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貨幣論 の商品レビュー

3.7

31件のお客様レビュー

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経済学を学んでいる人…

経済学を学んでいる人は、その知的世界に圧倒される。

文庫OFF

わかりやすく丹念な文…

わかりやすく丹念な文章で論を固めていくので、大変読みやすく、参考になる。

文庫OFF

2024/06/07

貨幣とは何か? この問いの深淵さ、「意地の悪さ」に初めて気がついたのはマルクスだ。 マルクスは貨幣を「形而上学的な奇妙さに満ち満ちたもの」と呼んでいる。 貨幣を当たり前だと思わずに、そこに形而上学を見出したことこそマルクスの天才だ。 貨幣を形而上学的謎として解くためには、マルクス...

貨幣とは何か? この問いの深淵さ、「意地の悪さ」に初めて気がついたのはマルクスだ。 マルクスは貨幣を「形而上学的な奇妙さに満ち満ちたもの」と呼んでいる。 貨幣を当たり前だと思わずに、そこに形而上学を見出したことこそマルクスの天才だ。 貨幣を形而上学的謎として解くためには、マルクスの「資本論」、特にその「価値形態論」を抜きにしては、アプローチする出来ない。 と、言うことで、岩井克人は、マルクスの「資本論」を自家薬籠中のものとして、縦横に活用する。 本書は、岩井克人によるマルクス「資本論」の独創的読解だ。 さわりの一章だけをざっと見るとこんな感じだ。 第一章 価値形態論 資本論の要である「価値形態論」と「交換過程論」から貨幣登場のメカニズムを炙り出す。 貨幣は貨幣として流通してしているから貨幣なのだ。 このトートロジーこそが謎の根源だ。 神の成立と同じメカニズムに基づく社会現象だ。 したがって、マルクスの「価値形態論」は、貨幣論に留まらず、神の発生論でもあり、更には、言語の発生論、国家の発生論でもあるのだ。 経済学、宗教岳、言語学、政治学の根幹に存在する形而上学的謎を、トートロジーとして「価値形態論」として抉り出して見せたのだ。 そして、価値形態が生まれてくる(つまり、貨幣が、神が、言語が、国家が生まれてくる)メカニズムを「交換過程」と言う動的な相で捉えてみせるのだ。 そして、貨幣が神となった特殊な資本主義社会的は、トートロジーの行き着く先、ハイパー•インフレーションという危機を招くと予言する。 トートロジーには実体はない。 実体の無い虚空から生じた「剰余価値」は、実体のなかった虚空の宇宙に生じた物質のようだ。 この「奇跡」が、実体があるかのように振る舞う貨幣を生み出した。 他人が貨幣として受け取るから、他人が貨幣として信ずるから、貨幣として機能するのだ。 そして、剰余価値は剰余価値を生み出し続けて、巨大な価値のハイパー•インフレーションを作り出すのだ。 こうして、貨幣商品説も貨幣法制説も葬り去る。 本書を十分に理解するためには、難しいマルクス「資本論」を理解しておくことが望ましい。 そのための最良のガイドが、柄谷行人の「マルクスその可能性の中心」だ。 第二章 交換過程論 第三章 貨幣系譜論 第四章 恐慌論 第五章 危機論  と続く。

Posted byブクログ

2024/03/05

ある人が「貨幣に対する理解に役立った」と言っていたのを聞き、読んでみましたが、個人的には、あまり得るものがありませんでした。 「貨幣が貨幣であるのは、人々がそれを貨幣とみなしているからである」というトートロジー的な説明をひたすら繰り返しているだけに見え、果たして200ページも使...

ある人が「貨幣に対する理解に役立った」と言っていたのを聞き、読んでみましたが、個人的には、あまり得るものがありませんでした。 「貨幣が貨幣であるのは、人々がそれを貨幣とみなしているからである」というトートロジー的な説明をひたすら繰り返しているだけに見え、果たして200ページも使う必要があったのか、謎です。 50ページもあれば、十分な内容な気がします。 ページ数が膨らんだのは、雑誌の連載だったのが原因ではないかと。 雑誌の連載であれば、やたらと同じような内容が出てくるのも納得。 貨幣の出現や歴史について知りたくて読んだのですが、その点においては得るものがなかったので、他の本にあたってみます。 投稿に関しては利用規約およびプライバシーポリシーをご確認ください。利用規約の禁止事項や免責事項

Posted byブクログ

2024/01/09

岩井克人の文章は比較的わかりやすいというのが従来の印象だが、この『貨幣論』は難しくて理解の突破口となる「引っかかるところ」がないまま最後まで読み進んだ。マルクス理論独特の難解で抽象度の高い論理展開で、纏めるのには相当大変だろうが諦めずに、ここから再々度の読み込みでなんとか整理して...

