1,800円以上の注文で送料無料

聖餐城 の商品レビュー

4.3

13件のお客様レビュー

  1. 5つ

    4

  2. 4つ

    7

  3. 3つ

    1

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2023/07/09
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

17世紀、神聖ローマ帝国、30年戦争、カトリックとプロテスタント、ハプスブルク家、ボヘミア王、選帝侯、ユダヤ人、傭兵、市民権のない刑吏、錬金術師、ホムンクルス、ケプラー。 聖餐城にあるとされる青銅の首とは? ヨーロッパの傭兵について書かれた小説が読みたくて図書館で借りた。辞書みたいに分厚いけど、するする読める。なんかすごいもの見つけてしまったと思わせる本。 ボヘミアで宗教対立から偉い人を窓から投げたことから始まる30年戦争。主人公アディは馬の腹に縫い込められていた出生不明の子(最後までわからないんかーい)。背中の曲がった同年代の金持ちユダヤ人イシュアをたまたま助ける。頭が良くて不思議な力があるイシュアと出会ってから、喋れなかった舌が動いたり良いことづくめのアディ。やられるよりやる側になりたいぐらいの認識しかなかった少年が傭兵になって、不可触民の刑吏の女の子を救おうと偉くなっていくサクセスストーリー() もう一人の準主役イシュアの兄シムション。キリスト教の対立に乗じてユダヤ人の居場所を作ることに奔走する。金儲け大好き。父よりも弟よりも自分!賢いイシュアを「お前こそが青銅の首(為政者の質問になんでも答えてくれるらしい。インターネットかAIみたい)」と頼りにしていたが、段々不気味に思えてくる。ある意味一番人間らしくて共感できる男。頑張ったのは本当。 対して最後までよくわからない男イシュア。異形の身体で家族からも疎まれ唯一の友アディを何度も助ける。その賢さと友情は本物なんだけど、結局何がしたかったのか、首は残せたのか(紙がボロボロになって全ておじゃん?)よくわからん。でもユダヤ人墓地よりあの地下で眠るのを本人が選んだとアディは判断して置いていくんだ。うーーむ。出生自体がホムンクルスとかそうじゃなかったとか(あっさり明かされる)ノタリコン解読とか不思議要素全て背負ってた分、連載のライブ感で削られた部分もあるのかな? ローゼンミュラーの傭兵部隊は主人公って感じでロマンがあって少年マンガのようだったけど実在するのかな? 宗教も国籍も関係なく、ドイツ中が荒廃した史実。皇帝には財貨がなく、傭兵たちは戦争の報酬を得るために掠奪し、次の戦争へ。 アディの敬愛したフロリアン隊長の遺児たちを見守って終わる物語。死ななくてよかった、とほっとする気持ちともっと幸せになれたはず、ともやもやもする。地に足ついた歴史小説ってことかな。

Posted byブクログ

2017/10/29

三十年戦争を舞台装置に繰り広げられる狂乱と残酷の歴史小説。 イシュア、アディに尽くしすぎじゃない??新手のツンデレすぎない???とか思ってしまいましたが・・・。 忠義と愛欲と小さな恋のメロディとが綯い交ぜの濁った空気を吸い込んだアディを思うと・・・凄まじい。

Posted byブクログ

2013/10/26

三十年戦争の話。世界史の知識がないとちょっとつまらないかも。 傭兵たちの暮らしや働きが詳しく描いてある。 ユダヤ人が戦争を利用して各地で経済力をつけ地位を築いていく様子がおもしろかった。

Posted byブクログ

2013/10/18

相変わらずの凄い引力でグイグイ引っ張られる。タイトルが軸になる話かと思いきやそうではなく、ある濁流の中の木片達の流れ方を描いたものかと。そして最近のお約束として、奥付と略歴を思わず確認、のち仰け反り&平伏。七十代後半でコレってッ!!ンもう素晴らしい気概と気迫。取扱う題材もさる事な...

相変わらずの凄い引力でグイグイ引っ張られる。タイトルが軸になる話かと思いきやそうではなく、ある濁流の中の木片達の流れ方を描いたものかと。そして最近のお約束として、奥付と略歴を思わず確認、のち仰け反り&平伏。七十代後半でコレってッ!!ンもう素晴らしい気概と気迫。取扱う題材もさる事ながら、文の勢いがまったく衰えないのが凄い!格好良い!惚れる!

Posted byブクログ

2012/10/20

1600年代のドイツ30年戦争で帝国分裂を舞台とした大河小説。ケプラーやクロムウェル、神聖ローマ帝国皇帝のルドルフ二世まで出てくる。絵画的にはルドルフ二世といえば有名な、あの植物で作った肖像画の人で、政治そっちのけで文化財や骨董品収集に錬金術で人体錬成までからんだ実に興味深い人物...

