墜落遺体 の商品レビュー
御巣鷹山の日航機123便墜落事故の身元確認班長であった著者による渾身の記録。気温40度に達する猛暑の体育館で、不眠不休の身元確認作業に当たる警察官、医者、看護師の姿には鬼気迫るものがある。 何故そこまで…とも思うが、日本人のご遺体への思い入れは特別なのである。西洋では、魂が抜け...
御巣鷹山の日航機123便墜落事故の身元確認班長であった著者による渾身の記録。気温40度に達する猛暑の体育館で、不眠不休の身元確認作業に当たる警察官、医者、看護師の姿には鬼気迫るものがある。 何故そこまで…とも思うが、日本人のご遺体への思い入れは特別なのである。西洋では、魂が抜け出た肉体は入れ物に過ぎないという考えから、そこまで執着しないようだ。仏教の教えなのかもしれないが、愛する人の存在を自分の目や肌で確かめたいという気持ちはよく分かる。早く家に帰してあげたいとも思うのだろう。 亡くなった方からしてみれば、たとえ肉体がバラバラになり焼けただれていたとしても、一度は家に戻りたいと願うのではないか。死せる者がそれを望むのならば、遺された者がご遺体にこだわることにも意味があるはずである。 壮絶な現場での体験は、彼らの人生観を変えたという。身近な「死」を目前にすると、人は否応なしに「生と死」について考えざるを得なくなる。決して、軽々しく「死」を扱ってはならないと。家族や友人との絆を大切にし、その「生」をまっとうすべきだと。 あまりにも無残なご遺体を目の当たりにし、上を向いて涙をこらえる警察官と医師。思わず幼子の顔に頬ずりしてしまう看護師…。職業人である前に血の通った人間である彼ら。 ありのままの描写にショックを受け、涙がこぼれそうになった。あたかも自分がその場にいるかのごとく錯覚してしまう。空間や時間を共有することで湧き上がってきた感情を一過性のものと捉えず、改めて人生の意義を問うことこそ、本書読者の責務だと思える。
Posted by
当時理系学生の私は、自分なりに抱いていたのテクノロジーへの信頼感が瓦解したショックもあり、当時多分大勢の方が目にしたはずの写真週刊誌の悲惨な遺体写真を敢えて見ませんでした。,,しかし、最近になってこの著作の存在を知り、,「興味本位でなく、生と死について考えられる人ならば読んでおい...
当時理系学生の私は、自分なりに抱いていたのテクノロジーへの信頼感が瓦解したショックもあり、当時多分大勢の方が目にしたはずの写真週刊誌の悲惨な遺体写真を敢えて見ませんでした。,,しかし、最近になってこの著作の存在を知り、,「興味本位でなく、生と死について考えられる人ならば読んでおいて損はない」とう書評に背中を押されて手に取りました。,(全く興味本位でないというと嘘になりますが…),,3分の1程度進んだところで、検死場の修羅場の極みが描かれます。,・有事に為に訓練され、準備をしてきた人々の頼もしさ,・むご過ぎる遺体を前に検視関係者が全員涙を流してしまうシーン,・日赤の看護士たちの心遣い。,・決して、日航側が用意した弁当に手をつけない信念,(ただし、脱水症状を防ぐため、飲み物は別。ここがリアルです),,しかし、彼らの感傷にひたる時間は僅かで、遺体を遺族へ引渡す執念へといやおうなく駆り立てられていきます。,,日本人独特の死生観とともに、興味深いのが極限まで疲弊した組織体の運営ですね。
Posted by
お1985年8月12日、群馬県・御巣鷹山に日航機123便が墜落。なんの覚悟も準備もできないまま、一瞬にして520人の生命が奪われた。本書は、当時、遺体の身元確認の責任者として、最前線で捜査にあたった著者が、全遺体の身元が確認されるまでの127日間を、渾身の力で書きつくした、悲しみ...
お1985年8月12日、群馬県・御巣鷹山に日航機123便が墜落。なんの覚悟も準備もできないまま、一瞬にして520人の生命が奪われた。本書は、当時、遺体の身元確認の責任者として、最前線で捜査にあたった著者が、全遺体の身元が確認されるまでの127日間を、渾身の力で書きつくした、悲しみ、怒り、そして汗と涙にあふれた記録である。
Posted by
日航機墜落の時に遺体検死と身元確認の責任者だった人の手記。遺体のお腹や大腿部からほかの人の顎や顔が出てきたり、ソフトボールぐらいの肉の塊を広げたら上半身の皮だったりと、遺体の状態はまさに壮絶。 何百の遺体を短期間で検死していく医療従事者の様子や遺族のエピソードが事実として記されて...
日航機墜落の時に遺体検死と身元確認の責任者だった人の手記。遺体のお腹や大腿部からほかの人の顎や顔が出てきたり、ソフトボールぐらいの肉の塊を広げたら上半身の皮だったりと、遺体の状態はまさに壮絶。 何百の遺体を短期間で検死していく医療従事者の様子や遺族のエピソードが事実として記されており読みやすい。
Posted by
東日本大震災のドキュメント『遺体』と同時期に購入。しかし、本書を読み始めるには数冊分のインターバルが必要だった。地震・津波被災とは次元の違う航空機墜落事故の悲惨さを感じた。遺体の中に別の遺体が重なり合うように発見される、その衝撃の大きさ。幼い子の遺体にまつわる話に涙が溢れてきた。...
