桜宵 の商品レビュー
三軒茶屋 池尻大橋 付近に一ヶ月ほど住んでいたことがあるので 親しみと、その頃の記憶が蘇り身近に感じられる
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前回読んだのと同じ香菜里屋シリーズである。 香菜里屋というビアバーのマスターが、謎を解いていく物語。 常連客たちも皆そういう謎解きが好きな人々が集まっている。 『十五周年』 故郷を離れて東京でタクシー運転手をしている男性のもとに、 その故郷の居酒屋の十五周年祝賀会の招待状が届く...
前回読んだのと同じ香菜里屋シリーズである。 香菜里屋というビアバーのマスターが、謎を解いていく物語。 常連客たちも皆そういう謎解きが好きな人々が集まっている。 『十五周年』 故郷を離れて東京でタクシー運転手をしている男性のもとに、 その故郷の居酒屋の十五周年祝賀会の招待状が届く。 そしてその居酒屋のママに、昔に起きた火事の犯人探しを頼まれる。 なぜ招待状が届けられたのか? なぜ犯人探しを頼まれたのが自分だったのか? この謎は仕組まれたものであったが、解いた後には幸せが待っていた。 『桜宵』 一年前に病没した妻の手紙を見つけて、香菜里屋を訪れた刑事。 彼の肩には桜の花びらがついたままだった。 そして店で出された料理は、桜飯という名だった。 薄緑色の花を咲かせる御衣黄という桜。 刑事が御衣黄の花を知ったのは、五年ほど前のこと。 ある事件の関係者が、 その花の下にいるのを見たことがきっかけだった。 妻はなぜ香菜里屋を訪れるように手紙を書いたのか? 結末は私には納得いかなかった。 男の身勝手さが感じられる。 今まで男性の作家の本を避けていた理由を、改めて思い出した。 写真はhana300さんからお借りしました 『犬のお告げ』 社内恋愛をして同棲している男性はリストラの心配をしている。 人事部長が次のリストラ候補を選ぶためのホームパーティーに呼ばれたのだ。 そのパーティーには犬もいて、その犬が候補を選ぶという。 会社組織の厳しさが感じられた。 リストラ・失業・再就職・・・。 実力だけではどうにもならないものが存在している。 『旅人の真実』 金色のカクテルを捜し求めている男性。 彼はなぜ金色のカクテルを探しているのか? その男性はある日、殺人事件の被害者となる。 周りの誰に聞いても、優秀な人物だったとしか答えが返ってこない。 優秀ではあったが、 実は人に依存しなければ生きていけなかったのではないか? そして依存しすぎるあまり・・・。 でも、 人は誰でも依存しなくては生きていけないものなのではないだろうか。 依存の度合いが違うだけなのか。 『約束』 約束したね。 幸せも不幸せもともに分かち合おうと。・・・・・・そして十年経っても互いの思いに変わりがないなら、あの場所で再会しよう。・・・・・・ かつての常連客が開いている花巻の居酒屋を訪れたマスター。 そこにやってきたのは十年前の約束を忘れずにいた二人だった。 二人は学生時代に知り合ったが、卒業を前に別れてしまった。 出会いからの十年の間には、いろいろなことがあった。 幸せと不幸せは背中合わせなのだろうか? 女性の思い込みには、恐ろしいものがあった。 こういう考え方をしてしまったら、辛いだろうと思う。
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新玉川線の三軒茶屋駅前の商店街のアーケードをくぐり、通りを一本外した細い路地。 道が行き詰る手前にある、白い等身大の提灯を下げたビアバー「香菜里屋(かなりや)」。 度数の違うビールを常時4種類そろえ、客を唸らせる料理を出すこの店のマスター・工藤哲也を相手に、今日も常連客が謎を持ち...
