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ある島の可能性 の商品レビュー

4.2

16件のお客様レビュー

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2011/08/04

クローン技術が発達すれば生殖行為は必要なくなるだろう。『素粒子』の続編という位置づけかもしれない。未来の世界が描かれてはいるけれども、これはSFではなく、クローン技術もカルト宗教も、いまの全世界の人類にはずいぶん身近な話題で、読者に馴染みのある現代が描かれている。あまりにも具体的...

クローン技術が発達すれば生殖行為は必要なくなるだろう。『素粒子』の続編という位置づけかもしれない。未来の世界が描かれてはいるけれども、これはSFではなく、クローン技術もカルト宗教も、いまの全世界の人類にはずいぶん身近な話題で、読者に馴染みのある現代が描かれている。あまりにも具体的な固有名詞が多すぎて、誰かに訴えられそうなくらいだ。 ウェルベックの作品に脈々と一貫している思想である、生きていくことへの疑問、性欲の強迫観念、さらに今回は加齢の恐怖が追加。小説に出てくる宗教団体は、おそらくラエリアン・ムーブメントという実在するカルト宗教がモデル。どこの宗教も基本的には似通っている構造であることよ。 なぜ書くのか、そのウェルベックの信念が主人公ダニエル1とシンクロする。読者は未来の世界を見つめることができるだろう。この物語は、いったいどうやって終わるのかなと思ったら、最後の最後まで、ある世界が丁寧に描かれていて、うーん脱帽。

Posted byブクログ

2011/06/19
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

【粗筋・概要】 2000年後の未来。クローン技術の発展により永遠の命を手に入れたネオ・ヒューマンたち。彼らは、オリジナルの遺伝子コードを厳密に複写して生み出され、オリジナルが書き残した人生記を読み、それに注釈を加えていく。この物語は、フランス人のコメディアン・ダニエル1の人生記とそのクローンであるダニエル24とダニエル25の注釈によって構成されている。 【感想】 初めて読んだウエルベックの小説。なかなか面白かった。この小説自体読み返そうとは思わないけれど、この作品よりも面白いと云われている『素粒子』を読んでみたいとは思った。 「そして人間の真の目的、望みのあるかぎり人間が自発的に求めつづけてきた目的が、もっぱらセックス方面にしかないという真相は、隠しようのないものになった。」(P290)というダニエル25の注釈を読んで、確かにそうだなと思った。少なくとも、主人公のダニエル1と私に限って云えば、正しい指摘だ。 この作品では実在の有名人が多く登場するが、エロヒム教が「アメリカのビジネス界で集中的にキャンペーンを行った結果、まずスティーブ・ジョブスが改宗した」(P319)というところが、一番ウケた。 2008年2月26日読了

Posted byブクログ

2011/02/22

オリジナルと何世代かあとのクローン?が交互に語って物語りは進むのだけれど、そういう構成っておもしろいと思うし、物語の設定自体もすごくおもしろく思ったのだけれど、うーん、私にはなんか読み進み難かった。

Posted byブクログ

2010/04/18

かっこいい。 騒々しくて賑やかな世界が行き着いた、淡々と静かな世界。自閉は進化から取り残されたのか、進化を先取りしているのか、それとも生物学的多様性の一つなのか。そんな視点で読みました。 著者の他の本は、カッコ良さげな割にいまいち話題は下世話だったり、プロットの面白さだけで引...

かっこいい。 騒々しくて賑やかな世界が行き着いた、淡々と静かな世界。自閉は進化から取り残されたのか、進化を先取りしているのか、それとも生物学的多様性の一つなのか。そんな視点で読みました。 著者の他の本は、カッコ良さげな割にいまいち話題は下世話だったり、プロットの面白さだけで引っ張ってたりするんだけど、この本はいいとこだけ出た感じ。のってる時なのね。

Posted byブクログ

2009/10/04

衝撃的な作品だ。世間的な価値観にとらわれず、クールで個人主義を貫く、ダニエルの愛の物語。現在のダニエルとクローン複製された未来のダニエルが、人生とは何か?愛とは何か?老いとは何か?文明とは何か?を交互に語り継いでいく。ジャンルとしては、SFの範疇に入るのかも知れないが、セックスも...

