櫻守 の商品レビュー
二編収録のうち、表題作が特によかった。表現が美しいのに現代語らしいテンポをうしなわず、関西弁が文字の美しさより会話の息遣いが感じられ、情景が目に浮かぶようだ。 読書中爛漫の櫻と木肌のあたたかさを常に肌に感じられる。実在の人物をモデルに二人の男の人生を丹念に描きながら、樹齢四百年の...
二編収録のうち、表題作が特によかった。表現が美しいのに現代語らしいテンポをうしなわず、関西弁が文字の美しさより会話の息遣いが感じられ、情景が目に浮かぶようだ。 読書中爛漫の櫻と木肌のあたたかさを常に肌に感じられる。実在の人物をモデルに二人の男の人生を丹念に描きながら、樹齢四百年の古桜を移植する大仕事、人生の終焉までをあたたかく、時に哀しく描く。 信念と技のある人が理解者をもってやりたいことをする様は清々しい。 それに比べて「凩」は人生の悲哀の色が濃すぎて、若輩の私にはつらかった。 こちらも宮大工の男の晩年を描き、丹念で素晴らしいのだが、その仕事は孤独だ。子供たちの世代の、古いものをいたずらに古いからと切り捨てるやり方に憤りを覚えながら、死への恐れを見つめて自分の技を注ぎこんだお堂を建てる。 そこにはそれを見つめる友の目線もあるが、大半にはその寂しさも心からは理解されずに終わる。映画「はなれ瞽女おりん」で水上勉を知り興味を持った。保守的な考えがハッキリとした頑固オヤジという感じだけれど、それがイヤミにならない。そこそこ厚みのあるのにするすると読まされ、郷愁と土着の雰囲気を骨太な読書でしみじみと感じさせる。
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「櫻守」…弥吉という庭師が、桜に生涯をかけた話 「凩」…老いた宮大工・清右衛門が娘とあれこれやり合いながら、終の棲家を建てる話 の2編を所収。 ソメイヨシノについての言及が、意外だった。 桜守、宮大工、どちらもよく知らないとはいえ、格好いいと思う職業。
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2008.9 美しい関西弁がとても心地よい。 大きな出来事が起こるわけではない、一人の人生を丹念に描いている。
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