東日本大震災のドキュメント『遺体』と同時期に購入。しかし、本書を読み始めるには数冊分のインターバルが必要だった。地震・津波被災とは次元の違う航空機墜落事故の悲惨さを感じた。遺体の中に別の遺体が重なり合うように発見される、その衝撃の大きさ。幼い子の遺体にまつわる話に涙が溢れてきた。現場の責任者として奮闘した警察官の手記だが、定年後に執筆されたものとは思えないほど臨場感、というか現実感がある。章立てで、その都度時間が戻ったりするが、時系列で書かれたら良かったかというと、それは違うのではないかと思った。
Posted by
「マリコ 津慶、知代子どうか仲良くがんばってママを助けて下さい。 パパは本当に残念だ。 ママ、こんなことになろうとは残念だ。 さようなら、子供たちのことをよろしくたのむ。 今六時半だ。飛行機はまわりながら急速に降下中だ。 本当に今まで幸せな人生だったと感謝している」 きりもみ状...
「マリコ 津慶、知代子どうか仲良くがんばってママを助けて下さい。 パパは本当に残念だ。 ママ、こんなことになろうとは残念だ。 さようなら、子供たちのことをよろしくたのむ。 今六時半だ。飛行機はまわりながら急速に降下中だ。 本当に今まで幸せな人生だったと感謝している」 きりもみ状態で急降下する旅客機のなか、家族へ向けて認められた 遺書は胸に重く響く。 暑い夏だった。1985年8月12日の夕刻。乗員乗客524人を乗せた 日本航空123便は、機体のコントロールを失い群馬県・御巣鷹山 に墜落した。生存者は僅かに4人。 本書は群馬県警高崎警察署に勤務中に、世界航空機事故史上 最悪となる日航機墜落事故の際に遺体確認藩の班長として 現場で指揮を執った著者による手記である。 既に単行本で読んでいるのだが、文庫版で再読である。再読でも 航空機事故による壮絶な遺体の状態には言葉がない。 身体の一部が欠損しているのはましな方だ。シートベルトが上半身と 下半身を分断し、内臓や脳が失われた遺体。人体の原形を留めない 肉塊。ひとりの体に、もうひとりの体がめり込んだ遺体。そうして、妊娠 していた女性の体から飛び出した胎児が、現場の土の中から発見 される。 警察官、医師、歯科医師、看護婦、ボランティア。遺体の検視・確認 作業にあたったすべての人たちが、一刻でも早く、間違いないよう 遺族の元へと帰れるように作業を進める。 マスコミ対策もあり、締め切られ暗幕を張り巡らした体育館。連日の 猛暑のなかで過酷な作業が続けられた。 読んでいる途中、何度もページを閉じ、再度開くことを繰り返した。 あまりにも凄惨である。だが、これが現実に起った事故であり、 事故が起れば動員される人々がいるのだ。 8月14日から始まった遺体の確認作業は12月18日まで続けられた。 辛い作業であったろうと思う。感情に流されず、淡々と綴られている だけに、警察官や医師、看護婦の辛さ。また、遺族のやり場のない 思いが伝わって来る。 尚、この事故の際に出動した歯科医師のお嬢さんが、東日本大震災の 際に歯型の照合にあたったという話を聞いた。
Posted by
泣きながら 咽びながら 読みました。 何度読んでも 涙が出ます。 関係者の尊い努力にひたすら頭が下がります。 息子が中学に入ったら 首に縄をつけてでも読ませたい そんな本の一冊です。
Posted by
「想像を絶する」という遺体の状況がこれでもかと展開される。外国人との宗教観の違いの話が興味深かった。そしてマスコミのクズ具合。 いざとなったとき献身的な人がこれだけ集まるというのは日本という国の強さだろうと感じるが、一方でもブラックだなー寿命縮まるよなーと思わずにはいられない。
Posted by
夏になり高校野球の季節になると毎年思いだす。 子供ながらに、当時リアルタイムでテレビから流れる事故の速報を食い入るように見ていました。 遺体の身元判明がどれだけ大変だったか、医療関係者・警察・遺族の言葉に、涙なしでは読めません。 自分が今生きていることの意味・重さを考えさせられま...
夏になり高校野球の季節になると毎年思いだす。 子供ながらに、当時リアルタイムでテレビから流れる事故の速報を食い入るように見ていました。 遺体の身元判明がどれだけ大変だったか、医療関係者・警察・遺族の言葉に、涙なしでは読めません。 自分が今生きていることの意味・重さを考えさせられます。
Posted by
事故から13年後の1998年に出版された、警察関係者による図書。 連日報道されていただろうに、生存者4名で、搭乗者のほとんどが亡くなった、ということしか覚えておらず、本書で、身元確認までの壮絶な道のりを知り、想像を絶する事故だったと改めて思う。 大惨事だけに、身元確認の過程は過酷...
事故から13年後の1998年に出版された、警察関係者による図書。 連日報道されていただろうに、生存者4名で、搭乗者のほとんどが亡くなった、ということしか覚えておらず、本書で、身元確認までの壮絶な道のりを知り、想像を絶する事故だったと改めて思う。 大惨事だけに、身元確認の過程は過酷で、ショッキングな描写は少なくないが、失った家族を探す遺族、文字どおり不眠不休で仕事に向き合う、医師、看護婦、警官の姿勢にただただ心を打たれた。 また、通常のニュース番組では報道されないことを、当事者やジャーナリストが、発信していくことの大切さについて、本書でより強く感じることができた。 昨今、就職に有利だからという理由で、警官や看護師を目指す人たちもいると聞くが、教科書や参考書以外にも、本書のような図書にも是非触れてほしいと思う。
Posted by