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東京の下層社会 の商品レビュー

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28件のお客様レビュー

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著者が、明治中期から…

著者が、明治中期から昭和戦前頃までの東京・大阪の下層社会について書かれた文献を仔細に調べ纏め上げたのが本書。都市開発において、行政が如何に表面の取り繕いと自己の利益のみに終始して、労働者層への配慮をして来なかった事への批判もあるが、まぁこれはいつの時代でも当たり前のこと。 巻末に...

著者が、明治中期から昭和戦前頃までの東京・大阪の下層社会について書かれた文献を仔細に調べ纏め上げたのが本書。都市開発において、行政が如何に表面の取り繕いと自己の利益のみに終始して、労働者層への配慮をして来なかった事への批判もあるが、まぁこれはいつの時代でも当たり前のこと。 巻末に参考文献のリストが載っているが、特殊な分野だけに、「よくここまで調べたな」と感心する。 

文庫OFF

過去を眺めるのに、情…

過去を眺めるのに、情緒的な懐古主義だけではいけない。そのことをつくづくと感じました。決して過去の問題ではなく、現代でも同じようなことが起こっているのだということに気付く必要があるでしょう。

文庫OFF

2023/04/01

当時の貧困層の様子が生々しく描かれており、如何に自分が生きるこの世が恵まれているかを再認識させられてしまった。貧困の根本にある他者に対する想像力の欠如は現代に通づる課題であり、大局観を持って世の中を見ていくことが必要だと思った。

Posted byブクログ

2022/05/25
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貧困層の生活について。後半は娼婦について書かれていて幅広いジャンルの貧困について書かれているかと思い込んでいたため割とざっくりしているんだなと思った。 昔はありとあらゆる概念がなく余裕もないので貧困層を切り捨てるのは当たり前のことなんだと思った。倫理観もなく人権もない。ようやく栄養学というものを知った程度。この状態から今の現代社会までよく進めたと感心するし少しづつ世の中は良くなっているんだなと思った。 他の国ではある残飯屋も昔日本にあったのは納得できる。ただ近親相姦や強姦が日常茶飯事で親子が夫婦になることもあったと書いてあるけど本来の夫婦は離婚するということなのか戸籍がめちゃくちゃなのかそもそもないのかよく分からなかった。深掘りして知りたいところだった。

Posted byブクログ

2020/09/24
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

明治維新は我が国において「革命的」なできごととしてしばしば喧伝される。大局的には欧米列強に比肩する歴史的転換点であろう。この歴史的事実が放つ光が大きければ大きいほど、まばゆい光に隠されて見えなくなることも多いのではないだろうか。 『東京の下層社会』はタイトル通り、革命的なできごとが放つ光に隠されて、あまり語る者の多くない場所を手燭の光を灯すようにしてかき集めた当時の社会ルポである。この分野の記録はそう多くないだけに、記録的価値は高い。著者は先人の手になる記録を参照しながら検証を進めているが、その記録が貧民窟(スラム)に暮らす人々に紛れ、実体験をもとに描かれたものだけに今読んでも臨場感はいや増すのである。歴史は一般に勝者、権力者の視点で書かれ、いわば勝ち組にスポットが当てられる。そうした人たちは実際にはごく一握りの人々であり、しかし、歴史はその陰に数多存在する市井の人々が積み重ねてきたものであろう。 日陰に隠れ、闇に紛れ、ともすればそのまま葬り去られる運命にもある世界を描き出した価値は高い。貧民窟の剣呑な人びとのなかにわが身を投じて、そこで暮らした体験によって記録を残すという仕事がどれほど大変で生半可な者にはできないことであるかは、本書を読めばたちどころにわかる。権力者が、社会の底辺にうごめいているこれらの「貧民」を一顧だにしないのは、明治の世も令和の世もあまり変わり映えがしないが、一時の景気がしぼんで以降、日本も再び貧困層が増えたとしばしば聞こえてくるようになった。一方でその状況が改善したという話は全く聞こえない。すなわち明治の世の無策っぷりが、今もまた繰り返されていることの証左ではなかろうか。 後半で描かれるのは当時の女工や娼婦であり、当時の女性が生きていくことがどれほど大変なことであったかが偲ばれる。さすがに当時と比較すれば、現代は男女格差は大幅に縮小されたであろうが、それは縮小であり「平等」を意味しない。「女性活躍」をスローガンのように叫び、結果として女性閣僚などといいながら都合よく使い捨てていた者がつい先ごろまで権力者だったことを思えば、男女平等というユートピアは夢の彼方に霞んでしまう。「女性活躍」も今はたちの悪いプロパガンダにしか聞こえない。 このような今を生きる我々にとって、本書は権力者によって貧民層に蹴落とされたときの生きるバイブルとなるだろう。権力者を目指す一部の者はともかく、権力者になどなり得ない大多数の人たちにとって、『東京の下層社会』はまさに生きた教科書であり、サバイバル・マニュアルである。

Posted byブクログ

2020/01/28

さすがに紀田順一郎さん 『日本の下層社会』(横山源之助)、『最暗黒の東京』(松原岩五郎)は何度も書棚から手にとっては戻し、戻しては手に取り、を繰り返していたのですが、ようやくそれらの一端に手を触れられた気がします。  今からほんの百数十年前の文字を持たなかった(持つことが困難であ...

