花の歳月 の商品レビュー
宮城谷さんの作品は読みづらい、という先入観があったのですが、この作品は文体も内容も平易で、非常に読みやすいです。 古代中国のお話は血で血を洗う抗争が多く、幸せをつかんだように見えても油断できないのですが、本作は正しいシンデレラストーリーで、安心して読むことが出来ます。 ちょっと『...
宮城谷さんの作品は読みづらい、という先入観があったのですが、この作品は文体も内容も平易で、非常に読みやすいです。 古代中国のお話は血で血を洗う抗争が多く、幸せをつかんだように見えても油断できないのですが、本作は正しいシンデレラストーリーで、安心して読むことが出来ます。 ちょっと『山椒大夫』が入っているかも。
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物語は前漢王朝前期、呂太后が君臨している時代である。河北の貧しい名家の娘、猗房が宮廷に使えるチャンスにめぐまれる。彼女を含め兄弟たりも紆余曲折ありながら最後には宮廷の主となるのである。このシンデレラストーリーは涙なくして語れない。
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文字が大きく、内容も簡潔にまとめられているが、漢字の技巧によって平易な印象を与えない。初めて歴史小説を読む人には良いと思う。 老子の教えを愛する猗房はしなやかな考えを持つ、聡明な女性。 10人のうち、3人は若くして死ぬ、あまりに生きたがっている結果だ、という問答が印象的だった。
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文字は大き目だし、ページ数も少な目で、いったいどんな風に話が進むのかと首をひねっていたのですが、読み始めたら、その手軽な字数からとは思えないほどしっかりと色々な情景・人間関係が伝わってきて、驚きました。あとがきなどの漢字の使い方の話にも感銘を受けざるを得ません。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
時代は前漢王朝前期・呂太后の専制下、名家ながら没落した竇(とう)家の娘、猗房(いぼう)が、推されて漢の宮中に出仕することから話は始まる。 貧しいながら助け合って暮らす家族と別れ、宮中に入るわずか十歳の彼女。 彼女を支えていたのは、父が語ってくれた「老子」の教えと、兄の励ましの言葉。 所々にみられる老子の教え。 「上善は水の若し」-最上は水のようなもの。水は万物を潤し、争うことをしない。そして水は上から下へと流れる、即ち謙ることを表す。 「高は下をもって基となす」-高いものは低いものを基本としている。 「禍か福の倚るところ、たれかその極をしらん」-禍は福のもたれかかるところとなり、福は禍の潜むところとなる。誰一人としてその大本は分からない。 なるほど、面白い。 残される家族のことを懸念する、猗房に言った兄の言葉も良いですね。 「こういうことは、たしかに人によって選ばれるのだが、その人を動かした天の神から選ばれたことになる。天の神から選ばれたのに、それを断れば、一生不幸になってしまう。おまえが不幸になって喜ぶ者は、うちには一人もいやしない」 中国三大悪女の一人といわれた呂太后が、夫である劉邦(高祖)の死後、劉邦の専らの寵愛を受け、呂太后の実子を排そうと企んでいた戚姫を捕らえて、手足を切断させ、眼球をくりぬき、耳を焼き、声の出せぬよう薬を飲ませ、厠に据えて「人彘(人ブタ)」と罵っていたというところはグロテスクです。 ここまでする実の母の姿を見て、皇帝になった恵帝はショックを受けて執政を放棄してしまう。 まあ、そんな姿を見たら、トラウマになっちゃうでしょうね。 猗房の幼い弟、広国が誘拐されて、奴隷にされてしまう話も切ない。 同じ奴隷で姉のように可愛がってくれた藺(りん)が、殺されかけた広国を救うために、辱めを受ける場面もやるせない。 奴隷には抗う術などないと思い知らされるシーン。 ラストは綺麗に纏め上げられていて、少し物足りない気もしますが・・。 司馬遷の「史記」をもとに描かれた作品。 史実に基づいているだけに、怖いなと思う場面が印象的。 かなり、簡潔な文章なので想像とかは膨らみにくい感が。 余談ですが、最初に郷父老が猗房に会って、推するに相応しいか見定める場面。 ---男女を問わず、人を鑑(み)るには、まず声だ。 声の大小、明暗、澄濁は、生まれつきの品格であると郷父老は考えているというところに、興味を持った私。 良い声はそれだけで、「徳」を備えているということか・・。 羨ましい・・。
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世界遺産ハロン湾へ行くバスの中で読了。 お話自体は正統派のシンデレラストーリーなのだが、何よりも表現の仕方が非常に詩的。 これくらいの内容だからこその表現方法なのかもしれない。 他の作品はこうではなかった。 中国古代小説初めての人に非常におすすめ。 仏教の影響を受ける前の中国であ...
世界遺産ハロン湾へ行くバスの中で読了。 お話自体は正統派のシンデレラストーリーなのだが、何よりも表現の仕方が非常に詩的。 これくらいの内容だからこその表現方法なのかもしれない。 他の作品はこうではなかった。 中国古代小説初めての人に非常におすすめ。 仏教の影響を受ける前の中国である。
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自分にとって初めての宮城谷作品。 短くて読みやすい。宮城谷さんを知らず、作品に触れてみたい人には最適の一冊でしょう。中国史をガッツリ味わいたい人には他の作品の方が良さそう。 正直なところ、あとがきの宮城谷さんの文体についての解説の方が面白かった。 独特の文体の妙を味わえます。(ひ...
自分にとって初めての宮城谷作品。 短くて読みやすい。宮城谷さんを知らず、作品に触れてみたい人には最適の一冊でしょう。中国史をガッツリ味わいたい人には他の作品の方が良さそう。 正直なところ、あとがきの宮城谷さんの文体についての解説の方が面白かった。 独特の文体の妙を味わえます。(ひらがなが多く、特別な意味を込めたい箇所で漢字を多彩に使い分けて状況・感情の機微を表現する) 本書はすっと読めるので何とかなりましたが、 他の長編では登場人物が多そうで、メモを取らないとついて行けなさそうだと感じました(;^ω^)
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「重耳」を書いた宮城谷さんの本。 中国版シンデレラ・ストーリーといったところか。 漫画「項羽と劉邦」を読んだあとだったので興味深く読めた。
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貧しい名家の娘がいずれ天子を生む相を見出され、苛政をしく呂太后の宮廷へ入る。やがて代国に嫁いだ彼女は王の寵愛を受け、離れ離れになっていた兄弟にも再会して幸福な人生を送った。 老子の思想を基に描かれた優しい話。文庫にしては字も大きく読みやすい。宮城谷さんの書くお話にしては珍しいタ...
貧しい名家の娘がいずれ天子を生む相を見出され、苛政をしく呂太后の宮廷へ入る。やがて代国に嫁いだ彼女は王の寵愛を受け、離れ離れになっていた兄弟にも再会して幸福な人生を送った。 老子の思想を基に描かれた優しい話。文庫にしては字も大きく読みやすい。宮城谷さんの書くお話にしては珍しいタイプかもしれない。誰にも好き嫌いなく読めると思う。
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分かりやすくすっきりた正統派の物語。優しく温かいです。読みやすい分、普段の宮城谷節が好きな私は物足りなかったですが、宮城谷作品が説教臭いと感じる方も世にはいるらしいので、そういうのが嫌な人はここから入ってみるといいのかも。
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