山の音 の商品レビュー
高校生のときにお決まりの「伊豆の踊子」「雪国」「古都」を読んで以来の川端康成.そのときにすっかり退屈してしまい,もう二度と読まないだろうと思っていた.それが久しぶりに読んでみると,信吾の年にはまだ間があるにもかかわらず,強く引き込まれてしまった.いろいろなものの喪失の寂しさがやり...
高校生のときにお決まりの「伊豆の踊子」「雪国」「古都」を読んで以来の川端康成.そのときにすっかり退屈してしまい,もう二度と読まないだろうと思っていた.それが久しぶりに読んでみると,信吾の年にはまだ間があるにもかかわらず,強く引き込まれてしまった.いろいろなものの喪失の寂しさがやりきれないほど伝わってくる.老境に入って菊子のやさしさは身にしみるだろうなぁ. 会話が多く,段落も短いのでどんどん読めるのも意外だった.
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何年も前に退屈に感じて挫折していた作品。改めて読んでみると非常に良かった。菊子がかわいすぎる。当然これは主人公目線によるものだが、彼にとってそれだけ菊子がかわいく写っていたということだろう。優れた書き手というのは日常の些細なことを描写するのがうまいなと再認識した。
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久しぶりに川端康成の作品を読んで、まっとうな日本語の文章表現とはこういうものだと感じさせられた。そして、その表現の中には、今の日本に存在しないように思われる情緒的な感覚が溢れている。そのことを嘆くつもりなどは全くないが、この点において川端康成の作品はこれからも後世に残る価値がある...
久しぶりに川端康成の作品を読んで、まっとうな日本語の文章表現とはこういうものだと感じさせられた。そして、その表現の中には、今の日本に存在しないように思われる情緒的な感覚が溢れている。そのことを嘆くつもりなどは全くないが、この点において川端康成の作品はこれからも後世に残る価値があるのは間違いない。
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会話や行動で全ての表情が伝わってしまう文章能力。 この本は戦後の中流家庭の様子を描きながら、恋に似た淡い感情を息子嫁に抱く老人の物語である。 ある程度読んだところで、「渡る世間は鬼ばかり」の上質で品のあるバージョンを一瞬想像してしまった。 嫁姑のいさかいなどないが、様々な出来...
会話や行動で全ての表情が伝わってしまう文章能力。 この本は戦後の中流家庭の様子を描きながら、恋に似た淡い感情を息子嫁に抱く老人の物語である。 ある程度読んだところで、「渡る世間は鬼ばかり」の上質で品のあるバージョンを一瞬想像してしまった。 嫁姑のいさかいなどないが、様々な出来事がある一家の杞憂が渡鬼を想像させてしまう。 この物語で特に心情面は描かれていないように見える。 しかし会話や行動の端々に真意が読み取ることが出来て、その表現方法も情緒的で美しい。 少し老人の憂いさや少しの頼りなさが、現代の人たちとも通づるものがある印象も受けた。 どの家庭にでもあるであろう本心と、いくつ年を重ねても青春の恋のような淡い想いへの錯覚。 この恋心と親しみをこめる心の危うい境界線も1つの見所だと感じた。
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この作品は全編、一家の長である信吾視点で描かれており、それ故に出来事は全て信吾のフィルターがかかって描かれているのかな、と。 そう思って読んでいたんですが、信吾が、何かにとらわれているのか、したかったができなかったこと、したくはなかったがしてきたこと、何か、罪というか、そういう...
この作品は全編、一家の長である信吾視点で描かれており、それ故に出来事は全て信吾のフィルターがかかって描かれているのかな、と。 そう思って読んでいたんですが、信吾が、何かにとらわれているのか、したかったができなかったこと、したくはなかったがしてきたこと、何か、罪というか、そういうものに対する、償いというかそういうものを感じました。 的確な語彙がない自分を悔みます。解説には「日本古来の悲しみ」と書かれていました。僕が感じたものがそれだったのかどうかはわかりませんが、なるほど、と思いました。
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初版 1954年 あらすじ 老いに目覚めはじめた信吾は、息子の度重なる放蕩に悩み、その嫁菊子に淡い想いを寄せる。時折聞こえる山の音に死の恐怖を覚える一方、菊子の面影から、遠い日に抱いた恋心が蘇る。 読後感想
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比喩表現に線をひきながら、2回読んだ。 「言葉を大切にする」ということを改めて意識させられた。 にほんごのかのうせい。 あと数回味わってから、 須賀敦子の伊訳版に挑戦する。
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初めて「文学」に衝撃を受けたのかもしれない。 衝撃というか、静かな感動と苦しみと時が流れてる。 人の書き分けもいいと思う。 改行多いのは気のせい・・・?
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主人公の周りの人にはメロドラマ的な事件が起こるけど、主人公自身には本当に何も起こらないし、これと言った行動もない。だけど、それがかえって何気ない日常の中の微妙な感情の起伏を表現しています。 初老にさしかかった主人公と、昔の憧れの女性を思い出させる息子の妻との恋愛とも言えないくらい...
主人公の周りの人にはメロドラマ的な事件が起こるけど、主人公自身には本当に何も起こらないし、これと言った行動もない。だけど、それがかえって何気ない日常の中の微妙な感情の起伏を表現しています。 初老にさしかかった主人公と、昔の憧れの女性を思い出させる息子の妻との恋愛とも言えないくらいのかすかな好意の描写はまさに名人芸。
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成瀬監督の映画(昔の映画)に興味を持ち、映像を見る前に本を読もうと購入。老人と言って良いのか62歳のおじいさんが主体の家族の話。老人夫婦と老人と同居する若い息子夫婦、出戻りの実の娘の色々な問題が絡み合いながら話が進行する。老人と嫁の自然や季節の会話が、重い空気を和ませるが、全体と...
成瀬監督の映画(昔の映画)に興味を持ち、映像を見る前に本を読もうと購入。老人と言って良いのか62歳のおじいさんが主体の家族の話。老人夫婦と老人と同居する若い息子夫婦、出戻りの実の娘の色々な問題が絡み合いながら話が進行する。老人と嫁の自然や季節の会話が、重い空気を和ませるが、全体としては重い話。やはり若さというのは生命力に繋がるので、老いていく人が主体の物語は読んでいて息苦しくなるときもあった。それでも推理小説ではないのに、先を先をと読み進めてしまう。読んでおいて損はない名作。
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