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GAIA の商品レビュー

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3件のお客様レビュー

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2022/12/19

『ガイア理論』を提唱したラヴロック博士の3作目の著作。1993年当時の状況をもとに、地球との共存を訴える。 本書は写真やイラスト、図解や表などを多用した大判の書籍である。とはいえ、一般的な単行本だった前2作『地球生命圏』や『ガイアの時代』に比べてわかりやすくなったかというとそう...

『ガイア理論』を提唱したラヴロック博士の3作目の著作。1993年当時の状況をもとに、地球との共存を訴える。 本書は写真やイラスト、図解や表などを多用した大判の書籍である。とはいえ、一般的な単行本だった前2作『地球生命圏』や『ガイアの時代』に比べてわかりやすくなったかというとそうでもなく、化学などへの興味と知識がないと読みづらいのは変わらない。後年の著作である『ガイアの復讐』『ノヴァセン』なども読んできたが、主張するところの基本はいずれも同じだと思うし、サイエンスに弱い自分としてはそれ以上の情報は読み取れなかった。要は「このままじゃやばいぞ地球」という危機感であり、それに対しての私たちの生き方の変容を促す内容なのだと理解している。 本書の特徴のひとつとして、『利己的な遺伝子』で有名なリチャード・ドーキンス教授をはじめとした『ガイア理論』を批判する科学者たちへの明確な反論があげられるだろう。詳細は知らないが本理論は相当な批判をあびてきたらしいことがうかがえる。さらにオゾン論争において誤った方向に大衆が導かれたことに触れ、「科学者たちも人間であり、出世、年金、保身、近代生活の必需品について思い煩っているのだ。責任観念のとても薄い世界で、責任ある態度を貫くのは容易ではないのである」と、科学者自身への言及があるのも他の著作にはあまり見られなかった傾向かと思う。 もう一点特に印象に残ったのは「アトランティスの伝説」という項目(P194)。もとの伝説自体は有名だが、博士流のアレンジがなされていて、アトランティスを現代の世界になぞらえた語り口に生々しい危機感を感じた。フロンによる温室効果で温暖化が進行し、両極の氷河が溶けて海面上昇、科学者たちの警告を嘲笑と侮蔑で迎えた文明世界は水没してしまうという話は、現代の私たちの文明の行く先をそのまま描いているかのようなリアリティがある。 30年前に書かれた本作。当時の予言通り地球の環境は厳しい状況になるばかりだ。今年2022年、103歳で逝かれたラヴロック博士の残した“ガイア”という概念をもとに、これからの“人”のあり方を自分も模索していきたいと思っている。残された時間はあまりに少ないが……。

Posted byブクログ

2020/06/16

地球が想像もつかない何らかのエネルギーを使いながら、 存在しているという感覚は以前からあった。 「ガイア」。この世界にも興味を覚える。 ガイア関連の本も 読んでいくことにしよう。 〈本から〉 私たちが「生命とは何か?」と問う時、生物全般を思い浮かべる。もちろん、まず第一に哺乳動...

地球が想像もつかない何らかのエネルギーを使いながら、 存在しているという感覚は以前からあった。 「ガイア」。この世界にも興味を覚える。 ガイア関連の本も 読んでいくことにしよう。 〈本から〉 私たちが「生命とは何か?」と問う時、生物全般を思い浮かべる。もちろん、まず第一に哺乳動物だ。というのも、カエルはそれほど生きている感じがしないし、樹木や植物はさらにしない。知衣類、藻類、土壌バクテリアなどは全くもっていいほど生きている感じがしないからだ。地球を生きるシステムとする考え方に本能的に反対する者の多くは、動物中心主義が原因だ。私たち人間や動物を他の生物体より生き生きしていると考えてしまう傾向があるのだ。 ガイアは、物理学者や生化学者の定義にあっては生物体である。地球は間違いなく太陽エネルギーを使い、地球規模で一種の代謝を行っている。太陽光のような良質の自由エネルギーを取り入れ、地球の教会内でエントロピーを減らし、赤外線のような低級なエネルギーを宇宙に放出する。地球内部のインナー・スペースによって化学物質も変化させる。 (略)

Posted byブクログ

2009/10/04

昔から興味があったガイア理論の本をようやく読んだ。 ガイア理論は地球を一つの生命、 あるいは擬似生命として捉える論。 地球の環境的な仕組み一つ一つを 生物学・科学・化学など包括的な知識でまず解説しながら 地球全体がどういうシステムで 現在の状態を保っているかを読み解こうとしている...

