重力ピエロ の商品レビュー
あらすじを読んで重い内容なのかと思い、こちらまで暗い気分になるようなお話が苦手な自分はずっと読まず嫌いをしていたのですが、いざ読んでみると暗い内容がずっと続くようなお話ではなく、登場人物たちがチャーミングであったり、登場人物の掛け合いで笑えたりして、もっと早く読んでいれば良かった...
あらすじを読んで重い内容なのかと思い、こちらまで暗い気分になるようなお話が苦手な自分はずっと読まず嫌いをしていたのですが、いざ読んでみると暗い内容がずっと続くようなお話ではなく、登場人物たちがチャーミングであったり、登場人物の掛け合いで笑えたりして、もっと早く読んでいれば良かったと思いました。ミステリー要素があり、節々に違和感や謎が散りばめられていて、その違和感と謎の正体が分かった時は息をのみました。物語の始まり方と終わり方が美しかったです。
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好き。 めちゃおもろかった。 家族、多様性、葛藤と苦悩。 人間の理不尽さをビッシビシ感じまくり。 兄弟愛は秀逸。 また読み直したい。
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なんか悲しいようで、でも心も温まる作品だったと思います。個人的には好きです。 まず、春の言葉にできないような苦悩に共感できたこと。毎日それだけを考えて生きてきた彼にとって、それを果たせなければ人生を進展させることはできない。自分の存在すら恨む姿になんとも言えない感情をもちました...
なんか悲しいようで、でも心も温まる作品だったと思います。個人的には好きです。 まず、春の言葉にできないような苦悩に共感できたこと。毎日それだけを考えて生きてきた彼にとって、それを果たせなければ人生を進展させることはできない。自分の存在すら恨む姿になんとも言えない感情をもちました。 そんな彼にとって、兄の泉水はお守り的な存在で、兄弟の絆のようなものに尊さを感じました。私にも一人の弟がいて、泉水と春の兄弟の姿に、私たちの兄弟像を投影せざるを得ず、読み進めていました。こんな言葉でまとめることに少し不安がありますが、泉水と春は共に信頼しあって、愛し合ってる関係性だったと思います。無邪気に言った「僕たち兄弟は最強なんだ!」…、なんて素敵なんだろうと思いました。私も当然のように関わりあってる弟のことを深く考え、この作品を読み終えたときには、自分の人生に絶対いなければならない人だと改めて気づかされた、そんな気がします。(なんか照れくさくて、弟には絶対言えませんけど。笑)
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優しい父と美しい母、そして兄の泉水と弟の春は、半分しか血が繋がっていないってどういうこと…。 こんな衝撃的な事実を冒頭から突き付けられているにもかかわらず、言葉遊びのような、センスの良い会話が飛び交っている。 まず、泉水と春。二人の名前を英語にすると、どちらも『スプリング』だなん...
優しい父と美しい母、そして兄の泉水と弟の春は、半分しか血が繋がっていないってどういうこと…。 こんな衝撃的な事実を冒頭から突き付けられているにもかかわらず、言葉遊びのような、センスの良い会話が飛び交っている。 まず、泉水と春。二人の名前を英語にすると、どちらも『スプリング』だなんて洒落てる。 泉水の会社は「遺伝子情報」を扱う企業で、春は人並み以上の外見を持ち、絵の才能がある。 グラフィティアートの出現と、仙台の連続放火事件、遺伝子のルール。 絵画の知識や小説の書き出しなどを盛り込んで、複雑な話を読みやすく書かれているところが凄いと思った。 読みやすいということは、言葉の使い方や例え方など、作者の読者に対する気遣いが行き届いているということなのだと思う。 「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ」 「楽しそうに生きていれば、地球の重力なんてなくなる」等々。 記録しておきたくなるようなたくさんの名言と、黒澤の登場は、この物語を大いに盛り上げてくれていると思う。 遺伝子を越えた最強の家族の物語に、思わず小さく万歳したくなった。
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※このレビューにはネタバレを含みます
筆者の素晴らしい作品に対して、賛辞を表現したいのですが、陳腐になりそうで畏れ多く感じます。本作は、家族と遺伝・それをめぐる葛藤のドラマ、であったと思います。 ・・・ 血のつながらない家族、それでも紐帯を育んでいくというモチーフは、読者としてはよくある話であると思います。でも今回は少し驚きました。 母がレイプされた末に生まれた春という弟を持つ泉水。そして父と母。こんなパターンは初めてです。「俺たちは最強の家族だ」とサラリという父親という流れから、家族の結束が固いことが分かります。 物語だから受け入れられるものの、この悲惨な舞台設定が本作の魅力の一つであると感じました。 ・・・ それに対してどんよりと気持ちが晴れないのが、主人公たる泉水の弟の春でしょう。 彼の性についての嫌悪感。人間という生き物の、一般生物以上の不要に横溢する性に対する蔑み。そしてほのかに漂う自らの存在への贖罪の念の気持ち。 被害者と加害者の子どもという、複雑な生い立ちは、家族のしっかりとした愛があってもやはり子ども(春)への影響は否めないでしょう。 兄たる主人公泉水が遺伝子関連の企業に勤めているということが、いっそうに「生まれ」や「血」に対する影響の強さを無言に際立たせる気がします。 