新玉川線の三軒茶屋駅前の商店街のアーケードをくぐり、通りを一本外した細い路地。 道が行き詰る手前にある、白い等身大の提灯を下げたビアバー「香菜里屋(かなりや)」。 度数の違うビールを常時4種類そろえ、客を唸らせる料理を出すこの店のマスター・工藤哲也を相手に、今日も常連客が謎を持ち寄り推理合戦を繰り広げる・・・。 「十五周年」「桜宵」「犬のお告げ」「旅人の真実」「約束」の5編収録 またまた料理がとっても美味しそう~。 特に印象に残ったのは岩ガキのガーリックソースかけ。本気で食べてみたいです。 事件もまた、どれも切なくて真相に凄みがありました。 これだけの事柄の裏に、これほどの思惑が隠されているなんて。 ほんと、マスターの頭の中って一体!? この中では「犬のお告げ」の真相があまりにも皮肉で一番気に入りました。 あと「旅人の真実」もよかった。 「桜宵」の御衣黄という薄緑の桜にも驚き。 「十五周年」の日浦と夕海、「桜宵」の神埼守衛、「犬のお告げ」の石坂修と美野里、「旅人の真実」香月圭吾はシリーズの他の作品にも出てきそうですね。 覚えておこう。
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北森鴻の美味しそうシリーズ2。 ほんとは文体も謎のタイプも苦手な部類の作家だけど、雰囲気と美味しそうさで読んでしまう。
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連作短編第2弾。第1弾の登場人物たちに加え、新たな登場人物も加わり、1冊で短編と長編の両方を味わった感じだ。 返す返すも、作者が亡くなったことが惜しい。
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密やかな夜の香りがしますね。こういうふうな、バーで繰り広げられる物語というのは非常に好きなタイプで、いくつか読んだことがあるのだけど、たとえば森へ抜ける 道やスリーバレー(@鯨統一郎)はあまり夜の香りはしない(かといって、昼っぽいというわけでもないんだけどね)。EGG STAND...
密やかな夜の香りがしますね。こういうふうな、バーで繰り広げられる物語というのは非常に好きなタイプで、いくつか読んだことがあるのだけど、たとえば森へ抜ける 道やスリーバレー(@鯨統一郎)はあまり夜の香りはしない(かといって、昼っぽいというわけでもないんだけどね)。EGG STAND(@加納朋子)は、夜だけど、もうちょっと明るい(雰囲気が)感じかなあ。香菜里屋がいちばん静かでゆったりとして、密やかな夜という雰囲気。まさにそこは、工藤が作った小宇宙だと思います。 そのわりに、工藤の存在感のなさって…。主張しないから、なのかな。背景に溶け込んでる感じですよね。やはり、彼が香菜里屋という世界を構築する一部だからなんでしょうか。 話はというと。 初め、変化球なほのぼのから入ったので、そんな感じかといくかと思いきや、かなりダークな感じに。 いろいろ推理小説を(それほどの量じゃないにしろ)読んできたけど、結局のところ一番恐いのは人の闇か、という気がいたします。最後の話なんか、恐すぎ。
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「花の下にて春死なむ」に続く香菜里屋シリーズ第二弾。美味しそうな料理も相変わらず登場(笑)。 今回は、前回に比べると「連作」度は薄め。それでも各話の質は高いと思う。中では表題作「桜宵」と「約束」がかなり好き。特に「約束」は、「安易に立ち入ってはいけない領域」の恐ろしさ、しかしそれ...
「花の下にて春死なむ」に続く香菜里屋シリーズ第二弾。美味しそうな料理も相変わらず登場(笑)。 今回は、前回に比べると「連作」度は薄め。それでも各話の質は高いと思う。中では表題作「桜宵」と「約束」がかなり好き。特に「約束」は、「安易に立ち入ってはいけない領域」の恐ろしさ、しかしそれをあくまでも「憶測」にとどめているもどかしさ、が見事だと思う。ただ、これがラストというのは、少しばかり読後感が重くなったけれど。
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“香菜里屋”シリーズ第2弾。 前作同様、店主の工藤がほぼ店に居ながらにして、難問解決。 度数の違うビールに合わせた、四季折々の素材を生かした絶品料理が今回もとても美味しそうだった。あまりに料理が美味しそうで読んでいるうちに、自らの空腹に耐えられなくなって冷蔵庫を漁ってしまった...
