世界の食文化(17) の商品レビュー
分厚く、大変読み応えがある。 食文化とあるが、食事はその国の文化を映す鏡という事で、食事以外の事も分かり、何故その当時はそういう食事になったかという背景が、こと細かに纏められている。参考文献の多さが、それを物語っているだろう。 イギリス料理といえば、頭ごなしに「不味い」という人...
分厚く、大変読み応えがある。 食文化とあるが、食事はその国の文化を映す鏡という事で、食事以外の事も分かり、何故その当時はそういう食事になったかという背景が、こと細かに纏められている。参考文献の多さが、それを物語っているだろう。 イギリス料理といえば、頭ごなしに「不味い」という人が多くて、本場でまだ食べた事のない身としては納得しない(鵜呑みにも出来ない)が、その辺りの“何故”が詳しく載せられている。 出来れば、いつか本場で食べてから、判断したいところである。
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イギリスのメシはマズイ、というのが定説だ。というのも、「イギリスには、野菜といえるものは、キャベツか芽キャベツ、にんじん、グリーンピースくらいしか」ないうえ、「イギリス料理といえるものもない」「支配階級はフランス人の料理人を置いていた」とい本書も述べる。当然、本書は「イギリス料...
イギリスのメシはマズイ、というのが定説だ。というのも、「イギリスには、野菜といえるものは、キャベツか芽キャベツ、にんじん、グリーンピースくらいしか」ないうえ、「イギリス料理といえるものもない」「支配階級はフランス人の料理人を置いていた」とい本書も述べる。当然、本書は「イギリス料理」の本ではなく、「イギリス人は何を食べてきたのか」という本になるのだが、存外これがおもしろい。 イギリス人の食生活を変えたものは、なんだったか。奴隷貿易と産業革命だ。東インド会社を通じて中国から大量に茶を輸入し、奴隷貿易を大規模に展開してカリブ海でサトウキビを作る。産業革命&都市化&労働者化でゆっくりご飯とはいかない人々が、砂糖入りの紅茶を食事代わりにした。ジャガイモは貧民の食べるものという偏見でなかなか普及しなかったのに、さきに上流階級にひろまった砂糖入り紅茶の習慣はすみやかに広まったというのが皮肉だ。 フィッシュ・アンド・チップスが普及したのは19世紀中頃で、その技術的背景には汽船によるトロール漁法の展開で魚が大量にとれるようになったことと、冷凍技術と鉄道による輸送手段が確立したことがある、とか、第二次世界大戦のときの食糧統制(配給制度)が1954年まで続いた、なんてのもへーってかんじ。 「イギリスの食事ってどんなの?」と手軽に読める本を探している向きにはすすめないが、歴史的背景からイギリスの食文化を知るというのもよいんではないかと思う。
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