こうした複雑な事情に対し、春が真摯に世界と対峙し、都度表現するその嗜好や清々しさもまた本作の魅力であると思います。 ・・・ さて、話そのものは、連続放火犯と謎の落書き(グラフティ・アート)と二人の兄弟による謎解きという形。途中から筋にはうすうす気づき、ほぼ予想通りに終わります。 ただし、ただし、最後の一文で結論は決まります。私はここに驚きました。ああ、そうなんだ。そのままじゃダメなんだって、思いました。 何言っているか分からないと思いますが、本作は最後の一文で物語の方向性が決定するものです。最後の一文で、完全にこれまでの伏線が回収されるというか。 この映画のような最後の結末を味わうだけでも一読に値する作品であると思います。 ・・・ 加えて、伊坂作品おなじみの過去作品キャラも登場します。これも伊坂ファンとしては嬉しいところでしょう。 なかでも「ラッシュライフ」で泥棒であった黒澤、彼は本作でも飄々としたキャラでストーリーを彩っています。あとは「オーデュボンの祈り」でカカシの島に行った伊藤です。彼は微妙に友情出演的な印象である感じました笑 ・・・ ということで伊坂作品でありました。面白かったです。 相変わらず、文学臭ただようスリラー、そしてユーモアと言葉遊びが飛び交う作品でした。「山椒魚」(井伏鱒二)「地獄変」(芥川龍之介)などのモチーフを議論するなど、文学好きにはたまらない作品かと思います。あと相変わらずの東北(宮城)が舞台なので、細かく読み込むと地元の人には何か発見があるかもしれませんね。 ですので、おすすめするとしたら、伊坂作品が好きな方(読む順番気を付けて!)、文学好き、東北(仙台周辺?)にご縁のある方、スリラー好きの方などにはおすすめできると思います。
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「遺伝子的な繋がりがなければ家族ではないのか?」という問いに沿って話が進んでいった。 個人的には遺伝子とか関係ないでしょ派なんだけど、やっぱり春は犯罪者の遺伝子を持ってるのかな?と思わせられてハラハラしながら読めた。 最後父と息子、兄と弟、母と息子、家族の絆/愛にやっぱり遺伝子は関係ないっていう描写がとても綺麗で良かった。
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会話の内容が私には難しすぎたけど、 春が魅力的に感じたから最後まで読めた。 血の繋がらない父と子、繋がりがなくでも親子なれるんだと思った。 レイプ犯殺しはこの場合仕方ないとして、やっぱり放火はダメですな。
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父親違いの弟と一緒に放火と落書きの謎を追う兄の物語。 途中から犯人の予想がついて、どんでん返しを期待していたけれど、結局予想通り、1番犯人でいて欲しくない人が犯人だった。 なぜ会社から睡眠薬が盗まれたのか、兄はなぜ個人的に葛城のDNA検査をしているのか、など、主人公の兄の謎の行...
父親違いの弟と一緒に放火と落書きの謎を追う兄の物語。 途中から犯人の予想がついて、どんでん返しを期待していたけれど、結局予想通り、1番犯人でいて欲しくない人が犯人だった。 なぜ会社から睡眠薬が盗まれたのか、兄はなぜ個人的に葛城のDNA検査をしているのか、など、主人公の兄の謎の行動や時々登場する人たちの不審な行動でミスリードするように上手くできている。 ラッシュライフに登場した泥棒の黒澤の再登場や、オーデュポンの祈りの主人公伊藤と青葉山の橋で出会ったり、なぜか不思議と懐かしい気分。 ただ、黒澤はともかくとして、伊藤の場合、夜中に人気のない場所で偶然出会う知らない人と話はしないだろうから少し無理があるなぁとは、思うけど。 純文学らしい性の描写を入れたかったのかもしれないけれど、性的な会話を普段からするような兄弟はあんまりいないと思う。その辺りがリアリティに欠けるけれど、基本的に2人のテンポ良い会話は好き。 重いテーマのストーリーの中で小気味良い会話が良い緩衝材になっている感じ。 文庫本は大幅に改稿されていて、追加されている章もあるので、読むなら文庫本がおすすめ。
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重いテーマを扱っているが、軽快な口調で語られているので、簡単にどんどん読み進められるお話。 放火犯の部分自体は読んでいて結構明らかな印象であったが、動機まで見ると、ほほぅと言う感じでなかなか。
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レイプや、腹違いの兄弟など深刻な問題を軸に持ちながら、兄弟のユーモア溢れる会話や表現で全体的に明るい雰囲気に保っているところがほかの小説と一線を画しているように感じた。しかしながら、レイプによって生まれてきてしまった子供はどう生きていけばいいのか、産まれてくることが正解だったのか、と当人が一生考えてしまうのは当然で、春の本音が読めないような雰囲気が最終的には崩れて、読者が無意識に寄り添ってしまうような脆さを感じた。最後の場面での、「父は、春と自分自身との連続性をあっけなく証明した。」という表現にはこの物語の本質が全て詰まっているようにも思えた。颯爽とした表現を連ねる中で、罪とは何なのかを突き詰めていくような展開にのめり込んでしまうことは不可避であろう。
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