李歐 の商品レビュー
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母から棺桶に入れてくれ、やっぱ勿体無いからあんたにあげると言われてる本。 高村先生初読でした。1行目からスッと入って引き込まれる。描写が細かく難しいので人物を追う感じ。 田丸が一彰に言った「お前は水銀灯やな、男も女も、犯罪すらも引き寄せる」(意訳)の部分で田丸、絶対に手帳に詩を書き溜めてるやつじゃん〜!!って思った大好きなセリフ。 いまいち自分にも他人にも興味が持てなかった一彰が、守山とともに桜の下で最後の花見をするところが印象的で好き。よかったねって涙出た。 美しい殺し屋とか好きでしかない。 一彰、あらすじでは平凡とか書かれてるけど上澄みの上澄みじゃない?と思ったが、李歐がいるからか。 李歐と一彰の魂の結びつきが書かれているブロマンス。 壮大なストーリー、桜の印象的な美しさに本を閉じて静かに涙が溢れた。
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主人公の半生を描いた作品。 この時代に、こんなこともあったのかな?と思いながら、主人公や周りの人達の、考え方や感じ方は、全然わからなかった。 わからないけど、わかるような感じで読み進めていた。自分とは全く違うから、刺激もあるし、面白いと思えるのかな? 最後は、ハッピーエンドなのか、バッドエンドなのか、これがビターエンドと言うやつなのか。 ちょっとつらいね。
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2022.5.5 読了 一彰が生きたのは高村薫が生きた時代そのものだったのだろうな 戦後の混沌とした世界で持たざる者が容赦なく搾取される社会 その中で一彰の希望となったのが李歐だった 物語はアジアの犯罪組織の抗争や麻薬・拳銃密売、共産主義と民主主義の覇権争いに暗躍するスパイ等...
2022.5.5 読了 一彰が生きたのは高村薫が生きた時代そのものだったのだろうな 戦後の混沌とした世界で持たざる者が容赦なく搾取される社会 その中で一彰の希望となったのが李歐だった 物語はアジアの犯罪組織の抗争や麻薬・拳銃密売、共産主義と民主主義の覇権争いに暗躍するスパイ等々…かなり血生臭い話なのだけれど物語の視点となる一彰のどこか他人事のような一切の感情に蓋をしているような生き方故に淡々と読ませる ずっと一彰はどうしてそこまで李歐に惹かれるのかわりと疑問に感じながら読んでいたのだけれど終わりがけに田丸が語った守山の言葉「希望のカラ売りや」のくだりでストンと腑に落ちた気がする 一彰と李歐の間に恋愛のような感情があるのかというと少し違う気がするし友情よりはもっと濃密ななにか 魂が惹きあう…そんなイメージかな そういうなんともいえない男同士の繋がりを描くの高村薫は上手いなと思う
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初めての長編ハードボイルド小説. hardboiled=固茹で卵の黄身のように流れない恐怖や喜びの感情に流されず精神・肉体に強靭な主人公の小説 暴力反道徳的な内容を批判を加えず客観的、簡潔に描写する手法・文体…. 読み終えて調べたが、そのとおりの説明だなぁと. しかし、この話はハードボイルドだけでない物語の濃さがあるように 思う. 主人公一影の六歳から三十八歳の間の出来事が李歌を軸にして描かれていたため、一人の男性の半生を垣間見たような錯覚を覚えた. 序盤は工場や機器のことが 長い文章で書かれていたため、退屈だと思っていたが、次第に 他者から語られる李歐が所々に存在する為、二十二歳から 三十八歳までの十五年間一度も会っていないのにも関わらず、一彰と李歐はずっと繋がりつづけている様子に引き込まれていった.月並みな言い方で言えば運命の人なんだろうが、「理由もなく理屈もなく繋がりつづける人間関係って、きっとあるよね」と思わせてくれた作品. 情交や婚姻だけが強い人との繋がりではないないなと思う 長い夢を見ている様な物語だった
