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貨幣論 の商品レビュー

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31件のお客様レビュー

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2020/12/29

貨幣が貨幣として通用するとは。 貨幣それ自身に価値かあるわけではなく、商品流通のための潤滑剤的役割。 しかし、人々が貨幣を主人公に祭り上げたとき、インフレが起こり、更に貨幣に熱狂し、最高潮に達したとき、ハッと我に帰る。これは、なんなのか。ハイパーインフレーションか目前だ。

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2019/07/02

 貨幣と哲学。一見無関係のようにも思われる両者だが、決してそうではないことを本書によって思い知らされた。  貨幣とは何か。その起源がそもそもはっきりしないことを明示した上で、岩井はまず貨幣そのものには価値がないことを確認する。確かに貨幣をいくら貯め込んだところで、使わないことには...

 貨幣と哲学。一見無関係のようにも思われる両者だが、決してそうではないことを本書によって思い知らされた。  貨幣とは何か。その起源がそもそもはっきりしないことを明示した上で、岩井はまず貨幣そのものには価値がないことを確認する。確かに貨幣をいくら貯め込んだところで、使わないことには意味がない。貨幣は使うことによって、すなわち交換することによって初めて価値を付与される。ではなぜ何の価値もないはずの貨幣が交換されるのか? なぜわれわれは何の価値もない貨幣を受け取るのか?  岩井は答える。われわれが貨幣を受け取るのは、将来それを(商品と引き換えに)受け取ってくれる他者が必ずあらわれるはずだと信じているからだ。すなわち貨幣の根拠は未来への信憑にある。逆に言えば未来への信憑にしかない。しかしその信憑はそれほど絶対的なものだろうか。  商品には価値があり、貨幣には価値がない。貨幣の価値は、商品と交換できるという限りにおいての、いわばヴァーチャルな価値でしかない。そのことに人々が気づき、貨幣を捨て商品を取るという選択がいっせいになされたならば、すなわち貨幣信仰が崩壊し、貨幣の価値が限りなくゼロに近づいたとき、いかなる事態を招来するだろうか。  世界的な不景気が叫ばれて久しい。しかしだれもがお金を使おうとしない現状は、貨幣信仰が安泰であること以外の何物でもない。本当にこわいのはその逆のケースなのだと岩井は説く。「貨幣と商品の関係は言語と事物の関係にほぼ等しい」というあとがきも含め、哲学的刺激に満ちた貨幣論の名著である。

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2018/10/21

岩井克人『貨幣論』。マルクスの『資本論』への批評を足掛りにして、貨幣とは何なのかを考察する。貨幣について、またそこから、売買することについて、とても多くの洞察を示唆してくれた。経済の高度な概念はでてこないので、経済ってよくわからないけど、お金について考えてみたいひとに超おすすめ。...

岩井克人『貨幣論』。マルクスの『資本論』への批評を足掛りにして、貨幣とは何なのかを考察する。貨幣について、またそこから、売買することについて、とても多くの洞察を示唆してくれた。経済の高度な概念はでてこないので、経済ってよくわからないけど、お金について考えてみたいひとに超おすすめ。 読んでて気になった点として、1)芝居がかった大仰な言い回しが多いのでたまーに鼻につく、2)最初はがっつり『資本論』そのほかマルクスの引用がたくさんでてくるので貨幣の本なのか不安になる、というところか。ぼくは、後半の恐慌論・危機論あたりの理解が甘い気がするので、また読み返したいところ。

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2017/05/17

北さんからの推薦本。 推薦されなければ読まなかったはず。 経済学に全く疎いにも関わらず、意外にも面白い。 結局、「貨幣とは何か?」の問いの答えは「貨幣とは貨幣として使われるものである」 「商品」でもなければ、何者かによって恣意的要因でもたらされた「制度」でもない。 循環論法によっ...

北さんからの推薦本。 推薦されなければ読まなかったはず。 経済学に全く疎いにも関わらず、意外にも面白い。 結局、「貨幣とは何か?」の問いの答えは「貨幣とは貨幣として使われるものである」 「商品」でもなければ、何者かによって恣意的要因でもたらされた「制度」でもない。 循環論法によって自然発生的に存在したもの。いわゆる「奇蹟」である。 作者が述べている、貨幣であるための存在規定「未来永劫貨幣として信用される日々」が、覆る日(最後の審判)が訪れて、資本主義の終焉が訪れることはあり得るのだろうか? 本書が書き上げられてから24年。 今ではあり得ないことではないきがしてならない。 それにしても、商品世界に対する貨幣とは、人間世界に対する言語である。 との考察は非常に面白く、分かりやすい。

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2017/02/28

繰り返しの中で 貨幣は死を迎える。 それは資本主義の死。 貨幣論の本質は、 資本主義の危機は 恐慌ではなく、 ハイパーインフレーションだということだ。 マルクスの貨幣論に始まり、 貨幣について、論じられた本書は 膨大な繰り返しをあえて使う。 それは貨幣のあり方に似て。 貨幣...

