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スティル・ライフ の商品レビュー

4.1

248件のお客様レビュー

  1. 5つ

    88

  2. 4つ

    67

  3. 3つ

    53

  4. 2つ

    6

  5. 1つ

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2021/08/28

池澤夏樹の短編2本。 工場で働く主人公のミスをかばってやめていった佐々木。その後しばらくして再び現れた佐々木は「3ヶ月、仕事を手伝ってほしい」と言う。広い自宅の隅で、佐々木の株取引を手伝いつつ、森や宇宙の写真を複製し、二人でそのスライドを眺める日々が続く…。 もう一つの作品『...

池澤夏樹の短編2本。 工場で働く主人公のミスをかばってやめていった佐々木。その後しばらくして再び現れた佐々木は「3ヶ月、仕事を手伝ってほしい」と言う。広い自宅の隅で、佐々木の株取引を手伝いつつ、森や宇宙の写真を複製し、二人でそのスライドを眺める日々が続く…。 もう一つの作品『ヤー・チャイカ』も、宇宙をきっかけにロシア人との間の友情を描いた作品。 先に読んだ1冊の印象から、児童文学作家のイメージが強かったが、こちらも柔らかい文章で、かといって純文学ほど構えるほどでもない適度な深さの作品である。 1本目は不思議な友人の話であり、三浦しをんの小説や坂田靖子の漫画にありそうな、半分よくわからないが、害もないという男。2本目は気の良いロシア人と、体操を習っていて、どことなく論理的でサバサバした娘。ドロドロしない少女漫画の設定のような登場人物である。 かと言って毒がないわけでもなく、両作品ともに、途中でちょっとビターな演出があったりする。 両作品とも、話を書き始める際のきっかけになったのだろう、宇宙への憧れといったような文章は1ページあまりほど挟み込まれるのだが、少々全体のストーリーから浮いている。また、『ヤー・チャイカ』のディプロドクスのくだりは、本編とは結局関係ないわけで(まあ、大きい何かの比喩から入れられているんだろうけど)、なんというか、ちょっと余計な感じはした。そのへんも含めて、坂田靖子っぽいんだよね。

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2021/07/17

これは手元に大切に残しておき、今後の人生で時折読み返したい本です!うまく説明できないけれど、他で経験したことのない世界観や表現が、とにかく素晴らしかったです。

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2021/07/08

芥川賞にも選ばれた中編小説。 染色工場でアルバイトする「ぼく」と、どこか変わったところのある「佐々木」が知り合い、分かれる話。 日常やその中の風景を切り取ったように穏やかに物語は進みます。 「ぼく」が見る周囲の世界、「佐々木」が語る宇宙と科学の話。 それらが、無機質で詩的な透...

芥川賞にも選ばれた中編小説。 染色工場でアルバイトする「ぼく」と、どこか変わったところのある「佐々木」が知り合い、分かれる話。 日常やその中の風景を切り取ったように穏やかに物語は進みます。 「ぼく」が見る周囲の世界、「佐々木」が語る宇宙と科学の話。 それらが、無機質で詩的な透明感のある文章によって抒情的に紡がれています。 初めて読んだとき、美しい文章や表現に心打たれました (読プロ現役学生:Rei)

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2021/06/13

朝、公園でコーヒー飲みながら読み、この本のミステリアスな世界観に酔うのがお気に入りでした。 村上春樹が思い浮かんだ。

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2021/06/04
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

「雪が降るのではない。雪片に満たされた宇宙を、ぼくを乗せたこの世界の方が上へ上へと昇っているのだ。静かに、滑らかに、着実に、世界は上昇を続けていた。ぼくはその世界の真中に置かれた岩に坐っていた。岩が昇り、海の全部が、厖大な量の水のすべてが、波一つ立てずに昇り、それを見るぼくが昇っている。雪はその限りない上昇の指標でしかなかった。」 1番印象に残った部分でした。 p.2019/07/25 18:42

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2021/05/29

スティル・ライフ 今の自分に、そこまで刺さらなかった。 ただ、つかみの文章、文体の綺麗さ、美しさのなかにあるちょっとした緊張、これらはとても気に入った。 世界を相対化させるような、本だなと思った。

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2021/05/24

要素多彩で調和しているのが不思議。この本を好ましく思う理由は、意識が空へと向いているから。表題作は染色の話から始まって、どこに帰結するのか予想がつかず、そうできるはずもない展開となった。佐々木さん、またいつかどこかで、ふらりと主人公の前に現れてほしい。「ヤー・チャイカ」のほうは、...

要素多彩で調和しているのが不思議。この本を好ましく思う理由は、意識が空へと向いているから。表題作は染色の話から始まって、どこに帰結するのか予想がつかず、そうできるはずもない展開となった。佐々木さん、またいつかどこかで、ふらりと主人公の前に現れてほしい。「ヤー・チャイカ」のほうは、ディッピーと一緒にいた“わたし”をカンナと思わせつつ、別の誰かや自分とも繋がる部分が感じられ、良き気分で終わった。

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2021/05/15

今作の"Still life"は【静かな生活】という意味合いらしいが、そう言われると実にしっくりくる。1988年の作品だが、無欲で達観した様子の青年二人の人物造形は不思議と現代的でもあるような。情景的で寂寥感の漂う映像的な作品で、テレビドラマ化もされている様だ...

今作の"Still life"は【静かな生活】という意味合いらしいが、そう言われると実にしっくりくる。1988年の作品だが、無欲で達観した様子の青年二人の人物造形は不思議と現代的でもあるような。情景的で寂寥感の漂う映像的な作品で、テレビドラマ化もされている様だが、個人的にはラジオドラマ版の方に興味がある。併録作「ヤー・チャイカ」の恐竜のくだりは卒業を控えたカンナの心境を描いたメタファーであろうが、彼女の視点が一切ないので推し量るしかない。自分を取り巻く世界と適切な距離感を取っている登場人物たちに憧憬する。

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2021/04/25

どうしようもない事っていっぱいあるんだけど、悔しかったり納得いかなかったり。星の位置を変えられないようにどうしようもないことがある。って考え方はそんなどうしようもない気持ちをスッと飲み込める。そう、仕方ないねってなれる。

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2021/03/17

フォロワーさんのお勧めで読みました。冒頭の文章から惹き込まれました。ある理由から根無し草のように生きる佐々井と主人公である「ぼく」の物語は書かれた時代の雰囲気が詩的にパッケージされ、物語自体が広大な宇宙を漂う一つの衛星のよう。父と娘二人暮しの生活とひょんなことで知り合ったロシア人...

フォロワーさんのお勧めで読みました。冒頭の文章から惹き込まれました。ある理由から根無し草のように生きる佐々井と主人公である「ぼく」の物語は書かれた時代の雰囲気が詩的にパッケージされ、物語自体が広大な宇宙を漂う一つの衛星のよう。父と娘二人暮しの生活とひょんなことで知り合ったロシア人の物語「ヤー・チャイカ」もまた登場人物達それぞれが一つの惑星だ。しばし同じ時を共有し、限りなく接近しては軌道が逸れて離れていく。誰しも誰かと何時までも共に在ることはできない。けれども確かに近づき、重なり合った瞬間の軌跡は存在し、美しい弧を描いて残るのだ。遠く離れても、関わり合った人々の瞬きは消えはしない。「ここにいる」と煌めきながらシグナルを送り続ける。残像として、懐かしい思い出として。解説が須賀敦子さんだったのも良かった。

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