昔から興味があったガイア理論の本をようやく読んだ。 ガイア理論は地球を一つの生命、 あるいは擬似生命として捉える論。 地球の環境的な仕組み一つ一つを 生物学・科学・化学など包括的な知識でまず解説しながら 地球全体がどういうシステムで 現在の状態を保っているかを読み解こうとしている。 例えば温室効果ガスだったりオゾン層破壊だったり 熱帯雨林の伐採だったりといった環境問題について 短期的な影響だけを見るのではなく 地球規模でどのような影響を及ぼすのかを提示している。 興味深いのは地球の特異性と自体の自己調整機能について。 酸素や水素が他の星にはほとんど存在しえないようなレベルで 長い期間維持されていることの特性を説明した上で それがどのようなシステムで調節されているのかの解説は 例えば海の藻類が放出する硫化ジメチルが 大気中で化学変化して雲を作る核になるだとか 熱帯雨林は水蒸気を発していてそこから雲が生成され 雲が太陽光を反射するから熱帯は熱くなり過ぎないのであって 熱帯雨林を伐採してしまったら雲が出来なくなって砂漠化するとか 化学式とかが難しくて分からないところが多い僕でも 文章の部分だけでとても面白く感じられた。 デージーワールドでのホメオスタシス(恒常性)の解説も 今まで僕が知っている範囲の生物学にはない内容で 単純化された理論だからこそ興味深かった。 この本を読んでいて浮かんだのが 「神の見えざる手」と「カオス理論」だった。 「神の見えざる手」は経済学者のアダム・スミスが提唱したもので 『個人による自分自身の利益の追求が、  その意図せざる結果として  社会公共の利益をはるかに有効に増進させる』 というもの。 地球の全てのものがそれぞれのために活動をすることで 結果として現在の生態系を確立して お互いが相互に関係しあって最大の利益を得ている状態が マーケットの「神の見えざる手」に似てるなと。 そういう意味で市場主義資本主義は 生物の本能に近い形なのかもしれないなと思った。 「カオス理論」は僕も詳しくは知らないけど ものすごく大雑把な言い方をすると 『複雑すぎると未来を予測できない』 という理論。 バタフライ・エフェクトなんかで有名なやつです。 「アマゾンを舞う1匹の蝶の羽ばたきが、  遠く離れたシカゴに大雨を降らせる」 とかそういうやつ。 人間は確かに科学・化学を発展させて いろんなことを細部まで分かるようになってきたけど それらが全体としてまとまった時に 一体どういう作用を及ぼすのかが まったくと言っていいほど研究されていないということ。 「世界のサブカルチャー化と越境者願望」という日記を 何年か前に書いたことがあるんやけど この時に感じてたものがここにもあったなぁと。 「木を見て森を見ず」なんていう分かりやすい警告があるのに どんどん細部ばかりを見るようになって 今では「葉を見て森を見ず」な状態になっているのではないかと。 もちろんカオス理論が示すように 全体を見ても全てを理解することは出来ないけど 全てを理解できないことを理解するからこそ この本にもあったように理由が分からなくても コレラやチフスの原因を経験主義で突き止めたように とりあえず明らかに疑われる要因を排除した上で 科学的な理由を後から解明することは可能だし 温室効果ガスを減らす努力は必要ではないかと思った。 あとは僕が常日頃からよく言ってる 「人類は地球の免疫作用を突破して過剰に増えてるから  地球にとっては癌細胞みたいなものだ」 という内容と近いことが書かれてて 人間を中心にして考えなければ当然たどり着く結論やけど 学者がこういう発言をしてるのは初めて見たので その辺りは親近感を持ったりした。 もちろん全て手放しで褒められるわけじゃなくて 偏りのある理論やから批判がたくさんあるのも分かる。 だけど何よりも読んでてがっかりだったのは 今までの受けたであろう批判に対して反論したいのが見え見えで 単にガイア理論を知りたいだけの人間にとって 鬱陶しくて読み難いだけの文章が散見されたこと。 図解とかも多くて分かりやすさに心を砕いてるんだから それがなかったらもっとよかったのになぁ。 でも今までに自分が考えてたいろんなことに繋がる部分もあったし かなり勉強になったり興味深い部分も多かったので 化学式とか化学物質とかをもうちょっと勉強したら また読んでみたいなぁ。

Posted byブクログ