繰り返しの中で 貨幣は死を迎える。 それは資本主義の死。 貨幣論の本質は、 資本主義の危機は 恐慌ではなく、 ハイパーインフレーションだということだ。 マルクスの貨幣論に始まり、 貨幣について、論じられた本書は 膨大な繰り返しをあえて使う。 それは貨幣のあり方に似て。 貨幣を語ることは、 現在、唯一の体制である資本主義を語ることで 貨幣の危機は、資本主義の危機だ。 単一の価値となりつつある貨幣は だからこそ、ハイパーインフレーションによって その価値を失う、という危機をもつ。 貨幣は言語である、という指摘も印象的だった。

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2016/03/10

本書の考察は、マルクスの『資本論』における労働価値説と価値形態論との関係をめぐる考察から始められます。著者によれば、マルクスは労働価値を超歴史的な「実体」として理解する一方、超歴史的な価値の「実体」がどのようにして交換価値という「形態」を取るようになるかという問題について考察をお...

本書の考察は、マルクスの『資本論』における労働価値説と価値形態論との関係をめぐる考察から始められます。著者によれば、マルクスは労働価値を超歴史的な「実体」として理解する一方、超歴史的な価値の「実体」がどのようにして交換価値という「形態」を取るようになるかという問題について考察をおこなっているとされます。この両者の関係には、労働価値説を前提として商品世界の貨幣形態を導く一方で、商品世界のか兵形態を通して労働価値説を実証するという循環論法に陥っているという批判がなされますが、著者はこれを「生きられた循環論法」として捉えることによって、貨幣についてさらに深い洞察を展開しようと試みます。 貨幣は、みずからの存在根拠をみずからで作り出すという無限の「循環論法」によって、絶え間なく自己を吊り支えていると著者は考えています。こうした観点から、貨幣の外部に、それを基礎づける何らかの根拠を想定する貨幣の起源に関する説を論駁します。たとえば、貨幣商品説は人間の主観的な欲望によって貨幣を根拠づけ、貨幣法制説は高官家庭の外部に存在する人為的な権威によって貨幣を根拠づけます。しかし著者によれば、貨幣はいったんその循環論法が作動し始めてしまえば、その存在に関して実体的な根拠を必要とすることなく流通します。こうして著者は、「貨幣とは何か?」という問いに対して、「貨幣とは貨幣として使われるものである」と答えるほかないと言います。さらに著者は、こうした貨幣の流通が交換可能性を未来へと繰り延べることによって成立しているという議論へと踏み込んでいます。他方で著者は、貨幣の運動が実体的な根拠を持たないということから、ヴィクセルの『利子と物価』における不均衡累積過程に関する議論を参照しつつ、ハイパー・インフレーションのような危機に陥る可能性の存在を論じています。 なお、本書の「後記」には、本書の貨幣論が後記ウィトゲンシュタインの言語ゲーム論と対応していることを指摘していますが、この問題をめぐっては、柄谷行人の『マルクスその可能性の中心』や、『内省と遡行』に収められた論文「言語・数・貨幣」で、これと同じ趣意の議論が展開されています。

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2016/03/01

なんだかとっても当たり前のことをわざわざ小難しく言っているだけのような気がする。 それにしてもマルクス経済学といった学問でもなんでもないものがどうして流行ったのか理解できない。

Posted byブクログ

2016/02/15

マルクスを主に引用し、貨幣の循環論法を基本線として話しが進められる。恐慌論、危機論ともに貨幣の循環論法に起因している。思想をめぐるというもので確たる結論が用意されてるわけではないが、とても読み応えがある。

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2015/02/06

マルクスの考えに沿って貨幣の本質を問い直す。 前半部分はマルクスの思考方法が抽象的で理解が難しかった。 貨幣は貨幣とされるから貨幣になる、それはそうなのだけれど、マルクスに限らず昔の哲学者は本質論を展開して物事を捉えきれてないような気がする。貨幣を論じているのに、信用創造や金融...

マルクスの考えに沿って貨幣の本質を問い直す。 前半部分はマルクスの思考方法が抽象的で理解が難しかった。 貨幣は貨幣とされるから貨幣になる、それはそうなのだけれど、マルクスに限らず昔の哲学者は本質論を展開して物事を捉えきれてないような気がする。貨幣を論じているのに、信用創造や金融機関のバランスシートを語らないのでは、議論の幅に限界が生じるのは当然だろう。

Posted byブクログ

2014/06/06

貨幣は貨幣として使われると貨幣になるというトートロジーこそが貨幣の本質であるという本。要素ではなく関係性に注目するのは論理哲学や構造主義っぽい感じもする。

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