“香菜里屋”シリーズ第2弾。 前作同様、店主の工藤がほぼ店に居ながらにして、難問解決。 度数の違うビールに合わせた、四季折々の素材を生かした絶品料理が今回もとても美味しそうだった。あまりに料理が美味しそうで読んでいるうちに、自らの空腹に耐えられなくなって冷蔵庫を漁ってしまったくらい・・ これまで読んだ作品の中でも、1,2を争うくらいに料理の描写が素晴らしい。お料理や酒を供するタイミングはベストだし、こんなお店があったら間違いなく足しげく通ってしまうだろう。旬のもの、時価のものばかりで、相当飲み代は高くつきそうだが。 美味しそうな料理とは裏腹に、話自体は人間の業や悲哀、嫉妬など嫌な面もあってやりきれない事件が多かった。 それと前作から思っていたのだが、若い女性と初老の男性のカップルの恋愛話がお好きなようで今回も登場したが、描写や設定がちょっと昭和な感じで古臭く、使い古されたエピソード感が否めない。 個人的にそのくだりだけは興ざめしてしまうのが残念。
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ビア・バー「香菜里屋」は、4種類のアルコール度数の違うビールと旨い酒肴、居心地のいい雰囲気で客をもてなす店。今宵も店に持ち込まれた謎がバーテンダーによって解き明かされる…。この店のバーテンダー・工藤が客の話から不可思議なことの真相を憶測する、一種の安楽椅子探偵ものでシリーズ2作目...
ビア・バー「香菜里屋」は、4種類のアルコール度数の違うビールと旨い酒肴、居心地のいい雰囲気で客をもてなす店。今宵も店に持ち込まれた謎がバーテンダーによって解き明かされる…。この店のバーテンダー・工藤が客の話から不可思議なことの真相を憶測する、一種の安楽椅子探偵ものでシリーズ2作目。「15周年」上京してタクシー運転手を勤める男が偶然故郷の女性と再会。地元で開く記念パーティーに出席してほしいと誘われるが、会場で妙な違和感を感じた。それだけのためにそんな大胆な芝居を・・・ちょっと理解できないけど、当人がよければ結果良し。「桜宵」御衣黄という、薄緑色の珍しい桜の花にまつわる男女の色恋話。ソメイヨシノと花の咲く時期が違うことがもたらす様々な余波。最後の工藤の采配が吉と出るか凶と出るか。「犬のお告げ」会社で囁かれている「悪魔のリストランテ」は、人員削減を担当する人事部長が招待しリストラ対象者を決定しているいう噂。愛犬を「お告げ」役に見立てること自体ひどく歪んだやり方だが、真相はもっと歪んでいてやりきれない。「旅人の真実」金色のカクテルを求めてぶらりと立ち寄った一人の客。刺々しい態度に香菜里屋常連客たちは眉をひそめる。男が金色のカクテルを探してバーを渡り歩く理由とは…?「プロフェッショナル・バー香月」(凄い自信家)がいい味だしていて香月主役の別の話が作れそうな工藤とは違った魅力のあるバーマンが登場。「約束」香菜里屋・花巻出張編。10年ぶりに会う約束を果たした一組の男女。一人は作家として最近売り出し中の男。女は工藤の絶品料理になぜか香辛料をたっぷり入れ…。これには参った。だってほとんどがモノローグで話が進み、男女の会話はほとんどないはずなのに、なぜか工藤は怪しい気配に気づいてしまうから。どの話もピリ辛〜大辛の味付けで◎。できれば毎晩おいしいお酒とともに1話ずつつまみ読みするのがいいのかもしれない(やっぱり一気読みしてしまったけど)。香菜里屋のような居心地のよい癒しはほとんどないといっていいくらい、どの話にも思わず眼を背けたくなるような辛辣な現実が見え隠れしている。直接殺人事件に接するわけではないが、奥に潜む人間の歪んだ心情が空恐ろしい。その怖さと香菜里屋の雰囲気の良さが絶妙にマッチしていていいのだけれど。
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ビアバー「香菜里屋」に集まる客たちの不思議な体験の謎をマスターの工藤が解いていく、5つの物語からなる短編集。 どれも私好みの雰囲気のお話だったけど、「犬のお告げ」が中でも好き。『花の下にて春死なむ』の七緒さんも登場します。 装丁がすごく綺麗で、タイトルからもわかるように春の匂いが...
ビアバー「香菜里屋」に集まる客たちの不思議な体験の謎をマスターの工藤が解いていく、5つの物語からなる短編集。 どれも私好みの雰囲気のお話だったけど、「犬のお告げ」が中でも好き。『花の下にて春死なむ』の七緒さんも登場します。 装丁がすごく綺麗で、タイトルからもわかるように春の匂いがぷんぷんするお話ばかりなので、桜の時期に読みたかった。残念。
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