絹と明察 の商品レビュー
近江絹糸の労働争議を…
近江絹糸の労働争議をモデルにした長編。「日本的心情」と「西欧的知性」の戦いは、今でも珍しくないと痛感しました。
文庫OFF
三島由紀夫後期の娯楽小説.言葉の(無駄とも言える)豊かさは感心するが中身の深さに結びついていかないのが虚しい.
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駒沢紡績の社長駒沢善次郎は、自分を〈父〉とし従業員たちを〈子〉とみなす家族主義的経営によって、零細な会社を一躍大企業に成長させた。しかし、彼の外遊中に、ハイデッガーを奉ずる政財界の黒幕岡野の画策によってストライキが決行され、三カ月間の争議の後、会社は組合側に屈する――。近江絹糸の...
駒沢紡績の社長駒沢善次郎は、自分を〈父〉とし従業員たちを〈子〉とみなす家族主義的経営によって、零細な会社を一躍大企業に成長させた。しかし、彼の外遊中に、ハイデッガーを奉ずる政財界の黒幕岡野の画策によってストライキが決行され、三カ月間の争議の後、会社は組合側に屈する――。近江絹糸の労働争議に題材をとり、日本的心情と西欧的知性の闘いを描いた長編小説。
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琵琶湖のほとりに絹糸製造の会社を運営する駒沢善次郎は 「社員みな家族」をモットーに急成長を果たしたことで まるで神様のような尊敬を集めていたが その内実は 貧しい若者を囲い込み、洗脳し 厳しい規律でがんじがらめに縛り付け、生産性の向上をはかるという 非人間的なものであった まるで...
琵琶湖のほとりに絹糸製造の会社を運営する駒沢善次郎は 「社員みな家族」をモットーに急成長を果たしたことで まるで神様のような尊敬を集めていたが その内実は 貧しい若者を囲い込み、洗脳し 厳しい規律でがんじがらめに縛り付け、生産性の向上をはかるという 非人間的なものであった まるで戦時中を思わせるそのやり口は いろんな意味で、内外からの密やかな反発を招いていた 戦前、フライブルグでハイデガーの薫陶を受けた岡野という人物も 駒沢善次郎への敵意を隠し持つひとりだった 善意の仮面をかぶり、人に近づくフィクサー岡野は 数滴の毒を落とし 自らの手を汚すことなく、駒沢を破滅へと導いた しかし、にもかかわらず すべてが終わったとき彼は 天皇主義に基づく純粋な善意の人、駒沢善次郎への畏れを 新たにするしかなかった おそらくは世界人類滅亡の夢を抱いている岡野にとって 駒沢の示すヒューマニズムこそ最大の障壁となろうから
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初読の感動が、今回なかった。実在の労働争議をもとに、ブラック企業の社長を描いた。相変わらず、三島の女性像は滑稽極まるが、本当にいそうで怖い。
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近江絹糸の労働争議を題材にした作品。日本古来の家父長的企業の経営者と改革を図る若者。会社の転覆を図る第三者、社長夫人、愛妾、それぞれの異なった欲望、思惑が錯綜する。2018.5.11
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長かった。 家族主義の名の下に過酷な労働条件で従業員を働かす経営者の話。 そして、従業員を巧みに誘導して、 会社を乗っ取るフィクサー。 従業員、経営者、フィクサー、それぞれに思惑や狙いがあったのだけれども、この話の本筋はいったいどれなんだろうという感じがしました。 一つの状況...
長かった。 家族主義の名の下に過酷な労働条件で従業員を働かす経営者の話。 そして、従業員を巧みに誘導して、 会社を乗っ取るフィクサー。 従業員、経営者、フィクサー、それぞれに思惑や狙いがあったのだけれども、この話の本筋はいったいどれなんだろうという感じがしました。 一つの状況を俯瞰で進めていく中で、 話の本筋がわからなくなりました。 難しい。。
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人間の業、大人になると言う事は裏を知る事。裏を知らない純粋なものは結局敗者。最後のどんでん返しは受け狙いの三島らしからぬ終焉
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超久しぶりに三島の作品を読んだけど、相変わらずおもしろかった。やけに社会派な内容だなと思ったら、実際に起こった近江絹糸の労働争議を題材にしたものだった。 駒沢紡績の社長駒沢善次郎(父)とその従業員(子)たちを父と子の関係で表し、会社というものを通して日本の父親の問題について扱った...
超久しぶりに三島の作品を読んだけど、相変わらずおもしろかった。やけに社会派な内容だなと思ったら、実際に起こった近江絹糸の労働争議を題材にしたものだった。 駒沢紡績の社長駒沢善次郎(父)とその従業員(子)たちを父と子の関係で表し、会社というものを通して日本の父親の問題について扱った内容。 子に代表される従業員大槻と社長駒沢(父)との労働争議を中心としたやり取りのすえ、最終的には社長(父)が従業員(子)に滅ぼされていく過程は読んでいておもしろかった。 また、昭和の日本らしい家父長的な経営者駒沢と、ハイデッガーの思想に傾倒した西洋思想の岡野という、日本的なものと西洋的なものの観点からの明察がストーリーの中に繰り広げられていておもしろかった。 現代の観点からすると、本当に昭和的だと思ったけど、こういった会社は現代でも存在するんだろうな。何か和民とか近い気がした(笑) 最近三島の本を全然読んでいなかったけど、これを機に三島の未読の作品を読んでいこうと思った。
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実際の労働争議をテーマに、 経営者と労働者、そして父と子の関係性を描く。 読後、テーマを捉えられたようで捉えきれず、 解説に助けられた感あり。 でもこんな企業は今でもあるんじゃなかろうか。 そしてこの労働争議自体に興味が沸いてしまった。
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