蜂工場 の商品レビュー
幼い頃にペニスを犬に…
幼い頃にペニスを犬に食いちぎられた少年フランクは小動物を殺して日々を過ごしていた。そこに精神病院にいるはずの兄から「今から帰る」という連絡があり・・。超常現象は何も出てこない。しかし、怖い。とにかく怖い。歪んだ精神状態の人たちのなかで何を信じたらいいのか。まともな人は出てこないの...
幼い頃にペニスを犬に食いちぎられた少年フランクは小動物を殺して日々を過ごしていた。そこに精神病院にいるはずの兄から「今から帰る」という連絡があり・・。超常現象は何も出てこない。しかし、怖い。とにかく怖い。歪んだ精神状態の人たちのなかで何を信じたらいいのか。まともな人は出てこないのかぁ、と。そして驚愕の結末へ。クライヴバーカー「血の本」と並び賞賛されたイギリスニューホラーの名作。
文庫OFF
なかなか手に入らない…
なかなか手に入らない、幻のホラーです。映画化になるとB級扱いですが、逆にB級のホラーはノベライズ以外に中々ありません。面白いです。
文庫OFF
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読んでいて、『ねじくれた論理にも関わらず、それがスッと頭に入ってくる自分』にぞっとする小説。それでも、根本に横たわるテーマが面白いため、星4である。 出版当時、評価が真っ二つに割れたと解説にある通り。 「おぞましい」という評価は、暴力行為の描写と、「実験だった」と主人公の父親が語る内容に注目したのであろう。 一方で「ご機嫌!」という、おそらく作中人物と同年代のひとびと(あるいはその精神性を理解しうる人々)の評価。 評者は、作中に微に入り細に入り描かれた数々の行為を、実行に移すなんてぞっとする。だが、背後に横たわっている主人公の呪術的世界観は「スッと頭に入ってくる」。 蛮行の描写にいちいち怖気を振るっていたら、根底にある文学的な部分は味わえない。バンクスの難解な英語をよくぞここまで訳したものだ、と翻訳担当の野村芳夫氏には拍手を送りたい。 本書を読み終えた者としては、以下のようにオススメしたい。 間違った場所に生まれたり、間違った育てかたをされることで、『本来持ち得た何か』を失ったり、持ち得なかったり、ゆがめられた子供の物語として。 (これも文学にはありがちな話だが)何もかも投げっぱなしなので、作中の諸問題は実は解決しない。福祉行政の視点は捨てた方がいい。 ネタバレ的に言えば、 『エリックという高等教育を受けた兄は狂気の側に、フランクという私教育を受けた弟は正気の側にいる』 という部分は、側面的なモチーフだが、ブラックユーモアを感じる。 『実験とやらは大失敗だ、単に歪んだ自己認識の子どもが、歪んだ大人になるだけじゃないか!』と怒ることになるかも知れない。 評者は冷めたジェンダー観 「それは呪いのようなもの、自分で強化する人もいれば、薄めようとする人もいる(どっちも自由であるべきだ)」 を持っているので、この主人公の『その後』は案外したたかに、自己呪術を増幅補強して生きていくんじゃないか、と思っている。 読者諸氏におかれては、エンタメではなく胸糞悪い文学として、ぜひご一読願いたい。
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1984年発表、クライヴ・バーカーらと並びホラー新世代を代表する作家として評価を得ていたバンクスのデビュー作。本の表紙に「結末を誰にも話さないように」とわざわざ刷り込み、粗筋紹介などでも際物的な先入観を植え付けるのだが、確かに特異な顛末は辿るものの、終幕における衝撃性はそれほど高...
