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水蜘蛛 の商品レビュー

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7件のお客様レビュー

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耽美的な幻想小説。言…

耽美的な幻想小説。言葉の美しさを感じ取りました。

文庫OFF

2018/01/04

 12編からなる短編集。  フランス幻想文学に属する作家とのこと。  白水Uブックスの「小説のシュルレアリスム」として出版されており、序文はあのマンディアルグが書いている。  確かに幻想的な作品なのだが、それだけではなく、ブラックでありシニカルであり、アレゴリーであり、いく...

 12編からなる短編集。  フランス幻想文学に属する作家とのこと。  白水Uブックスの「小説のシュルレアリスム」として出版されており、序文はあのマンディアルグが書いている。  確かに幻想的な作品なのだが、それだけではなく、ブラックでありシニカルであり、アレゴリーであり、いくぶんかのアフォリズムを含んでいるように感じた。  詩人でもあるように、文章は詩的であり、時々詩的過ぎて迷子になりそうにもなる。  とても読みやすい翻訳だったのだが、数か所の脱字があったのが少々残念。  ただ、そんな残念な点など全く問題にする必要がないくらいに、とにかく面白い。  表題作「水蜘蛛」と「百合と血」は短めの中編程の長さであり、それ以外の作品は10頁にも満たない長さなので、どの作品も中だるみすることなく、スピード感を持って読み進めることが出来る。  澁澤龍彦経由で知った作家なのだが、その澁澤龍彦やマンディアルグ、アポリネール、ホフマンあたりが好きな人はきっと気に入ると思う。

Posted byブクログ

2017/01/06

昔、読んだなぁ……と、不意に思い出したので登録。 再読の機会があったら書き直します。 水蜘蛛に心惹かれて連れ帰り、屋根裏に放つと それは少女の姿を取ったので、妻には内緒に…… という表題作、他。

Posted byブクログ

2021/12/01

ベアリュの書物は、白水uブックスの『水蜘蛛』とパロル舎の『夜の体験』しか読んでいないが、長編の『夜の体験』より、ベアリュのものは、中短篇の方が好きだ。 好きというレベルではなく、『水蜘蛛』という作品はベアリュの成就したい世界と私の惹かれる世界は完全一致している。 『夜の体験』...

