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『山の音』こわれゆく家族 の商品レビュー

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2018/09/24

大学で受けた文学の授業のようで面白かった。過不足なくテキストを引用しながら、作者の意図、意識の流れ、戦争の背景などを明らかにしていく。 父信吾と息子修一の穏やかな相互不理解、特に父が息子の心に触れる機会を気づくことなく逸してしまった(そして読者も同じように流してしまうように書かれ...

大学で受けた文学の授業のようで面白かった。過不足なくテキストを引用しながら、作者の意図、意識の流れ、戦争の背景などを明らかにしていく。 父信吾と息子修一の穏やかな相互不理解、特に父が息子の心に触れる機会を気づくことなく逸してしまった(そして読者も同じように流してしまうように書かれている!)場面について鋭い考察がある。また戦前から現代に至る日本の家庭形態の連続した移り変わりの中に、本作の尾形家を位置づけた点も、学者っぽいと言えばそうだが面白かった。 「海外小説は原文で読めない以上読んだとは言えない」という人に何人か会ったことがある。しかしこの本は、言い尽くせない価値を持つ作品にとって、言語の壁はさしたるものではないということの一つの証明だ。

Posted byブクログ