1984年発表、クライヴ・バーカーらと並びホラー新世代を代表する作家として評価を得ていたバンクスのデビュー作。本の表紙に「結末を誰にも話さないように」とわざわざ刷り込み、粗筋紹介などでも際物的な先入観を植え付けるのだが、確かに特異な顛末は辿るものの、終幕における衝撃性はそれほど高くはない。中途で大胆な伏線を幾重にも張っているため、勘が良い読み手なら予測することも可能だろう。真相の意外性よりも、全編に漂う頽廃/背徳的なシチュエーションにバンクスの独創性を感じた。 主人公は16歳の少年フランク。スコットランドの或る島に生まれ育ち、今も父親と暮らしている。母親はフランクを産んですぐに失踪。食事の世話などをする女が定期的に訪れる以外は、島を訪れる者はいなかった。フランクは家を取り囲む一定範囲内に呪術的な防衛策を施し、手製の武器を用いて野性の小動物や鳥を狩り、異質の規範に基づいて行動していた。そんな中、腹違いの兄エリックが精神病院から脱走したとの報を受ける。フランクはこれまでの道程を振り返りつつ、兄との再会がもたらす暗い予感に打ち震える。その混乱が、自らの出生に隠された衝撃的な事実を明かす事態となることも知らないままに。 恐怖を主題とするが、読み終えた後は、ブラックユーモアの変種という印象。主要な登場人物は須く狂気の淵にいるのだが、一人称による文章は時に理智的な部分も垣間見せ、小説として破綻無く成立させるためのバランスに苦慮している。プロットは短編向きだが、肝となるアイデアを活かすための肉付けは多様。中でも、主人公が同世代の近親者三人を殺める場景、無垢と狂気の境界が崩壊する際の虚無感が異様な迫力に満ちており、震撼させられた。 全体に流れる無秩序/混沌、相対する安寧と抵抗、終局における「解放」は、のちに左翼的とも称されたバンクスのスタンス/思想を暗示していると捉えることも可能だが、恐らく裏読みし過ぎなのだろう。
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読み始めるとすぐにこの本が普通でないことに気がつくだろう。抑制された文体は非常に読みにくくその読みにくさこそがこの本の奏でる大きなトリックの一つになっている。そして衝撃のラストへとジェットコースター的に突き進んでいく。
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冒頭~中盤の小動物をグチグチするシーンの続くのが 面倒だったけど、これは私が部外漢だからで、 実は読者サービスなのかな?? 繊細な医学生だった兄が発狂する契機となった「幼児病棟での悲惨な事件」は、現在の空調システムで実際に起きる可能性もあると思う。そういう意味では怖っ!!! 怖いってば。 ただ、な~んかラストがなあ・・・なんつーか、えーと、 「ここから出るから」って言われたところをずっと見つめてたら、後ろから「わあ~っ」て出られて、「そっちかよ!」みたいな。・・・伝わります?すんません・・・ 病院を抜け出した兄の実家への旅程が「野良犬を食べながら食いつなぐ」って。。。 イっちゃってんだかリアルなんだか ><;; 全体的なトーンといい、「蜘蛛の微笑」に近いスタンスかも。敢えて3/17にスコットランドの話を読み始めることはなかった・・・
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冒頭の一文からして、 「あ、この主人公変だ」と思った本。 落ちはイマイチだけれども、 <蜂工場>の発想と、フランクのどこかタガが外れた思考を、 書ききれるのは一種の才能だと思う。
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父親と二人でスコットランドの小さな島で暮らす16歳のフランク・コールダム。私生児であるため学校にも通っていない彼は幼い頃犬に性器を噛み切られ、残虐な方法で近所の小動物を狩って毎日を過ごしていた。ある日、精神病院に収容されていた兄から「今から帰る」と電話が入った。フランクは期待と恐...
父親と二人でスコットランドの小さな島で暮らす16歳のフランク・コールダム。私生児であるため学校にも通っていない彼は幼い頃犬に性器を噛み切られ、残虐な方法で近所の小動物を狩って毎日を過ごしていた。ある日、精神病院に収容されていた兄から「今から帰る」と電話が入った。フランクは期待と恐怖で困惑する……。 <少年>が愉しむおぞましいゲームと、その家族の異常な生活、そして時折挿入される、狂った兄からかかってくる電話。主人公の第一人称で語られるこの物語にはそれだけが描かれ、狂気じみたトーンで話が進んでいく。 フランクによる殺戮シーンは残酷だし(殺人も3回犯している)、独白体で語られる内面世界は不気味なことこの上ない。だが、徐々に明らかになるコールダム家の人々の異常さもまた恐ろしい。 表紙に「結末は、誰にも話さないでください」の一文が入っているように、ラストでそれまでの作品世界を引っくり返すようなどんでん返しが待っているのだが……うーん、反則?
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表紙に「この結末は誰にも話さないでください」なんて書いてあるのですが。……話せませんよこれは。やや唐突過ぎる感もあったけれど、まさかそういうことだとはねえ。とんでもないです。 残虐で精神的に痛いわりには、絵的に美しいシーンが多いなあ。主人公の作った「蜂工場」の仕掛けとか。エスメラ...
表紙に「この結末は誰にも話さないでください」なんて書いてあるのですが。……話せませんよこれは。やや唐突過ぎる感もあったけれど、まさかそういうことだとはねえ。とんでもないです。 残虐で精神的に痛いわりには、絵的に美しいシーンが多いなあ。主人公の作った「蜂工場」の仕掛けとか。エスメラルダ殺害?のシーンとか。印象的でした。でもエリックのトラウマとなったあのシーンは……恐ろしいです。そりゃあ狂うだろうなあ。
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本を読んでいて、初めて読むのを止めようかと思った本です。 あまりにも衝撃的な内容で、思い出すだけで寒気がします。 ホラー小説としては傑作ですが・・・
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