インディアナ、インディアナ の商品レビュー
物語の背景や人間関係が分からずに話は進んでいくのに、ノアの喪失感だけはハッキリと最初の1ページ目から伝わってきた。静かで流れるような文章がとても気に入って、図書館で借りたのに自分でも本を購入してしまった。とてもとても美しい愛の物語。
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なかなかの問題作でした。お話の肝を掴めないというかなぁ。優しい文章が永延とつづくんだけど何が起きているのかわからないという。たぶんこの文章世界が主人公ノアさんを象徴しているからなのかもしれない。ノアさん精神を病んじゃってるんですよ。 そうなんですよ、このノアさんったら村上春樹『海辺のカフカ』のナカタさんなんですよ、たぶん。指がなかったり、新鮮な野菜を味わったり、人に見えないものが見えてしまったり。さらには納屋まで焼くという念の入れよう。 さすがに「おおい!」とツッコミ入れたくなったんですが、春樹さんと対談してましたレアードさん。これは「どこまで村上春樹を書けるか」チャレンジなんですね。そしてそれはかなり高いレベルで成功しています。だってその肝ったら『ノルウェイの森』のワタナベくんと直子さんの物語の焼き直しだから。ゆえにこれは(も)100パーセント恋愛小説です。
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空に漂っているノアの記憶が書かれたメモを一つ一つ捲っていくように、読者の私達も美しくも物哀しい散文の中で漂う。朧げに見えていたノアと周りの人達が後半で急速に明確になっていく。 一体に誰に何が出来たのだろう。ノアにもヴァージルにも。ノアの願いは、マックスと一緒に作った面で、細やかではあるが叶えられたことだろう。
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成層圏まで澄み切った夜、短波ラジオのダイヤルを少しづつ回して周波数を合わせていくと、遠い遠い異国からのメッセージを受け取れるという。 心静かに本書に向き合うと、ノアの寂しげで優しいヴォイスがページの向こうから微かに聴こえだす。 まだ夜明けには遠く、外は暗い中で語り始められた物語...
成層圏まで澄み切った夜、短波ラジオのダイヤルを少しづつ回して周波数を合わせていくと、遠い遠い異国からのメッセージを受け取れるという。 心静かに本書に向き合うと、ノアの寂しげで優しいヴォイスがページの向こうから微かに聴こえだす。 まだ夜明けには遠く、外は暗い中で語り始められた物語は切れ切れで、最初は上手く掴めない。それでも朝の光に照らされて全てが語り終えられた時、ノアという男の人生が、星を結んで星座が象られるかかのごとく浮かび上がってくる。それは長い離別の中でも求め合った、二つの無垢な魂が残した美しい軌跡。そして失われてしまったものへの癒すことができない痛切な哀惜。 古い顔を二つ大切に並べ終えて、ノアは鋸を手に椅子に座っている。このまま彼は小屋を出て、畑の先へ行くのだろうか。 ノアの深い喪失の想いを受け取って、本書を閉じる。
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ハントさん、本当に訳者柴田先生のおっしゃる通り、ただ者ではない。 精神疾患を持っていると浮かび上がってきたのは、後半も3割残す辺り。 それまでは理解を超える幻想的、蠱惑的、抒情的・・というと聞こえはいいが、余りにも非現実の回想が多く、一人称で語りつつもその枠を超えたあたりから「こ...
ハントさん、本当に訳者柴田先生のおっしゃる通り、ただ者ではない。 精神疾患を持っていると浮かび上がってきたのは、後半も3割残す辺り。 それまでは理解を超える幻想的、蠱惑的、抒情的・・というと聞こえはいいが、余りにも非現実の回想が多く、一人称で語りつつもその枠を超えたあたりから「この人は?」と一刻も早く知りたくてうずうずしつつ読んできた。 性、年齢、家族構成、成育歴、職歴、そして病歴を知らないとその人が浮かび上がってこない。いたずらに「その人の疾病」に同情する言葉の羅列は好まない。 装丁に有る時計の、しかもすっくと立つ屹立した大ぶりの振り子。 かっつんかっつん、時を刻む、その一瞬一瞬がノアにとっては他者と異なるリズムであった。が彼にはそれすらも苦痛とは思えない時間の流れに身を任せてきている。 パースペクティブな視点を持ってかれの来し方行く末を見ることがこの作品を味わえたと言えるのではないだろうか。
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非常に通好みの小説、という感じでした。 「優しい鬼」がものすごく良かった、ということと、柴田さん訳で安心、というのがなければ、たぶん途中で投げ出していたかも。読む順番が書いた順番と逆で良かった。 このレアード・ハントという作家は、作品の設定(人間関係とか時代とかバックグラウンド...
非常に通好みの小説、という感じでした。 「優しい鬼」がものすごく良かった、ということと、柴田さん訳で安心、というのがなければ、たぶん途中で投げ出していたかも。読む順番が書いた順番と逆で良かった。 このレアード・ハントという作家は、作品の設定(人間関係とか時代とかバックグラウンドとか)を意図的に小出しにして、細部をパズルのように見せていきながら、ゆっくりゆっくり全体像を浮かび上がらせていく作家なんだなぁ、というのがこの2冊で分かるのだけど、でも、この「インディアナ、インディアナ」は、さすがに出し渋りすぎだろー!と思った。 7章あるんだけど、6章目か7章目までいかないと、事実関係がほんの一部しか分からない。「優しい鬼」もたいがい事実関係が分からないまま引っ張られたと思ったけど、こっちに比べればめちゃくちゃ親切だったと、今は思う。 そして、その最後の方がとてもいいの。 頑張って読んだかいがあったと思う。今まで読んできたパズルがゆっくり像をなしていって、ゆらゆら揺れていた影絵たちの意味が分かる感じ。 一方で、ノアの悲しみの理由が分かることで、それまでの困惑が一気に悲しみに変わって押し寄せてきちゃうんだけど。 ノアとオーパルの二人の出会いの場面を読んでいると、特殊な能力だとか、頭がいいとかよくないとか、そういうものって、幸せなひとときとはなんの関係もないんだなぁ、と思う。 あとがきを読んで、著者の経歴を見てちょっと驚いた。 インディアナに思い入れがあるみたいだから、そこで生まれて、人生のほとんどをそこで過ごした人なのかと思ったら、全くその反対だった。シンガポールで生まれて、ソルボンヌ出て国連報道官? ええ? と単純にビックリした。 読んでいる間はかなり困惑させられるんだけれど、でも、ちょっと癖になる作家かもしれない。
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断片的な物語の重なりから、ノアたちに起こったことや、マックスが何者なのかがはっきりしてくると、何度もページを戻って読み返したくなり、交わされた会話や、淡い記憶のエピソードにもう一度ジンときた。
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心を少し病んだ男が思い起こし、錯綜する過去と今。 ひどく不穏な感情に満たされているけれど、そこに私たちは美しさも感じる。 廃墟の美のような。
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主人公のノアの記憶の中をゆっくりと行ったり来たりしながら、人物の関係性や過去が次第に明かされていく。 問題を抱えた人間の純粋さや生きにくさが哀しいが、この物語は、とても美しい。
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まだ新しいのに絶版なんですね 『優しい鬼』がとても好きだったから、探してみたらすでに絶版で中古でなんとか手に入りました。
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