響くんだろう。純粋で繊細な人間が、お互いを思って嘘をつき、我が身を犠牲にし、慰め合い、励まし合う。でも、お金や社会的立場の面で制約が多すぎて、互いを助けるには限界があって、歯がゆい思いをしながら見ていることしかできない。 権力、家柄、病気、繊細さ、出会った人、いろんな要素が降り積もってどうにもできない不幸の中にいる2人。絶望の最中でも、神がいつか自分を救済してくれることをひたすら信じて耐えているのが切なかった。自分の日常生活ではこのような逃れられない不幸とは縁遠いようにも感じられるけど、程度の差こそあれ格差は常にあるものだし、努力ではどうすることもできない、逃れられない運命ってあるよな、と思う。 貧困に限って考えれば、ただ怠けているわけじゃない人はきちんと救済される必要があるけど、公的に狡賢く生活している人間との線引きをするっているのは難しいから、必要なところに必要な分供給するって難しいよな。返ってくる見込みのないお金を、貸したりあげたりするっていう行為に抵抗を覚えていたけど、ジェーヴシキンのように救われる人間もいるんだっていうのが鮮烈な印象として残った。ジェーヴシキンのような人がいたら厭わずに手を差し伸べることのできる人間でありたい。 貧困は人間の尊厳を危うくしてしまう。貧困に陥っていると、どんなに美しい心を持っている人でも、お金に固執しなければならないし、精神の安定を失うり、他人からの侮辱が正当なことであるかのように感じられてしまう。周囲の人間も、知らずして人を見下している。 生きていくために、互いを救うために、結局最後は離れることを選ぶのだけど、それはきっとお金よりも2人の心を引き裂くことで、悲しくて仕方ない結末だった。愛情と心の充足との引き換えに生活を得る。それしか道が残されていない。最後の手紙、渡せなかったのかな…。
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