本格小説(下) の商品レビュー
昭和初期から現代まで…
昭和初期から現代までにわたってそれぞれの時代のカラーが色濃く描かれています。どこか浮世離れしているような、不思議な感覚で読むほどに引き込まれていきます。時間があるときに、じっくり味わって読むといいと思います。
文庫OFF
内容を忘れた頃に読み返しますが、いつも物語の展開に引き込まれます。 ところどころ写真が挿絵のように入って、ドキュメンタリー風なのがちょっと風変わりです。文章も淡々と登場人物たちの波瀾万丈な人生を綴っていくのです。 歴史小説好きの連れ合いもかなり面白かったと言っておりました。
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すごいタイトルだと思って、気になっていた本。 ・本編が始まるまでに200P以上も不要ではないか ・中途半端な実写の写真を挿れる必要はないのではないか ・私小説でも本格小説でもないのではないか とか思いながらも面白かった。
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『本格小説』は、嵐が丘のオマージュというからにはやっぱり語り手が女中さんだったというか、そのひとが主人公のような小説であった。 タイトルが日本近代文学『本格小説』とちょっと仰々しいけど、おもしろく読める。戦後から昭和の時代、平成に入ったところを背景に、突き抜けた人物達が織り成...
『本格小説』は、嵐が丘のオマージュというからにはやっぱり語り手が女中さんだったというか、そのひとが主人公のような小説であった。 タイトルが日本近代文学『本格小説』とちょっと仰々しいけど、おもしろく読める。戦後から昭和の時代、平成に入ったところを背景に、突き抜けた人物達が織り成すドラマはわたしたちがたどった時代を振り返らせてくれ懐かしく、また歴史風俗の変遷を思う。 この小説では戦後もすぐ、集団就職の時代にお手伝いさんと呼び名が変わったにもかかわらず女中になってしまったひとと、零落しつつもそのことに執着した家族と、貧しさから這い上がらなければならなかった青年のとの三つ巴のドラマがすさまじい。 その女中さんで思い出すことがある。 わたしが結婚してからだから、姑50代なかばわたし20代のころのこと。姑がよく「おちぶれた」が口癖にしていたが、もうひとつわたしはふに落ちなかった。 義母は父親がある県の名家の医者、広い敷地に大きなお屋敷、人手がたくさんのお嬢様、女学校を卒業してからも専門学校へいったそうな、つまり今の女子大卒と同じ。その後、行儀見習いとして行った先は華族のお屋敷。結婚しても女中さんが居た子育てだったという話をたくさん聞かされた。 ところが夫が39歳で早死にしてしまい、そのころ戦争も始まって実家に疎開するのだが、女中さんにもひまをだして、苦労の連続になってしまったのが気の毒だったのだった。 それから十数年、戦後の日本を皆と同じように大変な生き方をしただろうに、何かにつけて「おちぶれた」というのが、わたしにはわからない。「何をご大層な」とむしろ反感さえ持った。だって仕方がないじゃない、日本中が民主主義だの平等主義だのになってしまったのだから。 わたしなどは何もないのが普通、女中さんが(お手伝いさんが)居たら居心地悪いものと思うけども、母に聞けばやはり居たという。母が結婚してわたしが生まれた時、妹が生まれた時実家から来てもらったという。 わたしの「おちぶれた」という言葉への違和感は、何もなかった時代の子として幸いにしてその怨念のようなものを、味わわなくて済んだということだと思うとありがたい。 良かった時代に執着したり、上昇志向に執着したりそれが活力になればいいのかもしれないが、時代とのずれがあると摩擦がおこるものだ。 しかしわたしがよる年波でいまはお手伝いさんが欲しいよ~。というのも本音(笑)
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心震える恋愛小説か怪談話を読みたいと、10年の積ん読を経て人を食ったようなタイトルの恋愛大河小説を読んで心震わす。後にNYの大富豪になった満洲引き揚げ者の貧しい少年東太郎と裕福な隣家の娘よう子の幼い恋心から始まる幸福と悲劇、そして一族の栄枯盛衰が昭和の軽井沢を舞台に何十年にも渡り...
