攘夷 幕末世界(1) の商品レビュー
江戸末期の攘夷思想が蔓延した頃が舞台だが、世界観が普通ではない奇作。 現代からすると攘夷思想と無知からくる迷信、「夷狄は化物で人間ではない」「毛唐は人を食う」が実はすべて本当だった、という前提の世界になっている。 最初は恐恐だったが、実際につきあってみれば同じ人間、理解し合え...
江戸末期の攘夷思想が蔓延した頃が舞台だが、世界観が普通ではない奇作。 現代からすると攘夷思想と無知からくる迷信、「夷狄は化物で人間ではない」「毛唐は人を食う」が実はすべて本当だった、という前提の世界になっている。 最初は恐恐だったが、実際につきあってみれば同じ人間、理解し合えそうだと思った白人(夷狄)の先生が、庭先で入浴しているところをふと見てしまうと、実はその姿は見るもおぞましい化物。「夷狄の正体見たり!」と思わず切り殺してしまう主人公。「外国の先生を殺した」ということでお上に追求され、両親は切腹。逃亡する主人公の前に神様が現れる。これがまたマリア観音のような和洋折衷の土俗化したキリスト教的な神様デザイン。この神は主人公に「地球が球形であるのは間違っている」と説く。いわく、 「お前に世界の真の姿を見せよう。 太陽の真の姿は柱であり、どこまでもつづくらせんなのだ 人間は太陽を柱として正しくとらえる能力に欠けるため人間には見かけ上時間が生ずる! 時間は実在しない-このことを忘れるな」 とのこと。この見開きの(狂った)「真実の世界」シーンは圧巻。是非見て欲しい。 精神病院に入院している人が言い出しそうな理屈を、真実として映像化し、物語化したと言う異様な作品。当然キワモノ。白人を化け物扱いしたこの作品、よく出版できたものです。さすが秋田書店。 本屋には100%置いてないでしょうが、神田やブックオフなどでたまたま見つけたらぜひ読んで欲しいカルト作品です。
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