アメリカ残酷物語 の商品レビュー
まさに残酷物語だ。何か今のアメリカ犯罪映画やドラマでいともたやすく人が銃やナイフで殺し殺される原型を見るような感じだ。ただここで殺されるのは名もなき小さな存在で、必死に劣悪な環境で生き延びようとしている男たち。そこに悲哀がある。訳者あとがきでは、数ある短編のなかでとりわけ落ちをき...
まさに残酷物語だ。何か今のアメリカ犯罪映画やドラマでいともたやすく人が銃やナイフで殺し殺される原型を見るような感じだ。ただここで殺されるのは名もなき小さな存在で、必死に劣悪な環境で生き延びようとしている男たち。そこに悲哀がある。訳者あとがきでは、数ある短編のなかでとりわけ落ちをきかせた作品を扱ってみた、とあるが、ストレートに殺しに走る話は救いが無い。ロンドンがアラスカやアメリカを放浪した時の経験が原型なのか。 本の紙が厚くて、ページをめくりやすく読みやすかった。物理的な紙のなかに物語世界を感じた。 「まん丸顔」と「豹使いの男の話」は気に食わないヤツをとことん追い詰める話。手管は陰険だ。 「光と影」「ただの肉」は相対する男二人の緊張した関係。これは同等の二人の自爆ものなので、この短編集の中では、やるせなさ感は無い。 「恥さらし」は長旅の果てに極北に流れ着いたポーランド生まれの男。都会を夢見つつも原住民に囚われの身に。死に際を男は考えた。 「支那人」これはもう、あんまりではないか。タヒチ島の綿花園に安い労働力として連れてこられた多くの中国人。それでも中国で貧農にあえぐよりは現金が得られるとの考えでやってきた。だがある殺人の容疑者として”そこにいた者”が捕えられた。一字違いで死刑の者と間違えられた男。フランス人はちょっと逡巡はしたが、「どうせ支那人だし」 「ヤァ!ヤァ!ヤァ!」これも「支那人」と同じ南方メラネシアの島の話。現地人はいかにして1人のイギリス人にひれ伏すようになったのか。・・西欧諸国の植民地支配の暗黒を書く。 「まん丸顔」(Moon-Face Argonaunt.Vol.51:1902.2.21号) 「影と光」(The Shadow and the Flash:The Bookman.Vol.17:1903.2月号) 「豹使いの男の話」(The Leopard Man's Story Frank Leslie's Popular Monthly.Vol.50:1903.8月号) 「ただの肉」("Just Meat" Cosmopolitan Magagine.Vol.42:1907.3月号) 「恥さらし」Lost Face The New York Herald:1908.12.13日号) 「支那人(シナーゴウ)」The Chinago Harper's Monthly Magagine.Vol.119:1909.6月号) 「ヤァ!ヤァ!ヤァ!」”Yah! Yah! Yah!" Columbian Magagine.Vol.3:1910.12月号) 1999.2.20初版第1刷 図書館
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