心震える恋愛小説か怪談話を読みたいと、10年の積ん読を経て人を食ったようなタイトルの恋愛大河小説を読んで心震わす。後にNYの大富豪になった満洲引き揚げ者の貧しい少年東太郎と裕福な隣家の娘よう子の幼い恋心から始まる幸福と悲劇、そして一族の栄枯盛衰が昭和の軽井沢を舞台に何十年にも渡り繰り広げられる。一人ひとりの行動の積み重ねが人の心に影響を与え、その結果がまた人それぞれに違う意味を持つ。それぞれが自分の居場所を探す話であり誰が幸せで誰が不幸せだったのかさえつかみきれぬまま恋愛の大河に呑み込まれる。今の日本はある人には良くなりある人には悪くなった。40年前の軽井沢ってこうだったよね、などと思いながら。
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上下巻とかなりのボリュームを頑張って読み進めると、最後の最後に大どんでん返しがあり読後感は面白かった…が、正直年配の女性が延々話してることをそのまま記述してあるような小説のため、やや読むのに骨が折れた。
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軽井沢に別荘を持つ昭和のお金持ちたちの独特の世界観にどっぷりはまった。 アメリカに渡り大成功して大富豪になった不幸な生い立ちの男と、優雅な金持ちの家族の対比によって、豊かさとは?幸福とは?と考えさせられた。
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この作者の第一作が『続・明暗』であるうえこの題名 手をつけるのにかなりの読書意欲を必要としたので買って2年も寝かせたが 意外にとても読みやすかった 題材からの連想でサマセット・モーム「平明な文体と巧妙な筋書き」みたいな感じかしらん 物語の面白さで読み始めたら止まらない内容 題名...
この作者の第一作が『続・明暗』であるうえこの題名 手をつけるのにかなりの読書意欲を必要としたので買って2年も寝かせたが 意外にとても読みやすかった 題材からの連想でサマセット・モーム「平明な文体と巧妙な筋書き」みたいな感じかしらん 物語の面白さで読み始めたら止まらない内容 題名の「本格小説」は作中の作者から説明あるように「小説のような話」を指して 小説である以上は作者の知ることの中で書かれているから(広義の)「私小説」であり では「私小説」でない「小説のような話」はどうなるか みたいな感じらしい なるほど そういうわけで『嵐が丘』を戦後日本へ置き換えたような筋書きを 作中の作者を複数の話し手と聞き手の中に織り交ぜ 山場がいくつもある多重ミステリのような仕掛け 内容分類てきには「昭和日本のお金持ちと使用人」な「時代」を生きたひとたちの記録 みたいな感じか 「ミステリ」の舞台が現代日本か19世紀イギリスかでの分類のように この作品には意味のない分け方だけれども そもそも『嵐が丘』自体読んだのがわりと昔な上に まず「がらかめ」の絵が載って さらにクリスティのミステリでないのとか 『秘密の花園』とかダイアナ・ウィン・ジョーンズとか 極めつけに「あんざろ」で上書きされてよくわからないことになっていて そういうエンタメな味わいと比較してしまうわけだが さすがに最初の作品に『続・明暗』持ってきて評価されている作者だけに どんな方向からのつっつきに綿密な構成で答えて 『虚無への供物』みたいな積み上げっぷり そういうわけでどこで満足して本置いたらよいかわからない 細部まで抜かりなく豪勢な作品だが そういうどこまでも閉じてない感じが 「私小説」でないふうなところなのか 「小説のような話」には「私」たる主人公がなく といって(社会(人間関係)が主人公の)群像劇というわけでもなく 時代のふんいきというのも『嵐が丘』と対比するまでもなく舞台だてなのだし 結局「小説のような話」というのは 「巧妙な筋立てによるお話の面白さというもの」というところへ 行き着くものなのかもしれない
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うん、素晴らしかった。深く満足。 骨子を、身も蓋もないひと言で言ってしまえば、「上流階級に属する人たちのゴシップ話」だと思う。 しかし、その骨子に肉付けされている装飾がもう本当に見事で、骨子の下品さが完全に隠されている。 極論を言えば、この世で起こる様々な「ものがたり」は、その...