さすがに紀田順一郎さん 『日本の下層社会』(横山源之助)、『最暗黒の東京』(松原岩五郎)は何度も書棚から手にとっては戻し、戻しては手に取り、を繰り返していたのですが、ようやくそれらの一端に手を触れられた気がします。  今からほんの百数十年前の文字を持たなかった(持つことが困難であった)人々の「暮らしぶり」にはずっと興味関心を持っていので貪るように読み進めてしまいました。  ややもすれば「明治維新」とかなんとか、といった日の当たるところばかりが喧伝されてしまう世の風潮の中で、こういう「負」の側面にちゃんと光をあてて、歴史的史実を確認していくことは本当に大事だと思ってしまう。  権威者(権力者)にとって都合の良いところばかりを言い連ねて、書き連ねて、一方向の歴史(の一部)だけを知らしめようとする「仕組み」は昔も今も一緒だなぁと改めて思ってしまう。 それにしても、 松原岩五郎さんを始めとする当時の優れたジャーナリスト、ルポライターたちの熱意と想像を絶する困難さを乗り越えた、その仕事の成果に心から敬意を表します。  

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2019/10/27

明治から終戦までのスラム街や娼婦達の生活についての解説書。 前半は松原岩五郎の『最暗黒の東京』などを引用し、木賃宿や長屋で暮らすスラムの貧民たちの生活が描かれている。 『最暗黒の東京』は、書かれている内容は興味深いのだが、いかんせん文語で書かれており、読解に手間がかかるのでこの本...

明治から終戦までのスラム街や娼婦達の生活についての解説書。 前半は松原岩五郎の『最暗黒の東京』などを引用し、木賃宿や長屋で暮らすスラムの貧民たちの生活が描かれている。 『最暗黒の東京』は、書かれている内容は興味深いのだが、いかんせん文語で書かれており、読解に手間がかかるのでこの本で解説されているのはありがたい。 しかし、後半からは娼婦と女工の生活に移ってしまうので、雑多な社会の状況が描かれているのは前半までなのが残念なところ。

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2019/05/19

職場の先輩からお借りしました。 資料として読んでいたのですが、ついこの間まで日本はこんな感じだったのだなぁ…と驚くことしきりです。 今も、労働力は使い捨てみたいなところもありますが、この頃はもっとひどく、寧ろ人間扱いされてないです。 前半はまだどうにか、でしたが、もらい子殺しくら...

職場の先輩からお借りしました。 資料として読んでいたのですが、ついこの間まで日本はこんな感じだったのだなぁ…と驚くことしきりです。 今も、労働力は使い捨てみたいなところもありますが、この頃はもっとひどく、寧ろ人間扱いされてないです。 前半はまだどうにか、でしたが、もらい子殺しくらいから辛く、娼婦・私娼・女工はしんどかったです。夢に見ました。 働いても働いても楽にならない。搾取される生。 福祉についてはまだまだ充分でない気がしました。

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2018/10/08

坂野上の雲などで描かれる、日本人が世界の仲間入りをした時代、実はその主役は本当に一部のエリート階級だけの話であり、一般の庶民は何も知らずただ生きるだけで精一杯だったという。しかし、実際に庶民がどのような暮らしをしていたのかということが気になってこうした一連の本に関心を持った。 ...

坂野上の雲などで描かれる、日本人が世界の仲間入りをした時代、実はその主役は本当に一部のエリート階級だけの話であり、一般の庶民は何も知らずただ生きるだけで精一杯だったという。しかし、実際に庶民がどのような暮らしをしていたのかということが気になってこうした一連の本に関心を持った。 先ずは、読んで気が滅入る。最初の数十ページを読んで、思わず途中で止めようかと思いつつもなんとか読了する。 江戸時代以降の近代から戦前にかけての東京には70数カ所にもおよぶ貧民街があったという。そこには、木賃宿と呼ばれる雑魚寝の安宿があり、行商や日雇いの人々が集っていたらしい。その地域では、人々は残飯を漁り衛生状況も劣悪極まり無く、近親相姦なども日常茶飯事で猥雑な社会であった。現代の憲法で保証されている健康で文化的な生活などというものからは全くの別世界である。この他、様々な事例が描かれているが、女郎や酌婦といった職業に身を置かざるを得なかった女性達の悲哀の話は憂鬱であった。借金のカタや一家の口減らしの為に、自らの意思とは関係なくその世界に送り込まれ、只同然でこき使われ搾取されていく時代、またせい紡績工場で酷使される女性たち。国から支給される葬式代を目当てに養子にした子供を立て続けに殺す事件が多発したという話。知らない方が良かったような気にさせられる話が目白押しである。 作者はあとがきで述べているが、当時の社会保障予算の不足というような問題や啓蒙思想の未熟さという問題ではなく、根本にある人間感というものがあまりにも現代と異なっていたという事だろう。民主主義国家における法治世界の中で、資本主義という経済原理に基づいて設計されている社会がいかに理性的で大凡の社会的な問題の解決策になっていることがこれを読むと思い返される。 現代の格差社会云々の問題など、この時代に比べれば無に等しい。

Posted byブクログ

2018/08/25

2018年8月読了。 浅羽通明氏に嵌っていた時に何かの本で読み、それ以来の再読。 過酷な繊維産業の女工の労働実態を読むと、 またしても「人間は自分たちが考えているほど昔から変わらないことをやっている」という言葉を思い出す。

Posted byブクログ