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スティル・ライフ の商品レビュー

4.1

248件のお客様レビュー

  1. 5つ

    88

  2. 4つ

    67

  3. 3つ

    53

  4. 2つ

    6

  5. 1つ

    2

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2020/03/07

書店でふと目に止まり、帯に惹かれ購入した作品。 はじめての池澤作品。その時はこれが1980年代に書かれたものだなんて、まるで知らなかった。 1章目のスティル・ライフは、ぼくと佐々井しかほぼメインでは登場しないが、風景描写や抒情的な文体が古くさく、かつ、ファンタジックさも交えたユ...

書店でふと目に止まり、帯に惹かれ購入した作品。 はじめての池澤作品。その時はこれが1980年代に書かれたものだなんて、まるで知らなかった。 1章目のスティル・ライフは、ぼくと佐々井しかほぼメインでは登場しないが、風景描写や抒情的な文体が古くさく、かつ、ファンタジックさも交えたユーモラスな構成であり、意外と作品の世界観に違和感なく溶け込むことができた。最後に須賀敦子の解説を読み、これ程の巨匠が絶賛する作品とはなんぞやと、二度本作を楽しめた気がした。 2章目のヤー・チャイカは私の理解力が追いつかず、やや食傷気味。

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2020/02/01

上司と話していた時、人生が変わるような本に出会ったことがない、と言ったら後日貸してくださった本。(なかなかハードルの高い借り方) 正直、こんな本は初めて読んだ。上司に借りず自分で選んだ本だったら、なんだこれ意味わからん。で終わっていたかも。 わけがわからなすぎて2回読んだ。 ...

上司と話していた時、人生が変わるような本に出会ったことがない、と言ったら後日貸してくださった本。(なかなかハードルの高い借り方) 正直、こんな本は初めて読んだ。上司に借りず自分で選んだ本だったら、なんだこれ意味わからん。で終わっていたかも。 わけがわからなすぎて2回読んだ。 彼曰く、「自分の気持ちがどんな状態かによって感じ方がすごく変わる本だよね。」 これを読んで理解できる人はなかなかいないと思う。うちの妻は意味わからないって言ってた笑」とのことで 素直に、わからなすぎて2回読みました。不思議な本ですね。と伝えてよかった。 スティル・ライフは、こんなに大胆なことを大きな起伏もなくたんたんと穏やかに描ける物語があるのか。と感じた。 ヤーチャイカは物語の進行を妨げる形で少女の心理描写が入って来て理解するのに時間がかかった。2回目は、理解していたのですんなりと読めた。 どちらも、風景描写がとても素敵で、情景が浮かんでくるようだった。 自分では選ばなかった本なので、上司には感謝したい。

Posted byブクログ

2020/01/09
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

『キップをなくして』という本で初めて池澤夏樹さんの本を読み、他の本も読んでみようということで、芥川賞受賞の本書を手にとった。 "この世界がきみのために存在すると思ってはいけない。世界はきみを受け入れるための容器ではない。 世界ときみは、二本の木が並んで立つように、どちらにも寄りかかることなく、それぞれまっすぐに立っている。 きみは自分のそばに世界という立派な木があることを知っている。それを喜んでいる。世界のほうは、あまりきみのことを考えていないかもしれない" という印象的なパラグラフから始まったと思ったら、 そのまま、すぅーっと、終わってしまった。まさにスティル・ライフという雰囲気が漂っていた本だった。 雪が降ってくるんじゃない、自分たちがあがっているんだ、という描写は新鮮だった。 たしかに、思い込んでるだけで、そうなのかもしれない。 あと、山の景色をプロジェクターで移してみていると、いつのまにかぼんやりとした気分になるというくだり。あるよね、広大な風景を目の前にしたときどこまでが自分で、どこからが自分じゃないのか、わからなくなる瞬間。 あと、明確にはどこからとは言えないけど、この本からすごく星野道夫さんの息遣いを感じた。直前に読んでいた星野さんの著作の解説を池澤さんがしていたから、そう感じてしまうんだろうか。また時が来たら読んでみよう。

Posted byブクログ

2020/01/06

どこか異世界のようで、でもはっとするような地続きの感触も確かにあって、世界と精神の間で「自分」がいくつも生まれていく。 自分の意思を諦めながら、その世界でちゃんと呼吸すること。

Posted byブクログ

2019/10/25

「この世界がきみのために存在すると思ってはいけない。世界はきみを入れる容器ではない。」 冒頭にぐっと心をつかまれた。 「外に立つ世界とは別に、きみの中にも、一つの世界がある。 きみは自分の内部の広大な薄明の世界を想像してみることができる。 きみの意識は二つの世界の境界の上にいる...