岩井克人の文章は比較的わかりやすいというのが従来の印象だが、この『貨幣論』は難しくて理解の突破口となる「引っかかるところ」がないまま最後まで読み進んだ。マルクス理論独特の難解で抽象度の高い論理展開で、纏めるのには相当大変だろうが諦めずに、ここから再々度の読み込みでなんとか整理してみる。この作者をしてもこれ程の表現にならざるを得ないのは、マクロ経済学における「貨幣」というものが簡単に説明できるような単純なものではないということなのであろう。同時に本質的なものであると思う。 貨幣形態・価値形態論と交換過程論・価値・商品価値・価値実態論・等価労働交換・交換価値・価格・貨幣起源の商品説と法制説・労働価値説・恐慌論・ハイパーインフレ・・・。 これらの概念定義と論理的な組み合わせによる貨幣の解明がこの論考のテーマである。

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2023/04/24

 マルクス『資本論』(主に第一巻と第三巻)をベースに、著者が貨幣の本質に迫るのが本書の内容である。貨幣とは何かという問いに対して、「単純な価値形態」、「全体的な価値形態」、「一般的な価値形態」、「マルクスの貨幣形態」、「貨幣形態」と順に追っていくうちに著者はある結論を下す。それは...

 マルクス『資本論』(主に第一巻と第三巻)をベースに、著者が貨幣の本質に迫るのが本書の内容である。貨幣とは何かという問いに対して、「単純な価値形態」、「全体的な価値形態」、「一般的な価値形態」、「マルクスの貨幣形態」、「貨幣形態」と順に追っていくうちに著者はある結論を下す。それは「貨幣とは貨幣である」というトートロジーである。つまり貨幣には本質的なものはなく、貨幣について考えれば考えるほど、ますますその存在理由がわからなくなるという。経済学を専門とする著者がこのような奇妙な結論を導いたことから、貨幣が単なるモノとは異なる独自の性質を帯びていることが読み取れる。  また、第五章危機論で言及されたハイパーインフレーションの話も興味深かった。この辺りは、現在基軸通貨であるドルの行方を予測するうえでも非常に参考となるだろう。冒頭で挙げたように、本書はマルクス『資本論』を基に展開されるが、事前に読まなくても、読み進められる。その意味で『資本論』で語られた資本主義の分析の要点をこの本を読み通すことで学べるのではないだろうか。

Posted byブクログ

2022/12/12

「われわれは今では価値の実体を知っている。それは労働である。われわれは価値の大きさの尺度を知っている。それは労働時間である。」  難しくて一回読んだだけではわからない。マルクスの貨幣論を修正しているようなんだけど、元のマルクスの貨幣論がわかってないから、どう修正したのかも当然わ...

「われわれは今では価値の実体を知っている。それは労働である。われわれは価値の大きさの尺度を知っている。それは労働時間である。」  難しくて一回読んだだけではわからない。マルクスの貨幣論を修正しているようなんだけど、元のマルクスの貨幣論がわかってないから、どう修正したのかも当然わからない。でも恐慌が貨幣の存在によって起こるというのはわかった。  貨幣も商品であり、投入された労働量によって価値が規定されている、そんなことをマルクスは論じてるらしいけど、本当なのかはよくわからない。 それに対して、岩井先生は、貨幣の価値は「貨幣に価値があるのは、皆が価値があると信じているからである、なぜ皆は価値があると信じているかは、皆が価値があると信じているからである」という循環論法によって規定されていると言ってるように思う。 因果がそれ以上遡行しない地点として、因果の道の終着点としての循環論法で、線が円環に閉じているようなイメージか。 岩井先生の考えは、他の研究者からマルクスを誤読しているという批判もちらほら見かけた。マルクスの思想は、いまだ統一見解がされていないのかもしれない。

Posted byブクログ

2022/08/26
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

貨幣とは、自らが他の商品に直接的に交換可能性を与えると同時に、他の商品も貨幣に直接の交換可能性を与えるという位置に存在しているものである。 何がどういう経緯で商品から貨幣に変わるのかは、説明できない奇跡だと言う。マルクスは、恐慌(商品世界全体で起きる需要不足)こそ資本主義の本質的な危機であるとした。しかし、筆者はそれを否定する。資本主義にとって本当に危機的な事象とは、無限先の未来まで誰かが自分の貨幣を受け取ってくれ、そして受け取った人も他の誰かが貨幣を受け取ってくれるだろうという期待が持たれなくなってしまうことだという。すなわち、ハイパーインフレである。ある財の需要が過剰になると、売り手は価格を上げる。しかしながら、物価上昇は全ての財で起こっているのだから、買い手側からすれば今財を買っておかなければ買うのはどんどん難しくなる。これがハイパーインフレをもたらすのだ。

Posted byブクログ

2022/04/11

 Audibleでランニングしながら聴取。学生の頃読んで以来30年ぶりの再読(というか再聴)。当時は四苦八苦して読んだ記憶があるが、今聴くと重要部分の繰り返しが多く、聞き逃しても筋が追えるため「ながら聴き」には意外に適している(書き下ろしでなく「批評空間」への連載だったことが影響...

