山の音 の商品レビュー
京都弁がとてもきれい。 言葉ってこんなにきれいなんですね。 お嫁さんと舅の間に流れる空気感が優しくてあったかい感じがします。 家長としての責任もあるのだろうけど、夫である息子よりもお嫁さんの味方なのですよね。 舅お嫁さんに恋をしてたのでしょうか。だとしたらおとなの恋です。
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ありふれた家族の日常。登場人物の心の動きが、ちょっとした季節の変化とともに描かれています。 さらさらした感覚が、印象的でした。
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ひとつひとつの章が独立した物語を描いているような 川端康成らしいこじんまりした美しい作品。 オチを求める物語ばかりで疲れたときに。
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登場人物一人一人の細かい観察眼を踏まえながら、生きた時代性や自然美が混然一体となってストーリーが展開していく。 この微妙な人生の機微をここまで肉薄して描くことのできる作家は恐らく現代にはいないだろう。だからこそ僕は川端康成に毒され、憧憬の念を抱いてしまう。 これはストーリーで...
登場人物一人一人の細かい観察眼を踏まえながら、生きた時代性や自然美が混然一体となってストーリーが展開していく。 この微妙な人生の機微をここまで肉薄して描くことのできる作家は恐らく現代にはいないだろう。だからこそ僕は川端康成に毒され、憧憬の念を抱いてしまう。 これはストーリーで語るものではない。清濁織交ざった人間心理に直接問いかけてくる本だ。素晴らしいの一言。
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呆けはじめる歳になるまでずっと、初恋の人を忘れられない男、夫婦仲が上手くいかない寂しさを舅の優しさで紛らわす若い嫁、自分の結婚の失敗を親のせいにする出戻りの娘、その親を見ているせいか可愛げのない孫、さらに、これだけ問題アリアリなのに能天気な妻。 一見そうでもないのに内実は見事にば...
呆けはじめる歳になるまでずっと、初恋の人を忘れられない男、夫婦仲が上手くいかない寂しさを舅の優しさで紛らわす若い嫁、自分の結婚の失敗を親のせいにする出戻りの娘、その親を見ているせいか可愛げのない孫、さらに、これだけ問題アリアリなのに能天気な妻。 一見そうでもないのに内実は見事にばらならな家族の話が淡々と進む。川端康成という人も、この主人公と同じく冷たい人だったんだろうな、と思ってしまう。 これといった解決も光明もないまま唐突に終わるところも、この話を象徴しているような気さえしてきた。
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「世界最高の小説ベスト100」に入った日本の2作品のうちの一つということで読んでみました。登場人物の感情の描き方が素晴らしい。心の奥底では、思いつくけど言えないことまで書き切ってる感じが。
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大好きな一冊。 戦後の日本、鎌倉を舞台に〈家族〉の中に生まれる複雑な機微が描かれています。 無駄がなく奥深い文章はまるで能面のようです。
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面白かった。 ホームドラマが繰り広げられる中に、叶わなかった憧れや戦争によってもたらされた無常感や、老いへの不安などが直接言及されないまでも描かれている。それらの心象は全編に渡って低く鳴っている「山の音」にも託されている。 信吾は、亡くなった義理の姉への恋心を菊子に持ってしまっ...
面白かった。 ホームドラマが繰り広げられる中に、叶わなかった憧れや戦争によってもたらされた無常感や、老いへの不安などが直接言及されないまでも描かれている。それらの心象は全編に渡って低く鳴っている「山の音」にも託されている。 信吾は、亡くなった義理の姉への恋心を菊子に持ってしまっていたところを、「菊子を自由にしてやること」で断ち切ることで信吾の物語は終わる。 義理の姉への恋心が、綺麗に整えられたモミジの盆栽で表現されているあたり、その恋心はもはや対象を失った観念的なものだったのだと思う。 それは最後に菊子たちと故郷の山のモミジを見に行こうというあたりとうまく対応して、菊子への思いが観念的な恋心の錯覚から、生きた家族愛のようなものに変わったようである。 修一の、新しい命を命と思わないような自暴自棄ぶりからは、修一が戦争で何か無常感のようなものを心に塗りつけられてしまったような感じがした。 ともかくも、戦後に生きる家族という場を利用して、失われてしまったものへの愛しさや哀しさを心の奥底に持ち続ける日本人的な感性を描いた小説だと思った。 失われてしまったものに特別感傷的になって表に出しやすくて浸りやすいのは男の常なのかもしれない。それに対してこの小説の女性は男性よりも逆境に強くてパワフルだった。
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晩年の作品。家族の相関関係にひそむ心情が、たんたんと静謐にかかれている。 人間のつながりを描写しているのに、その背景にある自然の大きな気配が浮き上がってくる。
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