「この世界がきみのために存在すると思ってはいけない。世界はきみを入れる容器ではない。」 冒頭にぐっと心をつかまれた。 「外に立つ世界とは別に、きみの中にも、一つの世界がある。 きみは自分の内部の広大な薄明の世界を想像してみることができる。 きみの意識は二つの世界の境界の上にいる。 大事なのは(中略)外の世界と、きみの中にある広い世界との間に連絡をつけること、一歩の距離をおいて並び立つ二つの世界の呼応と調和をはかることだ。」 この作品で描かれる世界観、この作品が体現する文学と自然科学との融合は、自分自身の観念に、とても近い。 たとえば、表題作『スティル・ライフ』中に登場する、同じ配合で染色しても一回ごとに仕上がりが微妙に違う糸の話や、ハトの歩行の話、星の話とか。 そこにあるリアリティは、自分が理系だから感じるものなのかもしれない。 それは、すごくマニアックな知識が詰め込まれていて、よく取材してあるな、という類のものではない。 うまく説明できないけれど、理系的な物の見方や考え方、感覚的なものなのだ。 著者が物理学を専攻していた(中退だけど)というのを知って、とても腑に落ちた。 (ついでに、父親があの福永武彦と知ってびっくり!さらに、娘がマリみての由乃の声を演じている声優の池澤春菜だと知って仰天!) もっとこの人の作品を読んでみたいと感じた。 ちなみに、もう一つの収録作品『ヤー・チャイカ』はあまりピンとこなかったが、探査機の気持ちのくだりは、感覚的にとてもわかる。 レビュー全文 http://preciousdays20xx.blog19.fc2.com/blog-entry-514.html

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2019/10/13

初めて読んだのは学生の時でした。 小説に透明感というものを感じ、選ぶ言葉に衝撃を受けた初めての本でした。(最近は、狙って似たように書かれたものもたくさんあるけれど) 初期の村上春樹さんと同じ匂いがします。

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2019/10/08

『大事なのは、山脈や、人や、染色工場や、 セミ時雨などからなる外の世界と、 きみの中にある広い世界との間に連絡を つけること、一定の距離をおいて並び立つ 二つの世界の呼応と調和をはかることだ。  たとえば、星を見るとかして。』 この本は2つの世界をつなぐ糸の一つ...

『大事なのは、山脈や、人や、染色工場や、 セミ時雨などからなる外の世界と、 きみの中にある広い世界との間に連絡を つけること、一定の距離をおいて並び立つ 二つの世界の呼応と調和をはかることだ。  たとえば、星を見るとかして。』 この本は2つの世界をつなぐ糸の一つです。

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2019/10/01

清い、美しい作品。 冒頭の「この世界がきみのために存在すると思ってはいけない。世界はきみを入れる容器ではない。」と言い切る一文から吸い寄せられる。 そのあとに続く、「2本の木」。昔、この作品が芥川賞を取った後、テレビドラマ化されて、そこでの2本の木の映像も強く印象に残っている。 ...

清い、美しい作品。 冒頭の「この世界がきみのために存在すると思ってはいけない。世界はきみを入れる容器ではない。」と言い切る一文から吸い寄せられる。 そのあとに続く、「2本の木」。昔、この作品が芥川賞を取った後、テレビドラマ化されて、そこでの2本の木の映像も強く印象に残っている。 「チェレンコフ光」は、この作品で初めて聞いた言葉だ。 世界・宇宙・人間といった物理学と哲学を織り込みつつ、投機といった俗者的な流れがある。深い思索に落ちていける。

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2019/06/12

これも何度も読んでしまう本。「ほんのまくらフェア」という風変わりな企画(本の冒頭数フレーズだけがカバーに印刷され、著者名やタイトルはわからない状態で本が売られていた)で出会った。本書のフレーズは「この世界がきみのために存在すると思ってはいけない。」 初めて読んだ時は、理科っぽい話...

これも何度も読んでしまう本。「ほんのまくらフェア」という風変わりな企画(本の冒頭数フレーズだけがカバーに印刷され、著者名やタイトルはわからない状態で本が売られていた)で出会った。本書のフレーズは「この世界がきみのために存在すると思ってはいけない。」 初めて読んだ時は、理科っぽい話題を楽しんだり、響きだけで雨崎に通ってみたりといった登場人物の行動に共感を覚えたものの、全体として何が書いてあるかはさっぱりわからなかった。そのわからなさが楽しくて、何度も読んでしまった。 何度目かわからない今回、ようやくこの物語の意味がわかってきた気がする。「スティルライフ」には静物画という意味があることを知って、文庫版の解説を読んで。まさにこの物語は、静物画を描くように世界の感じ方を表現するためにあったんだ。冒頭の一幕がそのことを教えてくれている。世界の、自然の動きをいきいきととらえたい人に効くお話だと思う。

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2019/05/22

池澤夏樹の作品を読むのはこれが初。 今まで読んで来た作家さんの誰にも似ていない独特な世界観の文章を書かれる方だなと感ました。 特に「スティル・ライフ」は読んでいると周囲の音が吸い込まれ静寂に包まれていくような不思議な感覚に陥りました。 「ぼく」の語りはとてもシンプル。 淡々と進ん...

池澤夏樹の作品を読むのはこれが初。 今まで読んで来た作家さんの誰にも似ていない独特な世界観の文章を書かれる方だなと感ました。 特に「スティル・ライフ」は読んでいると周囲の音が吸い込まれ静寂に包まれていくような不思議な感覚に陥りました。 「ぼく」の語りはとてもシンプル。 淡々と進んで行くように見える語りの中に、時折美しさを放つ一文が静かに現れる… その美しさに何度もはっとさせられました。 しかし、ストーリーの展開はやや淡白な感じがします。 ストーリーよりも言葉や表現の美しさに魅力を感じる人にハマりそうな小説です。

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