 Audibleでランニングしながら聴取。学生の頃読んで以来30年ぶりの再読(というか再聴)。当時は四苦八苦して読んだ記憶があるが、今聴くと重要部分の繰り返しが多く、聞き逃しても筋が追えるため「ながら聴き」には意外に適している(書き下ろしでなく「批評空間」への連載だったことが影響していると推察)。    なんといっても本書の肝は、マルクス「資本論」他における価値形態論・労働価値論に潜む矛盾を「論理循環」の形で可視化させたことにあるだろう。価値形態論を突き詰めてゆくと実は論理循環が含まれており、そこではマルクス自身が信奉して止まなかった労働価値論の項が消去されてしまうことが示される。そしてこの論理循環は他に依拠するところのない、著者自身の言葉を借りれば「宙吊り」の構造を持っており、さればこそ、自律的に存立する強固さと、いったんその根拠を疑い出せば霧散してしまう脆弱さを併せ持っている。本書では著者一流のレトリックを用いて、資本主義における貨幣経済がこの「奇跡」の上に成立していることが明快に記述されている。「本物」と「代用物」という記号論的二項対立を、この連環構造の中に解消させてゆく著者の鮮やかな技量は今でも色褪せておらず、見事というしかない。  そしてもちろん、「恐慌ではなくハイパーインフレーションこそが、貨幣の存立基盤を突き崩し商品世界を解体する実存的危機である」という主張を含む本書は、実際に世界的インフレが進展しつつあるこの2022年にこそ特段の関心を持って読み返されなければならないと思う。

Posted byブクログ

2021/08/02

非常に面白かった。貨幣の本質がよく分かった。 危機論における、ハイパーインフレで貨幣(→商品社会→資本主義社会)が機能しなくなると言う主張に関しては、論理的にはありうるだろうけど、実際的にはそんなこと起きるのか、非常に疑問であり消化不良を感じた。 ・全ての貨幣が一度に機能不全...

非常に面白かった。貨幣の本質がよく分かった。 危機論における、ハイパーインフレで貨幣(→商品社会→資本主義社会)が機能しなくなると言う主張に関しては、論理的にはありうるだろうけど、実際的にはそんなこと起きるのか、非常に疑問であり消化不良を感じた。 ・全ての貨幣が一度に機能不全に陥ることなど起きるのか? (基軸通貨の死亡 = 貨幣の死亡とは個人的には思えない) ・貨幣が死んでも、「人間の本質」によって、貨幣は新たに創りなおされる のではないかと思う。特に後者に関して述べたい。 個人的に「貨幣とは、貨幣として使われるからこそ、貨幣なのであり、貨幣とは、流通するからこそ、価値を持つ。」と言う貨幣の本質には同意するし、貨幣は使われなくなったら (貨幣が下支えしている商品社会や資本主義社会もろとも)消滅する、と言うロジックにも同意している。 一方で、上記の「貨幣」や「貨幣の本質」を下支えしているものに「人間は交換する(したがる)動物である」と言う本質が存在するはずである。従って、仮にハイパーインフレで貨幣が死んでも(死にかけても)、この人間の本質によって、また新たに貨幣が創られるのではないかと思う。 ▶︎ 読書の目的: お金(貨幣)の成り立ちを知りたい → 貨幣の誕生は「奇跡」的な出来事。貨幣はいかにして生まれたか?という質問に対しては「貨幣商品説」「貨幣法制説」の2つの論争(前者:元々、様々な商品に交換することができる/みんなが欲しがる商品(家畜など)が貨幣として流通し始めたという説・後者:時の政府や権力者の命によって、貨幣として使われるものを生み出したという説)が存在するが、筆者はこのどちらも否定する。貨幣は、貨幣として使われるからこそ、貨幣なのであり、貨幣は、流通するからこそ、価値を持つ。この無限の「循環」こそが貨幣の本質であるので、「広い交換可能性を持っていたから(→)貨幣になった(貨幣商品説)」も「為政者が決めたから(→)貨幣になった」のでもなく、「貨幣だから(→)貨幣」なのである。 ▶︎ 概要 本書は、マルクスの思想を土台として、貨幣とは何かを考察する本である。本書の大きなポイントは2つあり、 ① 貨幣の本質 貨幣とは、貨幣として使われるからこそ、貨幣なのであり、貨幣とは、流通するからこそ、価値を持つ。 ② 資本主義の危機 貨幣の存在は、商品世界の存立の土台であり、資本主義社会の存続の土台でもある。上記に挙げた貨幣の本質を鑑みると、貨幣は、使われなくなると、貨幣では無くなり、流通しなくなると、価値がなくなる。つまり、貨幣の使用・流通が止まると、貨幣自体やそれが持つ価値が消失する。それはつまり、貨幣を土台とする商品社会や資本主義社会の危機を意味する。これまでの経済学では、資本主義の危機を需要不足/供給過多(流動性選好の増加)による恐慌に見てきたが、本当の危機は、需要過多/供給不足(流動性選好の減少・ハイパーインフレーション)にある。前者の恐慌の場合は、物価・需要の低下という負のスパイラルが、労働者の賃金の「下方への粘着性」(制度や人情などにより、人間の人件費はなかなか下げられないし、クビも切りにくい)によって、ある程度抑制される(ストッパーが存在する)が、後者のハイパーインフレの場合は、論理上はストッパーが存在しないため、貨幣が死ぬ(つまり商品世界と資本主義を破壊する可能性)がある。

Posted byブクログ