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闇がつむぐあまたの影 の商品レビュー

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2015/10/31
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ホラーテイストのヒロイック・ファンタジーで描いた ピカレスクロマンというところか。冒頭の雰囲気は悪く なし、主人公の悪漢ぶりに期待して読み始めたのだが。 確かに面白い点も多いし、善人がほぼ登場しないという のも痛快ではある。だがそれ以上に欠点が目立って しまっているような気がする。邦訳も一巻で止まって いるのも何となく頷けるという感じだ。 ひとつは途中で物語が「戦争」になってしまい、その中 で主人公ケインが果たす役割が今一つはっきりして いない点。一回読んだ限りの印象では、ただ双刀を振り 回して暴れているのだけが目立つだけで、戦争という システムにおいて司令官としての彼の果たした役割が ぼやけてしまっている。 そしてその戦争において「科学力」が発動される点。 物語が破綻を来すほどではないにしろ、ここで科学力に よる破壊光線が出てしまうのは、やはり興ざめであると 言いたい。「人知の及ばぬ謎の魔力」ではいけなかった のだろうか。 そして最も気になったのは、永い時を生きる不死の存在 としてのケインと、闘うことを喜び、世俗の権力を欲し 復讐を果たさずにはおれない俗物、あるいは悪漢として のケインが、上手く結びついていないところだ。 よくあるエルフ像に見られる長生から来る厭世観と いったものがケインにひとかけらも見られないことに 関しては何か説明があってしかるべきだったのではない だろうか。 続巻が訳出されていれば間違いなく読むところなのだが どうやらその気配はなさそうである。

Posted byブクログ