うん、素晴らしかった。深く満足。 骨子を、身も蓋もないひと言で言ってしまえば、「上流階級に属する人たちのゴシップ話」だと思う。 しかし、その骨子に肉付けされている装飾がもう本当に見事で、骨子の下品さが完全に隠されている。 極論を言えば、この世で起こる様々な「ものがたり」は、その殆どが単なるゴシップでしかない。 個人的な、極めて狭い範囲での出来事であって、当人たち以外にとっては、単なる覗き趣味を満たす対象でしかない。 けれど当然ながら、それらは単にフィクショナルな「ものがたり」ではない。 当人たちにとっては、嘘偽りのない純粋な「真実」そのもの。 その「真実」を、傍観者でしかない読者に、どれだけリアルなものとして感じさせることが出来るか。 それが、「小説家」としての力量そのものが問われる場面そのものなのではないかと思う。 そして、その能力が高ければ、「ものがたり」が作り話であったとしても、読者はリアルなものとして感じ、受け止める。 それは、読者が「もうひとつの現実」を体験するという事に他ならない。 それを踏まえると、本書は「本格小説」という名に相応しい作品だと思う。 圧倒的なまでに繊細で美しく、流暢で滑らかなその筆力は、読者を完膚無きまでに幻惑する。 ぐいぐいと引き込まれて、あたかもその場に身を置いていたかのような錯覚すら感じた。 語り手が変われば、ここまで強烈な印象を読後に残すことは無かったはず。 それどころか、ぼくは最後まで読み進めることすら出来なかったと思う。 本当に切なく、どこまでも悲しいお話。 けれど、だからこそ、所々で訪れる幸せな瞬間が、本当に大切で素晴らしいものとして輝く。 とにかく、読んでいる最中の没頭感が半端じゃなかった。 読後、深い溜息をつきながら、傑作だなあ、と心から思った。
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下巻です。 期待を裏切らず、最後まで深みのある恋愛小説で、どっぷりと美しい世界観に浸りました。 (著者は嵐が丘のような話と言っていますが、私は谷崎の細雪、小池真理子の恋がよぎり、再読したくなりました。特に恋の主人公は同名フミコ!) そんな中ラストの冨美子の件は、一瞬小説全...
下巻です。 期待を裏切らず、最後まで深みのある恋愛小説で、どっぷりと美しい世界観に浸りました。 (著者は嵐が丘のような話と言っていますが、私は谷崎の細雪、小池真理子の恋がよぎり、再読したくなりました。特に恋の主人公は同名フミコ!) そんな中ラストの冨美子の件は、一瞬小説全体の美しさを汚された気がしましたが、そういう事情のお蔭で彼女の語りには包容する力があり愛があるわけですから、生々しさも許容しなきゃな、という気持ちに変わりました。 また、上巻で感じていた三枝家や重光家等の名家の品格を、時を経て現代の富裕層である久保家には少しも感じず(だからと言って決して下品という意味ではなく)、現代日本への寂しさを感じました。 あの時代を生きた人々が、現代の、小粒で薄っぺらい人材と世の中を嘆く様を見て、確かに現実の経営者や政治家には気迫も個性も足りないかも、と考えたりもしました。松下幸之助や田中角栄に匹敵する今の人、思いつかないもの… 恋愛小説なのにそれ以上のことを考えさせられる、とても素晴らしい作品です。読んでよかった☆
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