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専門用語が多すぎるし、中国の歴史に疎いのもあって、調べることから始まり、思いのほか時間がかかった。 李歐が、あまり出てこない。物足りなさが…。 李歐の、「死ぬときは死ぬ、殺すか殺されるか」残忍さと聡明さのバランスは、よかった。 主人公の、後先のことは先送りにする性格と、嘘の数々。重力に沈み、大部分は泥に沈んでもなお沈み続け、底はどこなのか、不安定な性格を楽しんでいるのか、ただ落ちていくだけなのか、つかみどころがない感じ。 年齢と共に、抱えるもの、捨てられないものが増えて、求めるものが、すぐそばまであるのに触れられないもどかしさ。それでも「恋しい」という思いにたどり着くと、全てはそれだけが大事となり抗えない運命を背負う。 もっと二人の物語を読みたかった。
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機械や銃の縷縷とした説明が多く専門的で、時代背景に沿った話の展開のされ方も面白かった。 二十二歳で出会った2人が十五年間お互いの心に根を張って、夢を見たが故の悪いこともあったろうけど、最後に2人が希求した幸福があって本当に良かったと思う。 また読み返したい作品になった。
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完読しましたが、他の作品と比べても段違いの登場人物の心情描写はリアリティー溢れ、人間らしさがある、スリルあるものだったと思います。ただ、歴史的背景がとても絡んでくるということもあり、ある程度の中国や朝鮮半島、日本の戦争等の知識がないとこんがらがってしまいます。そして、この物語の主軸の時代が戦後であることもあり、古いニュアンスなどもありました。何度も読みたくなる作品でした。
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夏は高村薫が読みたくなるという法則があり、これは未読のため購入。本作は元々書かれた「我が手に拳銃を」という作品を大幅に加筆・修正したもの。加筆が多い作家だけど、タイトルまで変えるのはめずらしいね。 物語のスケールは大きい。香港のシンジケートあり、フィリピンの反政府ゲリラあり、天安...
夏は高村薫が読みたくなるという法則があり、これは未読のため購入。本作は元々書かれた「我が手に拳銃を」という作品を大幅に加筆・修正したもの。加筆が多い作家だけど、タイトルまで変えるのはめずらしいね。 物語のスケールは大きい。香港のシンジケートあり、フィリピンの反政府ゲリラあり、天安門事件ありとかなりの重厚さであるが、それに比して内容は薄い、と言わざるを得ない。相変わらずの硬質な文体と、過剰なほど食い込んでいく登場人物の内面描写は圧巻であるが、なんだろう、、、素材は豪華なんだけど出てきた料理は大したことないという感じか。唐突に登場人物が複雑な世界情勢や政治背景について語り始めるのだが、そのあたりにどうしても無理やり感が出てしまってるように感じられる。それによりその部分が浮き上がって見えてしまい、結果作品全体のバランスが崩れてしまっているように思う。 主人公がなぜそこまで危ない橋を渡るのか、拳銃になぜそこまで偏愛を持つのかあまり理解できなかった。 李歐に惚れているからで済まされるのか、、、、ボーイズラブもまあいいんだけど、主人公が他の女性と重ねる情交(けっこうな回数)のシーンにおける、会話や行動の古臭い描写はやはり違和感として感じられる(これは他の作品についてもいえる)。 あと一番おかしかったのが、勤務先の隣にある教会のスウェーデン人牧師である。記憶喪失だったのが突然記憶が蘇って手紙を送ってくる。その内容が物語の進行に関する重大な要素を含んでいるというご都合主義には目をつむったとしても、手紙の文章がもはや明治の文豪かというくらい格式高いのは違和感を通り超して笑ってしまった。そんなあほな、、、、 結論としては、高村薫の書く文章が好きな人なら楽しめるが、それ以外の人は微妙かな、と思いました。
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長かった、、主人公は終始オシャレな中二病だったし、リオウはなかなか出て来なかった。 本当は長々と感想を書いてたけど、アプリ閉じたら全部飛んだつらたん。140字のTwitterでさえ下書き保存あるのに!