1600年代のドイツ30年戦争で帝国分裂を舞台とした大河小説。ケプラーやクロムウェル、神聖ローマ帝国皇帝のルドルフ二世まで出てくる。絵画的にはルドルフ二世といえば有名な、あの植物で作った肖像画の人で、政治そっちのけで文化財や骨董品収集に錬金術で人体錬成までからんだ実に興味深い人物です。 錬金術士とかホムンクルスとか、鋼の錬金術士で仕入れた知識が序盤からバンバン出てくるので、ついついハガレンが脳内変換されました。 時代的にオランダ絵画黄金期にかかるあたり、レンブラントが有名になりフェルメールが出る時代で物語が終わる。この戦争の裏でオランダが力を付けたのかな、なんて思いつつ読むと楽しい。

Posted byブクログ

2010/08/22

正直,皆川氏なので期待して読み始めたけれど,途中までは少々つらかった。ただし,あるところから物語は急に疾走していく。ぐいぐいと読む者を引き寄せ,かなりの厚みのある作品ながら,一気に読ませた。歴史的な視点がなかったらちょっと難しいかもしれないが,あまり気にならない。映画としても見た...

正直,皆川氏なので期待して読み始めたけれど,途中までは少々つらかった。ただし,あるところから物語は急に疾走していく。ぐいぐいと読む者を引き寄せ,かなりの厚みのある作品ながら,一気に読ませた。歴史的な視点がなかったらちょっと難しいかもしれないが,あまり気にならない。映画としても見たい作品w

Posted byブクログ

2010/01/28

実に重厚な一冊でした。歴史的背景はある程度把握してないとつらいかもしれません(この辺世界史で習った記憶がかすかに残っていたけれど、それでもなかなか理解するのは時間がかかりました)。でも半分過ぎたらそのあとは読まされました! ただ、登場人物全部把握できるようになったのがそのあたりだ...

実に重厚な一冊でした。歴史的背景はある程度把握してないとつらいかもしれません(この辺世界史で習った記憶がかすかに残っていたけれど、それでもなかなか理解するのは時間がかかりました)。でも半分過ぎたらそのあとは読まされました! ただ、登場人物全部把握できるようになったのがそのあたりだったんですけどね私は(苦笑)。 大雑把に言うと傭兵の物語です。傭兵、って言葉は知ってるけどどういうものだか分からなかったので、勉強になったなあ。軍略部分は読んでいてわくわくしますね。ローゼンミュラー兄弟はカッコいいよなあ。軍のポリシーが素晴らしいです。 タイトルである「聖餐城」と「青銅の首」に関する部分は、ミステリといえなくもないですね。あっと驚きの真相!というわけではなかったけれど。この真相は感慨深かったです。じんわりと残るものがありました。

Posted byブクログ

2009/12/23

時代や場所設定こそ各書異なれど、ページを開けばそこは紛れもなく皆川ワールド。 クールな筆致で連綿と綴られる壮大なクロニクル。 決して美化された表現ばかりではなく、むしろ生身の人間につきものの恥部や汚部を粛々と連ねているにもかかわらず、物語全編を通じて壮麗とも表現できうる品格に満ち...

時代や場所設定こそ各書異なれど、ページを開けばそこは紛れもなく皆川ワールド。 クールな筆致で連綿と綴られる壮大なクロニクル。 決して美化された表現ばかりではなく、むしろ生身の人間につきものの恥部や汚部を粛々と連ねているにもかかわらず、物語全編を通じて壮麗とも表現できうる品格に満ちているのはまさに著者の為せる業の真骨頂だろう。 これは、読む者に“生活する実社会の謝絶”を求める小説である、少なくとも活字に向かっている間は。 我々が肉体で知覚している五感を遮断しなければ、味わい尽くすことはできない。 そうして登場人物同様、到底個人の力では抗しきれない大いなるうねりの中に読者も呑み込まれてゆく。 まさに栄枯盛衰、確実に荒廃と破滅に向かって徐々に歩んでゆく物語の中で、主人公の純愛感情が重要な一本の柱として、存在感を主張している。 また、あまりに詳細で具体的な戦闘描写に心底舌を巻いた。 一体どれほどの考証を行っているのだろうか! まさに皆川博子こそ、不死身の怪老女ではないのか!

Posted byブクログ

2009/10/07

 傭兵と宮廷ユダヤ人の視点から描いたドイツ30年戦争。  17世紀の神聖ローマ、傭兵に略奪される村の凄惨な情景に、一瞬にして入り込まされる圧倒的な筆力。ひとつひとつの言葉が深く美しいのです。  今回の主人公もそうですが、この数年の作品は自らの足で立って生きていくたくましい人間が多...

 傭兵と宮廷ユダヤ人の視点から描いたドイツ30年戦争。  17世紀の神聖ローマ、傭兵に略奪される村の凄惨な情景に、一瞬にして入り込まされる圧倒的な筆力。ひとつひとつの言葉が深く美しいのです。  今回の主人公もそうですが、この数年の作品は自らの足で立って生きていくたくましい人間が多い気がします。無力で翻弄されるばかりの弱者ではなく。  いつからか「少女」を主人公には書かれなくなってしまったのが残念なんですけど、でもこのお話はすごく好き。今回図書館で借りて読んだんですけど、ぜひとも手元に欲しいです。

Posted byブクログ

2009/10/04

09/02/27読了。 ユダヤ人と傭兵の視点から書いたドイツ三十年戦争。 知識が無いのもあって神聖ローマ帝国の領邦が把握できない自分が残念。 でもわかりやすさはすごい。

Posted byブクログ