衝撃的な作品だ。世間的な価値観にとらわれず、クールで個人主義を貫く、ダニエルの愛の物語。現在のダニエルとクローン複製された未来のダニエルが、人生とは何か?愛とは何か?老いとは何か?文明とは何か?を交互に語り継いでいく。ジャンルとしては、SFの範疇に入るのかも知れないが、セックスもせず、交わりもせず、ある意味で仏教でいう悟りの境地に達した未来人(ネオ・ヒューマン)が人間存在とは何かについて考察するという設定が、僕たちが、普段、見過ごしてしまっている人間の本質について問いかけてくる。425頁のボリュームの随所に哲学的な思索が散りばめられ、いたるところに日本語としては馴染みのない卑猥な文章描写があるので、一部の読者にはかなり読むのに抵抗があるかもしれない。 だけど、ダニエルの愛に対する苦悩には圧倒される。売れっ子コメディアンの彼は、美しく知性に富む女性雑誌の編集長イザベルと恋に落ちる。イザベルは性的快感に身をまかせることができない。年齢を重ねるにつれ、自分の肉体美を維持できないことが彼女の心をしだいに蝕み、いつしか二人の間には性的な関係はなくなる。愛は性的な関係なしに存在し続けるものなのだろうか?ダニエルは感じる。『性行為がなくなると、相手の体が、なんとなく敵対しているものに思えてくる。それがたてる物音、その動き、その匂いが気になるようになる。そして、もはや触れることもできず、交渉を通して聖化することもできない相手の体は、少しずつわずらわしいものになっていく。・・・エロチシズムの消失にはもれなく愛情の消失がついてくる。鈍化された関係なんて存在しない。高度な魂の結びつきなんて存在しない。・・・肉体的な愛が消えたときに、すべてが消える』 ダニエルにとっては男女の関係のみが人間関係の全てだ。ダニエルは、『一定の年齢を超えたふたりの男にしっかりと話し合えるテーマなんてあるだろうか』と男同士の人間関係に懐疑的だ。肉体が老衰し、性的魅力が失われていくと共に、人生の意味や喜びが徐々に消えていく。誰もが愛のために死ぬというより愛の欠如のために死ぬのだ。イザベルとの離婚後に、ダニエルは若くて、最高にセクシーな女優エステルと交際するようになる。エステルは、ダニエルに最高の性的満足を与えるが彼女は愛を知らない。ダニエルは次第に奔放に生きるエステルの恋の奴隷となっていく。『愛とは、弱者が強者を糾弾し、強者生来の自由と残忍さを制限するためにつくりだした虚構にすぎないだろう』『愛は個人の自由や自立の中に存在しない。あるとすれば虚構である。愛は無への、融合への、自己消滅への欲求の中にしかない』 『結局のところ、人はひとりで生まれ、ひとりで生き、ひとりで死ぬ』 愛とは何だろう?

Posted byブクログ

2009/10/04

邦題「ある島の可能性」。僕は正直なところ、正面切って「好きな作家はウェルベックですね」なんて言う人がいたら、その人の人格を疑いたくなると思う。読むことはあっても、それをフェーバリットに挙げてくるってのはちょっと。相も変わらず、読んでいて嫌な気分になること多々。相も変わらず。主題と...

邦題「ある島の可能性」。僕は正直なところ、正面切って「好きな作家はウェルベックですね」なんて言う人がいたら、その人の人格を疑いたくなると思う。読むことはあっても、それをフェーバリットに挙げてくるってのはちょっと。相も変わらず、読んでいて嫌な気分になること多々。相も変わらず。主題となっていることは「性」であり「セックス」であり。それらをSF的に散りばめていくという。過激で辛辣なようでいて、特にそれは過激でも辛辣でもなく、ただただ的を射ているからこそ、読んでいて嫌な気分にさせられるわけだけど。それにしても苦しい読書だった。(07/10/13)

Posted byブクログ