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『文藝春秋』2019年1月号で、手嶋龍一氏が「平成の名著」として薦めていたのを思い出して読んでみた。 「高村薫は『李歐』という物語を借りて「中国の世紀」への胎動を雄渾な筆致で描きあげた」 奥付には、1992年3月刊行の『わが手に拳銃を』を下敷きに書き下ろした、とある。 1992年では、まだまだ「中国の世紀」へは程遠く、天安門事件(1989)の記憶も新しく、歴史大国中国への憧れを徐々に失いつつあった頃ではなかったか。今読めば、手嶋の言うように、“胎動”なのかもしれないが、著者が本作品で語りたかったのは、戦後の日本と中国、東南アジアの関係ではなかろうか。 「日本の敗戦で解放された朝鮮半島や中国、東南アジアがその後ずっと、民族独立という大義と美名の下で東西冷戦の草刈り場であり続けてきた事実は、一彰にとってはたんなる知識や情報ではない、生身の人間の話だった。16年前、守山工場でのどを鳴らしてパンソリを唄い、太極道の型を教えてくれた金正義や朴和善といった男たちの話であり、あるとき工場の母屋の二階にいた黄文礼といった男たちの話だった。」 小説の主人公たちの個人の歴史を辿り、それぞれの人生を彩る数多の出来事の集積が、歴史となって大きな流れを生み出しているのかもしれないと思わせるほど、本作品で描かれる登場人物の、中身の濃い生き様が、実に生々しい。 『The Human Tide』の著者ポール・モーランド教授はこう語る。 「かつて歴史学者の間では、歴史は「偉大なる人物」がつくるものだという声もあった。これらの考え方はどれも十分ではないし、歴史を完全に説明できるものではない。長い時間と広い空間における人間の相互関係は、大きく複雑すぎて一つの理論にまとめられるものではない。」 歴史に翻弄されたとひと言で片付けるのは容易すぎる。時代を生き抜いたそれぞれが、歴史に爪痕を残しているのだ。 決して、歴史から浮いた存在ではないというかのように、著者は、頻繁に“重さ”を表現していた。まだ海のものとも山のものとも知れない若かりし頃の主人公は、 「一彰は、朝に目覚めたときと同じ、重力しかない何者かであり」 と表現し、人生の転機を迎える瞬間を、 「鋼の塊一つの重力の下で、自分のこれまでの人生が突然ぐいとへさきの方向を変えていくような感じを覚え」 さらなる飛躍の時には、 「とうてい先々の明るさの片鱗も見えないものだったが、それでもなお、この重力の軽さはいくらか感動的だった。」 と記す。人生の一本調子にはいかない。 「一彰は、地球の裏側まで沈み込んでいくような質量を感じながら」 と、浮沈を繰り返しながら、生を全うしようと足掻く。 数多の人生が交錯する70年代、80年代の大阪を舞台に、あくまで人が、歴史を織りなしていくと描く。運命にも、著者は人を象っている表現には、ゾクゾクした。 「自分が今相対しているのは、まさに人の姿をした運命だという気がした。人は人でも、天秤を手にした美女でなく、拳銃を手にした醜悪な六十過ぎの悪党が、その姿だった。」 主人公の一彰や、その周辺を執拗に追い続ける刑事の田丸は「そういう時代やった」と切り捨てる。昭和、平成と自ら駆け抜けてきた時代も、いかなる時代であったか? それこそ、一括りでは語れないという思いが、本書の読むとヒシヒシと伝わってくるのだった。 「戦争が終わっても、植民地が独立しても、民主主義だの共産主義だのというて、どれだけの人間が希望の前売り券を自分の命で買うてきたか、いうことや。それでもその日は来ない。いつまで待っても、希望のカラ売りや。そういう時代やった。」 今の時代も、「希望の前売り券」を買わされていないか? ご用心ご用心。
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