疾風のまつりごと(文庫版)(2) の商品レビュー
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1990年から1993年にかけて連載された作品。 70年代の、冴えまくっていた「ファラオの墓」「風と木の詩」「変奏曲」「地球へ…」、 80年代の、「私を月まで連れてって!」「イズァローン伝説」、 の後、 90年代の、「天馬の血族」「紅にほふ」の、さらに直前に発表された、比較的短めの連作短編集。文庫で全2巻。 ということを、少女漫画門外漢としては今まで知らなかったし、レビューも多くはない、おそらく地味な作品。 だが、なかなかいいな~、と思った。 一巻の導入部において、あれ、宮沢賢治「風の又三郎」かな、と思った。ノスタルジックという意味において。 と思いきや、連作という構成が判ったところで、あれ、萩尾望都「ポーの一族」じゃん、と(「一度きりの大泉の話」以後の読者としても)思ったし、志は無縁ではないだろう。 しかし戦後しばらくのぽっかりと空いた数年から十数年を、1950年生まれの作者は、自身の幼少期や、結構な文献や、たぶん取材や、を通じて、描こうとしたのだろう。性癖に任せた諸作より、むしろ志高い。 日渡早紀「ぼくの地球を守って」が1986~1994なので、当時のオカルティズム・スピリチュアルの流行に迎合した、という事情が、なくもないのではいかな……と思わなくもないが(まったくの推察です)。 「もはや戦後ではない」というフレーズを活かすために表現を積み上げることができたという点で、凄いな、と思えた。
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