ベアリュの書物は、白水uブックスの『水蜘蛛』とパロル舎の『夜の体験』しか読んでいないが、長編の『夜の体験』より、ベアリュのものは、中短篇の方が好きだ。 好きというレベルではなく、『水蜘蛛』という作品はベアリュの成就したい世界と私の惹かれる世界は完全一致している。 『夜の体験』はベアリュの幻想的な世界が万華鏡のように広がっていて時間の軸の扱い方も面白い。しかし、私はベアリュの『水蜘蛛』に感性の類縁性を感じざるを得ない。 田中義廣さん訳の『水蜘蛛』が、一番、市場に出回っている書物と推測する。 私の手元にある『水蜘蛛』もそうで、この本におさめられている(白水uブックスより)中短篇について書いてみたいと思う。 田舎の村、その村から数百メートル離れたところに妻とふたりで住んでいる男が『水蜘蛛』の主人公である。 彼と妻の関係の描写が秀逸で、年を何年か重ねた夫婦の平和に少しのクラックがちらちら見えるような繊細な書き方は、もしかしてベアリュの経験も投影されているかもしれない。 ある日、主人公が村に散歩に行った時、水蜘蛛を拾ってくる。その水蜘蛛は言葉を話し、彼は彼女の存在を妻に告げず、屋根裏に隠す。驚くべきことに水蜘蛛は女に姿を変える。 夫婦の秩序は夫のこの振る舞いでひそかに崩壊へ向うが、彼が水蜘蛛に抗えなかったのはその神秘性であり、夫婦の秩序だったのかもしれない。 妻はオフィーリアを思わすように美しく幻想的に水のなかへ消え、ラストの悲劇にも美しさが漂う。 「球と教授たち」は4pほどのとても短い作品だ。 学会の帰り、優秀な教授たちが坂を下っていると、後方から球が来たので道を譲る。 坂の途中で球は動きを止め、また坂を上り天空に向かい消えて行った。 この物語は、インテリ集団の前に突如現れた説明できないもの。この対比が面白くまるでルネ・マグリットと絵をみているようであった。 「読書熱」は「球と教授たち」よりもっと短い3pの掌編で、本を読みすぎて体が萎縮して消失し、頭だけになった男の人の話。 彼の妻は見事な禿頭の彼を篭にいれて買い物に行くのだったが、人々の揶揄を怖れて留守番をさせることにする。彼は息で本をめくりご満悦なのだった。 この物語もビジュアル的には私はマグリットを連想してしまったが、ザムザのように、人間が形をかえても特別周りが驚いていないことや、どんどん萎縮するなら、今後はどうなのだろうなど読み手にイマジネーションパワーを巧妙に委ねている。 「百合と血」はこの短編集の最後を飾る作品で、「水蜘蛛」とは違った耽美さと幻想が格調高く織り交ぜられた一編である。 受胎告知にマリアの前に百合を携え現れた大天使ミカエル。聖なる植物として君臨してきた香り高き百合に魅せられた男が実現したかったこととは? この作品は、嗜好として幻想文学を望まない者には何の感動も与えないだろう。 ベアリュはシュルレアリスムに育まれ、独自の幻想文学を小説に限らず具現してきた人物である。 ゴシック・ロマンの匂いも感じさせるこの作品は、死と美を隣り合わせにした陶酔と苦悩の融合なのである。 マルセル・ベアリュは、1908年に生まれ、少年期にパリに出た。帽子屋などをし、パリに「ル・ポン・トラヴェルセ(Le pont traverse)・・・(注)「渡られた橋」とはジャン・ポーランの作品からとられている」という古本屋を経営していた。その傍ら、詩作や作家業に励み1985年亡くなった。 アルトーやマンディアルグらに賞賛され、圧倒的な支持を得た彼は息の長い活動をする。 69歳の時に発表された『夢の粉末』は、『夜の体験』と対をなす作品であり、是非読んでみたい作品である。

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2011/03/05

各々の感情に熱はあるが、全体的に良い意味で人間に血が通っていなく、脳内で変換されるのは決まって蝋人形なのであった。ひんやりとした朝露のような世界が拡がる作品集で、薄暗くてうすら寒くて少し湿っている。陽が昇りきる前の物語って感じが吉田篤弘を彷彿し、血の通わない人間たちから小川洋子を...

各々の感情に熱はあるが、全体的に良い意味で人間に血が通っていなく、脳内で変換されるのは決まって蝋人形なのであった。ひんやりとした朝露のような世界が拡がる作品集で、薄暗くてうすら寒くて少し湿っている。陽が昇りきる前の物語って感じが吉田篤弘を彷彿し、血の通わない人間たちから小川洋子を彷彿した。とても美しいと思った。

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2009/10/07

ホフマンの幻想とカフカの不条理――イノセンスとユーモアが混在し、背徳とエロティシズムが奇妙に乱反射する――マンディアルグが絶賛した幻想の妖女譚「水蜘蛛」をはじめ、永遠の瞬間を百合のひとひらに極めんとした「血と百合」等、夢の現実、生と死に引き裂かれる魂の冒険を描く戦慄の短篇集。

Posted byブクログ

2009/10/04

幻想的で、人を喰ったようなブラックユーモアが詰まりまくった短編集。冷笑的に残酷に、現実の裏側に潜む真実を抉り出しているような感じです。…でも、どこかユーモラスな雰囲気もあったり、文章が非常に映像的であったりして、シュルレアリスム小説といいつつ読みやすいです。

Posted byブクログ