第三の嘘 の商品レビュー
アゴタ・クリストフの三部作完結編。 一作目からの衝撃を経てついに真実が明かされる。 「あのこと」がすべての始まりであった。 ようやくすべての事柄に納得はいくが なんとも厳しい事実にやりきれない。 悪を定めないので、誰も責められないもやもや感が悲しい。 そのような感情の点では現実的...
アゴタ・クリストフの三部作完結編。 一作目からの衝撃を経てついに真実が明かされる。 「あのこと」がすべての始まりであった。 ようやくすべての事柄に納得はいくが なんとも厳しい事実にやりきれない。 悪を定めないので、誰も責められないもやもや感が悲しい。 そのような感情の点では現実的であった。
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孤独を癒すために書かれたはずの物語がたどり着いた先は孤独だった 希望や幸せを望むことにすら疲弊した人々 あまりに救いがない 事実だけを記した、淡々とした文体で描かれているのがせめてもの救いか ‘一冊の本は、どんなに悲しい本でも、一つの人生ほど悲しくはありません’と書かれているけれ...
孤独を癒すために書かれたはずの物語がたどり着いた先は孤独だった 希望や幸せを望むことにすら疲弊した人々 あまりに救いがない 事実だけを記した、淡々とした文体で描かれているのがせめてもの救いか ‘一冊の本は、どんなに悲しい本でも、一つの人生ほど悲しくはありません’と書かれているけれど、こんなに悲しい人生はむしろフィクションの中にしかないんじゃないか 読んでいて決して楽しい気分にならないのに、逆らうことのできない引力がある 恐らくこれから何回か手に取ることになるだろう けれど私はこの本になにも期待しちゃいないし、なにも求めていない
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不穏な気持ちで読み進めることになる。 小説とはこういうものであると認識する一連の作品。 ・戦争による、家庭の悲惨さ、孤独 ・もはや子供の力も、何も及ばないほどの ○一冊の本は、どんなに悲しい本でも、一つの人生ほど悲しくはあり得ません(14頁)
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訳者あとがきにもあるように、この三部作は推理小説のように伏線を回収していきながら最後に種明かしをするような作品じゃないから、腑に落ちない部分があるのは仕方がない。それよりも肌感覚として感じざるをえないのは「一冊の本は、どんなに悲しい本でも、一つの人生ほど悲しくはありません」と作中...
訳者あとがきにもあるように、この三部作は推理小説のように伏線を回収していきながら最後に種明かしをするような作品じゃないから、腑に落ちない部分があるのは仕方がない。それよりも肌感覚として感じざるをえないのは「一冊の本は、どんなに悲しい本でも、一つの人生ほど悲しくはありません」と作中でクラウス(リュカ)に語らせた、作者自身の生々しい、寂寥と不在感である。浮かび上がるひとつの切実な生に僕は思いを馳せたい。
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物語をうまくクロスリンクさせることで面白かった。ストーリー上の事実に虚構の筋書きをリンクさせることで話をちょいと複雑に仕上げ。しかしまぁepiに加えられるだけのことはあると思いまする。満足でしたありがとう。 三巻通して通奏低音をなしているのは「家族、孤独、戦争」という重いテーマ...
物語をうまくクロスリンクさせることで面白かった。ストーリー上の事実に虚構の筋書きをリンクさせることで話をちょいと複雑に仕上げ。しかしまぁepiに加えられるだけのことはあると思いまする。満足でしたありがとう。 三巻通して通奏低音をなしているのは「家族、孤独、戦争」という重いテーマだと捉えているけれど、巻が進むにつれて「戦争」というテーマが形を変えて他のテーマに絡みついていく。これもなかなかおもしろいのではないのー、と思った次第であるある。なーんか蝶の一生のような、つまるところとっても変化に富んだ小説だったなぁと感じる。
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「悪童日記」「ふたりの証拠」「第三の嘘」を続けて読了。読み終わってから数時間後になって何故か泣けてきた。読まなきゃ良かった、でも読んで良かった。
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『悪童日記』『ふたりの証拠』ときて本作が完結編。 彼(ら?)が常に紙とペンを必要としていた理由が明らかに。 でもでも、これ間をあけて読むシリーズではないですね。 双子、別れ別れ、再会、とキーワードを散らしつつも、そのキーワードがはたして真実なのか、彼の創作の世界なのか、ごっちゃ...
『悪童日記』『ふたりの証拠』ときて本作が完結編。 彼(ら?)が常に紙とペンを必要としていた理由が明らかに。 でもでも、これ間をあけて読むシリーズではないですね。 双子、別れ別れ、再会、とキーワードを散らしつつも、そのキーワードがはたして真実なのか、彼の創作の世界なのか、ごっちゃまぜになる。 3作の完結、とはいえ、これまでの謎が明らかになるわけではない。 むしろ、もっと深めて深めて薄ら怖い感じで幕を閉じる。 やさしい小説ではない。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
リュカは「自分に起こったことを書こうとしてるけど、時に現実は辛すぎて直視できないから、現実でないことを織り交ぜて書く」みたいなことを『ふたりの証拠』で言っている。『悪童日記』も『ふたりの証拠』も、さして楽しい人生ではないのに、そんな話を書かざるを得なかったということは、本に書かれていないリュカの本当の人生は、あれより辛かったということで…。そしてこの小説を書かざるを得なかった作者はもっと辛かったということ…。 一番胸が締め付けられたのは、リュカとマティアスの関係。せむしのマティアスは、つまりは足を悪くしたリュカ自身。愛を知らないリュカなりに愛したけれど、結局はあのような結果になってしまって、それは自分自身を殺してしまったということだろうか。 悪童日記の頃も、過酷な状況を二人で乗り越えていたと思うからあの本を読めたわけで、まさかリュカがたった一人で耐えていたなんて、悲しいばかりです。まだまだ再読はできそうにありません。 リュカのことばかり書きましたが、クラウスについても同様に辛い人生を送っていたのですね。戦争のせいでリュカの人生は苦しいものになってしまったけれど、もともと家族をばらばらにしてしまったのは父親だったのですね。きっと、悪童日記の最後に父親を殺す展開にしたのは、それを知っていたクラウスでしょう。
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もう、どこまでが事実でどこからが創作か、わからなくなってどうでもよくなる。人間の精神は、強くて弱い。弱くて強い。著者の来歴を思うと、生きることの中に芽生える絶望が表された瞬間にはっとする。 稀有な作品だと思う。本当に。
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三部作の最後、読後に妙な虚脱感に襲われた… 前ニ作があまりにも強い印象だったのに、それを嘘って。 凄い作品だった。
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