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醒めた炎(3) の商品レビュー

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2019/01/06

【醒めた炎 木戸孝允(三)】村松剛著、中央公論社、1990年 木戸孝允を通じて明治維新を振り返る、歴史の修学旅行も3巻目になった。 本巻では慶應3年から明治4年までの5年間、幕末維新の最もきわどいところが描かれている。 日本を統一した君主として徳川家が開いた「幕府」政権の元で...

【醒めた炎 木戸孝允(三)】村松剛著、中央公論社、1990年 木戸孝允を通じて明治維新を振り返る、歴史の修学旅行も3巻目になった。 本巻では慶應3年から明治4年までの5年間、幕末維新の最もきわどいところが描かれている。 日本を統一した君主として徳川家が開いた「幕府」政権の元で、諸侯がそれぞれの領土を「藩」として治める体制が日本の封建国家としての「幕藩体制」だった。これを西欧の近代国家のように一人の王がすべてを治める「中央集権国家」を目指したのが明治維新であり、明治4年(1871年)の廃藩置県により実現する。 慶應3年(1867年)の夏以降、15代将軍徳川慶喜は、力のなくなった徳川政権を朝廷に返上して、その上で改めて封建体制の新政権を作るという起死回生策を練り上げていた。坂本龍馬も同じ考えで、有名な船中八策は、徳川慶喜の首班を前提としている。 一方、公家の岩倉具視と薩摩藩の西郷隆盛を中心に、天皇を中心とした中央集権国家を志向したグループは、天皇から徳川慶喜討伐の命令が書かれた「密勅」を受ける。この密勅をまさに錦の御旗として、薩長両藩は鳥羽伏見の戦いから戊辰戦争、函館戦争へと至り、一気に近代中央集権国家設立に向かう。 しかし、この密勅は岩倉具視が部下に書かせた偽物であることが現代では知られている。まさに公文書偽造だが、それによって歴史が動いたことは事実なのだ。 明治政府が始まってからも、キングメーカーは旧500円札の主、岩倉具視であった。大久保利通と組んで木戸孝允を追い落とそうとしたり、封建領主であった各藩の殿様を向こうに回して廃藩置県をやってのける。 様々な人の思惑、思想、好き嫌い、が遺憾なく発揮されたこの5年間。 中央集権国家を作り上げた岩倉具視は、大隈重信が構想した小規模の訪欧使節団構想を取り上げて、自らを団長として木戸孝允、大久保利通、伊藤博文など明治政府の中核人材100名で約2年に渡る欧州・米国への訪問団とする。 新しい国家像を模索する旅である一方、この間に留守政府では西郷隆盛を中心に征韓論が勃興。西郷が下野し西南戦争へと進む直接的なきっかけとなる。 次巻最終巻で、明治という時代の性格が露骨に現れていくはずで、それが今の日本にも直接・間接に大きな影響を与えている。 今年は明治維新から150年だが、その歴史は一通の偽物の密勅で大きく動いたのだ。 #優読書

Posted byブクログ