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八甲田山死の彷徨 の商品レビュー

4.2

215件のお客様レビュー

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    80

  2. 4つ

    85

  3. 3つ

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2024/05/08

「坂の上の雲」を読んだときは明治はチャンスに満ちて明るい時代だったのかなと思ったけど、この本を読むとまた見方が変わる。今と比べて根性論の方が科学よりも優位で階級社会や差別意識が強く残っている世の中の窮屈さみたいなもの感じた。無謀に挑まされることを強いられて途方もなく辛い思いをして...

「坂の上の雲」を読んだときは明治はチャンスに満ちて明るい時代だったのかなと思ったけど、この本を読むとまた見方が変わる。今と比べて根性論の方が科学よりも優位で階級社会や差別意識が強く残っている世の中の窮屈さみたいなもの感じた。無謀に挑まされることを強いられて途方もなく辛い思いをして気が狂って苦しくも無惨に死ぬようなことは、自分はもちろん家族にも絶対に経験させたくないと思った。今の時代でよかったと思った。 それと、寒さとか辛さとか自然の恐怖とか理不尽さとか人間の愚かさとかいろんなものをたった300頁あまりの文庫本でリアルに想像し擬似体験できる読書という行為の奥深さを改めて実感した。

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2024/04/26

何ですか、この既視感というか、無能さというか、自意識の欠如は。 うろ覚えの映画のイメージとはかけ離れていて、あまりに酷過ぎる話を濃厚に飲み込まされる。 色々な立場からの見方はあるんでしょうが、とにかくどんなことがあろうと謙虚さは不可欠ですなぁ。

Posted byブクログ

2024/04/12
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

1902年におきた八甲田雪中行軍遭難事件をモデルにした小説。 八甲田雪中行軍遭難事件とは、210人中199人が死ぬという、日本山岳史上最悪の遭難事故です。 遭難の描写は壮絶。 明治時代の日本軍の話なので、理不尽さも凄い。 吹雪の中、部下にラッパを吹かせるなど正気とは思えないですし、そのせいで唇が剥がれ凍死してしまった兵士が本当に可哀想です。 本作の主人公、神田大尉は、遭難中に現地解散を指示し、リーダーとしての責任を放棄してしまった人です。 しかし悪役には描かれていません。 責任は神田大尉が負っているのに、上官の山田少佐が同行し、あれこれ指示をだす。 平民出の引け目もあり山田少佐に逆らえず、次第に窮地に陥っていく。 読者が共感し、思わず同情してしまう人物像になっています。 平民から大尉の栄光を手にした神田大尉が、尽力虚しく無能指揮官の誹りを背負い死んでいく。  壮絶な遭難描写だけでなく、神田大尉の悲哀もこの小説の見所です。

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2024/03/22

組織論やリスク管理などのビジネスの視点でも興味深い本でした。 参加者ほぼ全滅という結果になってしまった無謀な八甲田山の冬季軍事訓練。 メディアで見たことがある「ほぼ全滅」したのは青森の5聯隊であり、5聯隊と逆ルートで八甲田山越えを目指した弘前の31聯隊は「全員生還」したといいま...

組織論やリスク管理などのビジネスの視点でも興味深い本でした。 参加者ほぼ全滅という結果になってしまった無謀な八甲田山の冬季軍事訓練。 メディアで見たことがある「ほぼ全滅」したのは青森の5聯隊であり、5聯隊と逆ルートで八甲田山越えを目指した弘前の31聯隊は「全員生還」したといいます。 この事実を知っている人は少ないのかもしれません。 最近読んでいた『ゴールデンカムイ』で、八甲田山の生存者といわれるアイヌの兵士が出てくるのですが、きっと31聯隊だったんだなあ... この本は、八甲田山越えを成功させた31聯隊のストーリーのあとに5聯隊が描かれており、いわゆる「成功と失敗」の対比のようでわかりやすかったです。とはいえ31聯隊の徳島大尉の傲慢とも思える行動に違和感を感じることもあり、成功と言われている31聯隊にも組織の体質など問題があることがわかります。 5聯隊は、読者としては結末を知っていることもあり、読んでいて感情を揺さぶられます。 この遭難事件の失敗の原因は複数あるけれど、どうしても感じてしまうのは階級型組織の闇。 『失敗の本質』を読んで、日本の組織の体質は現代にも色濃く残っていると感じましたが、それ以前に八甲田山の失敗は大東亜戦争で生かされなかったということに虚しさを感じてしまいました。

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2023/09/22

淡々と事実だけを伝えるように、 極限の寒さと飢えとかつえとで屈強な隊員たちが狂い死んでいく様を記録していく異様な作風は、当時の小説業界にかなりの衝撃を与えたのだろうなと想像しながら読み進めた。 ただ、個人的な大失敗は、 本作の直前に小説版の神々の山嶺を読了してしまったこと。 ...

