ぜつぼう の商品レビュー
まず装丁が良い。赤が良い。黒が良い。白が良い。文字が良い。 コミカルな比喩、表現、ぶっ飛んだ展開はさすがの本谷節。 「ぜつぼう」というタイトルでありながら、描かれているのは「きぼうへの希求」だ。 絶望に自らのアイデンティティーを求める戸越。謎の女性シズミ。おかまの鳩好き妹尾。そし...
まず装丁が良い。赤が良い。黒が良い。白が良い。文字が良い。 コミカルな比喩、表現、ぶっ飛んだ展開はさすがの本谷節。 「ぜつぼう」というタイトルでありながら、描かれているのは「きぼうへの希求」だ。 絶望に自らのアイデンティティーを求める戸越。謎の女性シズミ。おかまの鳩好き妹尾。そしてサブマリン・・・。 すべては不眠症の男が作り上げた妄想のようにも思えるし、眠れぬ夜の明け方に一瞬だけ垣間見た夢の宴のようにも思える。ものすごく本谷さんらしい一篇だと思えた。
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私にとっては絶望でも誰かにとっては軽い、なんでもないようなことだったりする事は、生きていれば何度もある。本当に絶望しているのに、当人以外には分からない、その苦しさ。でもいま絶望している人間が、明日、絶望せずに夜を安心して眠って過ごせたとしたら、それはもう絶望していたことにはならな...
私にとっては絶望でも誰かにとっては軽い、なんでもないようなことだったりする事は、生きていれば何度もある。本当に絶望しているのに、当人以外には分からない、その苦しさ。でもいま絶望している人間が、明日、絶望せずに夜を安心して眠って過ごせたとしたら、それはもう絶望していたことにはならないのか。お前にとっての絶望はそんなもんだったの?って言われるのは気に食わないし、かと言って理解されるのもまた気に食わない。完璧に絶望にとらわれて、いざ抜け出そうにも抜け出すことが、惜しくもなってくる。絶望はとても魅力的だ。
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絶望って何なのだろう、と考えさせられた。眠れないのが絶望なのか、食欲があったり鼻唄を歌ったりするのは絶望していない証拠なのか?一定の基準なんてなくて、全ては本人の捉え方次第だと思う。絶望している自分に陶酔してしまう主人公の「俺は絶望してるがゆえに俺なのだ」の境地は悲惨かつ人間臭...
絶望って何なのだろう、と考えさせられた。眠れないのが絶望なのか、食欲があったり鼻唄を歌ったりするのは絶望していない証拠なのか?一定の基準なんてなくて、全ては本人の捉え方次第だと思う。絶望している自分に陶酔してしまう主人公の「俺は絶望してるがゆえに俺なのだ」の境地は悲惨かつ人間臭くて滑稽だと感じたけれど、誰しもが少なからず持っている精神性だと思った。そういった意味では、誰しもが主人公の戸越になりうるし、人生なんらかのきっかけで(精神的に)好転することもあると希望を持てるラストに勇気づけられる。
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読んだときは猿岩石のことを知らなかったのでずいぶん暗いなーと思いましたがそういう読み方もできるのだと知って目から鱗。 おもしろかったけれど、他の本谷作品と比べるとインパクトに欠けるかな、と。
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「ぜつぼう」(本谷有希子)を読んだ。タイトル程には重たくもないが(まあそういうわけだから絶望ではなくひらがなのぜつぼうなんだろうが)面白い作品でした。真の絶望など存在し得ないというメッセージか。
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絶望する事がアイデンティティとなってしまった男。 学生の頃、体育をさぼりたいがために風邪気味なのを大げさに言って だるそうにしてみたり、咳込んでみたりして余計にしんどくなった事を ふと思い出した。 電波少年をリアルタイムで見ていた世代としては この主人公のモチーフはあの芸人さ...
絶望する事がアイデンティティとなってしまった男。 学生の頃、体育をさぼりたいがために風邪気味なのを大げさに言って だるそうにしてみたり、咳込んでみたりして余計にしんどくなった事を ふと思い出した。 電波少年をリアルタイムで見ていた世代としては この主人公のモチーフはあの芸人さん...だよね?
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乾ききった心情から最後数ページ、 水がなみなみ注がれるように温かくなるラスト、 読後感が良かったです。 面白くない、というわけではなかったですが、 特別好みいうわけでもなかったので、 あえて読む時間を割かなくてもよかったかな、と、 個人的な感想として思います。
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これはまあまあかな。 売れっ子だった元芸人が、売れなくなって二年間不眠症に。ある日突然出会った怪しいホームレスに乗せられ彼の地元に。そこには怪しい女が勝手に住んでいた… 結局主人公は悩みを根本的に解決しようともせず、悩んでる自分が好きなんだな、って思った。悩んでる自分に酔ってるん...
これはまあまあかな。 売れっ子だった元芸人が、売れなくなって二年間不眠症に。ある日突然出会った怪しいホームレスに乗せられ彼の地元に。そこには怪しい女が勝手に住んでいた… 結局主人公は悩みを根本的に解決しようともせず、悩んでる自分が好きなんだな、って思った。悩んでる自分に酔ってるんですね。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
ドキュメンタリーバラエティで一世を風靡した芸人が世間に飽きられ、芸能界から干され、顔が知られてしまっているせいで世間の目に怯え、極度の不眠症に悩まされている。 で、その元芸人がいろいろあって違う環境におかれることになるんだけど、自意識過剰気味に物事を捉え、無理矢理にも自分が置かれている状況を絶望だと位置づけようと苦悶し続ける姿に面白味がある。本当に絶望の状態なのかもしれないが、絶望したがっている風に見える。些細なことで人からどう思われるか気にし続ける姿が反対に悩むことがアホくさいとさえ思わせる。 対称的と思われたシズミの存在も実は救いようがなかったりする。 強烈なキャラに暗さを感じさせるストーリー、でもそこにある笑いが面白い。
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