淡々と事実だけを伝えるように、 極限の寒さと飢えとかつえとで屈強な隊員たちが狂い死んでいく様を記録していく異様な作風は、当時の小説業界にかなりの衝撃を与えたのだろうなと想像しながら読み進めた。 ただ、個人的な大失敗は、 本作の直前に小説版の神々の山嶺を読了してしまったこと。 もちろん、両作品の主軸となるべき点は大いに異なるため、比べること自体が無粋極まりないことは百も承知なのだが、 夢枕獏氏が描く雪山の壮麗さがあまりにもインパクト強く、 どうしても本作の淡々と記される雪山の描写が物足りなく映ってしまった。 今後は、少しでも舞台設定が似通った作品を立て続けに読む場合は、少し寝かせることを肝に置きたい。 自戒の念も込めての感想。

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2023/09/04

図書館で見つけて一気に読んだ 人がバタバタ倒れてく描写が淡々としてるのが素敵で、それとは別にそれぞれに研究を課すのが人体実験なんだなと思わせてくる 最後小綺麗にまとめられたせいで小説と思い出してしまうのが個人的には少し残念

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2023/08/10

 青森旅行で八甲田山雪中行軍遭難資料館に寄ることになったので、その予習として読んだ本。資料館やその周辺に行った際、「あぁ、ここがあのシーンの場所かぁ」と感慨に浸ることができて、よかった。  雪山の進軍という異常な行為において露見する、階級社会や身分制度。成功・失敗という結果と、...

 青森旅行で八甲田山雪中行軍遭難資料館に寄ることになったので、その予習として読んだ本。資料館やその周辺に行った際、「あぁ、ここがあのシーンの場所かぁ」と感慨に浸ることができて、よかった。  雪山の進軍という異常な行為において露見する、階級社会や身分制度。成功・失敗という結果と、それによって得た成果。何が正しくて何が間違っていたかも、吹雪の中で見失ってしまう。分かりやすさのない、面白い小説だった。  また、私も少しだけ雪山登山の経験があり、雪山登山で必要な装備やノウハウ等は最低限備えている。そうした視点から見ると、壊滅した青森5聯隊の装備がいかに貧弱だかがひしひしと伝わってくるし、逆に言えば現代の装備があれば遭難なんてしなかったのかなとも思わないでもない。(まぁ進軍なんだから登山と比較してもしかたないのだが)  どんなに装備を固めても怖いものは怖い。まさに壮大な人体実験であり、頭の下がる思いがする。  青森の八甲田山雪中行軍遭難資料館の裏手には犠牲者のお墓が静かに並んでいるが、そこには軍隊という階級社会ならではの厳然たる階級の差があった。並び順であるとか、墓石の大きさであるとか。そんなところにも軍の規律的なものが入り込むのは現代に生きる私には理解が難しいけれど、現代的な価値観による安易な解釈を拒んでいるようにも見えた。 (これ、本の感想じゃないな……)

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2023/06/02

面白かったけど、孤高の人の方が好きかな。長さの割に登場人物が多く、あれこの人既に出てたっけなという事が何回かあった。もう一回丁寧に読めばもっと楽しめるかも。

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2023/05/04

新田次郎氏の特長が活かされたノンフィクションの傑作。雪中彷徨の表現の迫力に引き込まれた。事実と描写のマッチに圧倒された。

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2023/02/25
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

これまたトラウマ作品です。 極限の寒さと疲労のため精神に異常をきたして、吹雪のなか着ている服を脱いで裸になってそのまま凍死する兵士。 子供の頃、テレビで見たワンシーンが強烈でした。 小説では雪山と、それに翻弄されながら生死を分ける二つの部隊の描写は、気象学者でもある新田次郎でなければ書けなかったと思います。 組織の在り方とか、明治という時代の暗さとかいろいろ考えさせられる作品でした。 映画もちゃんと観ないといけないな。

Posted byブクログ